Vol.708 映画監督 フェデリカ・ディ・ジャコモ(映画『悪魔祓い、聖なる儀式』)

フェデリカ・ディ・ジャコモ(『悪魔祓い、聖なる儀式』)

OKWAVE Stars Vol.708はドキュメンタリー映画『悪魔祓い、聖なる儀式』(公開中)フェデリカ・ディ・ジャコモ監督へのインタビューをお送りします。

Q 実在するエクソシストという題材を取り上げようと思ったきっかけをお聞かせください。

A『悪魔祓い、聖なる儀式』フェデリカ・ディ・ジャコモ私は映画の題材として、私たちが持っている小さなこだわりや問題を取り上げてきました。エクソシストに関心を持ったのは、シチリアで神父のためのエクソシスト養成講座が開かれるという新聞記事を読んだのがきっかけです。“悪魔憑き”は、私たちが心に抱えているものが爆発的に表面に出てきてしまうという、現在の私たちの抱える心の問題のメタファーとしても面白いと思いました。

Q エクソシストの元に訪れる人たちは現代的な悩みを抱えているように見えましたが、イタリアの社会では心の悩みを抱える人が増えてきているのでしょうか。

Aフェデリカ・ディ・ジャコモこれはイタリアだけではなく世界的に普遍的な問題だと思います。今回取り上げた“悪魔憑き”という問題は、人によっては自分が抱えている問題が何なのか分からずに、最終的に神父の元に訪れています。その人が抱えている問題が宗教的な問題なのかそうでないのかはあいまいです。最初は宗教的ではなかった問題がどこかで宗教的な問題に変わってしまったのかもしれません。この映画に出てくるように、悪魔憑きの症状が数時間続いた後には元の生活に戻ることができるのが特徴で、これは私たちが抱えている現在の生活上の悩みや問題を表しているのではないかと思います。

Q 悪魔憑きになってしまう方は、元々信心深い方なのかそれとも最終的に教会に頼ってくるのか、どちらが多いのでしょう。

A『悪魔祓い、聖なる儀式』フェデリカ・ディ・ジャコモイタリアは元々カトリックの国ですが、最近はみんなが信心深いかと言えばそんなことはないですし、教会に行くのも一つの文化のようなもので、信仰心の強さとは関係がなくなってきています。ですので、信仰心の強い方たちが悪魔憑きになるわけではなく、そのようになってから教会に来るようです。イタリアでは家族や地域の結び付きが強かったので、これまではそれらが心の悩みを抱えた方たちへの支えになっていましたが、現在では、そういったもののの力が弱くなり、耳を傾けてくれる人がいなくなってきています。そんな時に話を聞いてくれる人が神父だったということです。イタリアもまた宗教色はだんだんと薄れてきていましたが、こういった社会背景で教会も自分たちの役目を取り戻した、と言えるかもしれません。

Q 儀式の様子など貴重な映像がカメラに収められていますが、神父らの信頼をどのように得ていったのでしょう。

A『悪魔祓い、聖なる儀式』フェデリカ・ディ・ジャコモまず、私たちはカトリックの立場ではない、ということを最初にはっきりと伝えました。そして、信頼を得るまでには時間をかけました。何ヶ月もカメラを持たずにミサに通いましたし、自分たちが良い悪いの判断をするためではなく、いま起きていることが何なのかを理解するために撮っているのだということを相手にも自分たち自身にも言い聞かせながら撮影をしました。一方、神父の側でも、自分たちのところにこれだけたくさんの方が悪魔憑きに悩んで訪れているという状況を、もっと世界中に知らせたいという方たちがいて、それが上手く合致したのだと思います。そして、悪魔憑きで悩む方たちに対しても、私たちは理解するために撮っているのだということを伝えてアプローチしていきました。彼らにとっては、教会の外では誰にも話せなかったことを私たちに伝えることで、一種の開放につながったのではないかと思います。

Q フェデリカ・ディ・ジャコモ監督からメッセージ!

Aフェデリカ・ディ・ジャコモ“悪魔祓い”と言っていますが、これはホラー映画ではありません。人間性を描いた映画ですので、怖がらずにぜひ観に来てください。

Qフェデリカ・ディ・ジャコモ監督からOKWAVEユーザーに質問!

フェデリカ・ディ・ジャコモ映画に出てくる人たちは苦しみや不安、居心地の悪さを“悪魔憑き”という形で表しています。日本の方たちはそのような症状あるいは振る舞いをどのように感じるでしょうか。

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■Information

『悪魔祓い、聖なる儀式』

『悪魔祓い、聖なる儀式』2017年11月18日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中

カタルド神父はシチリア島の有名なエクソシスト。科学や医療では解明できない問題や病を抱えた人たちが毎日神父のもとを訪れる。神父が聖水を浴びせ、手を額にかざし祈りのような言葉を発すると、次第に信者たちの様子に変化が現れはじめる。悪魔は存在するのか!?という好奇心を刺激しながらカメラが捉えるのは、悪魔を祓う儀式や神父の日常だけでなく、悩みを抱えた人々の日常。そこから見えてくる社会が抱える闇とは?現代のエクソシストと悪魔の臨場感溢れるせめぎ合いをリアルに体感できる、禁断のドキュメンタリー!

監督:フェデリカ・ディ・ジャコモ
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/liberami/

© MIR Cinematografica – Operà Films 2016


■Profile

フェデリカ・ディ・ジャコモ

フェデリカ・ディ・ジャコモ(『悪魔祓い、聖なる儀式』)フィレンツェ大学を卒業、人類学を学ぶ。
ホアキン・ホルダの「Monos como Becky」(99)とホセ・ルイス・ゲリンの『工事中』(01)に脚本家アシスタントとして参加、バルセロナのポンペウ・ファブラ大学でドキュメンタリー制作の修士を取得。200年、スオ会陰BTV放送のドキュメンタリー「Los colores de la trance」を撮影。2001年以降、Raisat Cinemaなど放送局のドキュメンタリーや短編映画を制作。2006年、プロデューサー、脚本、監督を務めた初長編ドキュメンタリー「Il lato grottesco」でトリノ国際映画祭CIPPUTI賞とAvanti賞を受賞。Rai cinemaとB&B Filmが制作したドキュメンタリー「Housing」(09)では、ロカルノ、トリノ、コペンハーゲン、トロントなど数多くの映画祭に出品。長編3作目にあたる『悪魔祓い、聖なる儀式』(16)では、フレデリック・ワイズマン風の、ナレーションを一切排した撮影で、撮影対象の真の姿を浮かび上がらせながら、独特のユーモアで観客を引き込み、第73回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門最優秀作品賞を受賞。現在はナンニ・モレッティのSacher filmsと共同ドキュメンタリーを製作中。