OKWAVE Stars Vol.699は映画『セブン・シスターズ』(2017年10月21日公開)トミー・ウィルコラ監督へのインタビューをお送りします。
Q 本作は映像化されていない優秀な脚本をランキングする「ブラックリスト」2010年版の上位に入った作品だそうですね。元の脚本では主人公の七つ子は男性だったとのことですが、なぜ女性に変更しようと思ったのですか?
Aトミー・ウィルコラいくつか理由はありますが、兄弟間の関係性が女性同士の方が複雑で面白いと思ったのです。もっと人間の脆い部分が表現できると思ったし、アクションの演技にも幅が出て面白いのではないかと思いました。7人の主人公をリアルに描くのにはとても苦労しましたが、これがぶらぶらしている男たちだったらもっと手間取ったかもしれませんね(笑)。
Q 主人公の1人7役が話題となっていますが、その難役にノオミ・ラパスをキャスティングした理由を教えてください。
Aトミー・ウィルコラ最初に脚本を読んだ瞬間に思い出したのがノオミでした。
僕らはお互いに北欧出身同士で、彼女のことはハリウッドに進出する前から知っていました。
まずこの役を演じる上で必要不可欠だったのは、目を見張る演技力があるのはもちろん、恐れ知らずな人でなければならないということ。チャレンジが大好きで、自分からそこに飛び込んでいけるような女優が理想的でした。ノオミは、何か大きな課題があっても自分で突破できる、内なる力を秘めた女性ですからね。僕はキャスティングの際には、演技力以外にその人固有の魅力を見つけ、それをどのように活かせるか考えるのですが、まさにノオミはこの役にぴったりだと感じ、それは脚本を読み進めるにつれて彼女しかいないという確信に変わりました。
Q ノオミが7人を演じ分けるにあたり「監督と2人、彼女たちの両親のような気持ちで、個々の特徴を一緒に作り上げた」と語っていますが、演出上、最も気を配ったキャラクターがあれば教えてください。
Aトミー・ウィルコラ本作は2時間少しの映画で7人の主人公がいるようなものなので、キャラクターを丁寧に描くには、まず圧倒的に時間が足りませんでした。ちゃんと全員を確立して見せなければいけない中でそれぞれ均一にフォーカスすることはどうしても時間的に難しいので、3、4人を前に出すことに決めました。バックグラウンド側とメインフォーカス側に振り分けることで、より7人の存在する世界をリアルなものにできると考えました。その配分については、最も塾考したことのひとつですね。
Q 人口が爆発的に増加し、厳格な一人っ子政策が敷かれるという、私たちにも起こりうる、リアリティ溢れる近未来を描いていますが、どういったところを意識しましたか。
Aトミー・ウィルコラ確かにこの映画で僕が描いたのはSFとは言い切れない近未来。200年後などではなく、ごくごく近い将来の話です。僕たちは撮影に入る前に、本作の背景として描かれる人口爆発についてだけではなく、今の地球が抱えている様々な問題をリサーチしました。そして最終的に目標としたのは、二歩進んで三歩下がるような、人類の遅々とした後退を感じさせる世界を描くことです。2017年現在、文明が進み、便利な世の中になっていたとしても、決して綺麗事ばかりではありません。本作を通じて、20年後の地球はこうなっているかもしれない、今自分たちにできることは一体何か、個々人が考えるきっかけになれば光栄です。
■Information
『セブン・シスターズ』
そう遠くない未来。世界規模の人口爆発と干ばつによる食糧不足に対処すべく、収穫量の多い遺伝子組み換え作物が開発されるが、その作物が人体に与える影響で多生児の出生率が急増する。さらなる危機に直面した欧州連邦は、一家族につき子供1人のみを認める「児童分配法」を施行、違法に生まれた二人目以降の子供は地球の資源が回復する時まで「クライオスリープ」と呼ばれる機械で冷凍保存する政策を強行した。
至るところに検問所が設けられ、人々の生活や行動が厳しく管理される中、とある病院で七つ子の姉妹が誕生する。母親は出産と同時に死亡し、姉妹は唯一の身寄りである祖父に引き取られた。祖父は7人を月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜、日曜と名付け、「児童分配局」に見つからずに生き延びるための方法を教え込む。その方法とは、それぞれ週1日、自分の名前の曜日にだけ外出し、カレン・セットマンという共通の人格を演じることだった。
月日は過ぎ、姉妹は一人ひとり性格も得意分野も異なる女性に成長する。7人の頭脳やスキルを併せ持ったカレン・セットマンは銀行員になり、エリートへの道を歩んでいた。しかし大きな昇進が決まるはずのある月曜日、〈月曜〉が出勤したきり行方不明になる…。
出演:ノオミ・ラパス、グレン・クローズ、ウィレム・デフォー、マーワン・ケンザリ、クリスチャン・ルーベック、ポール・スヴェーレ・ハーゲン
監督:トミー・ウィルコラ
提供:ハピネット
配給:コビアボア・フィルム
(C)SEVEN SIBLINGS LIMITED AND SND 2016
■Profile
トミー・ウィルコラ
1979年、ノルウェー北部のアルタ生まれ。
2007年、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』のパロディ『キル・ブル~最強おバカ伝説~』(監督・脚本)でデビュー。医大生たちが雪山でナチスのゾンビに襲われる第二作『処刑山 デッド・スノウ』(監督・脚本)は2009年のサンダンス映画祭で話題を呼び、カルトホラーとして興行的成功も収める。2013年米国公開のジェレミー・レナーとジェマ・アータートン主演のダークファンタジー・アクション『ヘンゼル&グレーテル』(監督・脚本)でハリウッドに進出。同作は全世界興行収入2憶2500万ドル以上の大ヒットを記録した。その後、『処刑山2』(14/監督・共同脚本)を発表し、トロント・アフター・ダーク映画祭観客賞をはじめ数多くの映画賞を受賞。以上の4作品は日本国内ではDVDリリースのみで、本作『セブン・シスターズ』が初の劇場公開作となる。現在はアダム・マッケイが監督を務めるR指定のアメコミ原作スーパーヒーロー映画『Irredeemable』の脚本を執筆中。また、TVドラマ版「ヘンゼル&グレーテル」パイロットの共同脚本にも携わっている。