Vol.746 女優 西川可奈子(映画『私は絶対許さない』)

西川可奈子(映画『私は絶対許さない』)

OKWAVE Stars Vol.746は映画『私は絶対許さない』(2018年4月7日公開)W主演の西川可奈子さんへのインタビューをお送りします。

Q 本作主演に決まったご感想をお聞かせください。

A映画『私は絶対許さない』西川可奈子主演にはオーディションで選んでいただきました。オーディションを受ける上で雪村葉子さんの原作を読ませていただくと、その内容に衝撃を受けて、食い入るように読みました。実話を基にした作品ですし、雪村さんの思いも背負っていかなければならないし、ちゃんと伝えなければならないという思いが湧きました。オーディションの時からそんな責任を感じながら挑ませていただきました。主演に決まった時は、注目もされるだろうし、自分にとっても大きな作品になるとも思いましたが、何より、伝えようという使命感が大きかったです。

Q 主観撮影という手法で、案外ご自身が映っていないという別の衝撃もありました。

A映画『私は絶対許さない』メイキング西川可奈子普通の撮り方とは違うからこそ、声だけで表現しなければならなかったり、カメラマンさんと一心同体にならなければ成立しないので、カメラマンの高間賢治さんとは、「こういう風に動きたい」といったことを念入りに打ち合わせしました。だから、和田秀樹監督と打ち合わせ、というよりもカメラマンさんとの打ち合わせが多かったです。

Q 役への気持ちの入り方はいかがだったでしょうか。

A西川可奈子自分に置き換えて考えると、もし自分がこういう被害に遭ったとしたら、きっと家族が支えてくれるだろうから家族からのセカンドレイプはないだろうなと思います。この主人公は自分でどうにかするしかなかったので、本当に孤独だったんだろうなと思いました。
隆大介さんが演じた、援助交際相手の早田に対して葉子が被害後に人前で初めて涙を流すシーンでは、そこに至るまで葉子は本当に孤独だったと考えると演技を超えて涙が溢れて止まらなかったです。

Q 葉子の行動を和田監督は精神科医ならではの考察を基に映画にされましたが、ご自分では葉子の行動を理解できましたか。

A西川可奈子想像を超えてはいました。監督からは、トラウマを背負った時にそのことを避けるのではなく辿ってしまうのは異常ではなく、むしろ本当の傷を抱えた人はそうなるのだとお聞きしました。ですので、理解できるかどうかを超えて否定できないと思いました。性的被害に遭っても生きていかなければなりません。葉子は人と出会うことで復讐心が段々と変化していきます。当初抱えていたレイプ犯たちへの殺意から性を武器にすること、さらに自分が幸せになることが一番の復讐なんだと変化していったのは、強く生きなければならないという彼女自身の芯の強さがあったからだと思いました。

Q レイプ被害後には、心の声として演じる姿も出てきます。

A西川可奈子醒めた意見というか、出てくるのはレイプされる前の自分なので、冷ややかな視線で今の自分にセリフを向けることを意識しました。早田の前で泣くシーンで今の自分と心の声の自分の気持ちが初めて一つになりますが、それ以外ではその後の自分の行動に訴えかけるような気持ちでいました。葉子の行動は出会いによって変わっていくので、過去の自分を置き去りにしていくような感覚になればいいなと思いました。いつかトラウマが消えればいいなと思いますし、初めは殺意だった復讐心が変化していったのも良いことだと思います。

Q 現場の様子はいかがだったでしょうか。

A西川可奈子こういった作品ですので、ピリピリした環境の中でやらないと成立しないですが、撮影以外のところではアットホームな現場でした。高間さんをはじめスタッフ、キャストの方とは、最後に熱い握手ができましたし、すごく演じやすい環境を与えていただきました。和田監督は考えを曲げないこだわりの部分もありましたが、私が「ここはこうしたいです」と相談したことを受け入れてくださったし、ベテランの錚々たるスタッフさんに囲まれて演じることができたので、恵まれた環境でした。

Q 撮影中のエピソードをお聞かせください。

A映画『私は絶対許さない』メイキング西川可奈子主観撮影ということではどのシーンも念入りに打ち合わせをしなければならないのですが、とくに食べたものを戻してしまうシーンでは何テイクも重ねてタイミングも含めリアルに再現していますので大変でした。それと、葉子がかけていた眼鏡ですが、監督のこだわりで、撮影用の度の入っていないものではなく本物の一番強い近眼用の眼鏡をかけているんです。私自身は視力がよいので、かけてしまうと逆に周りが全然見えなくなってしまいました。そんな状態で高い位置に登って撮影することもあったので、落ちてしまうのではないかという心配もありました。普通の芝居ができない環境なので、これで演技ができたならどんな環境でも演じられると思いました。

Q 本作出演を経て、ご自身に何か変化を感じていらっしゃいますか。

A西川可奈子主役を演じさせていただいたことはやはり大きかったです。実は冒頭の拉致される駅のシーンは、雪のある環境で撮影するはずが、ロケ地に行ったらもう雪がなくなっていたんです。雪がないと成立しない作品ですし、後ろに線路があるというロケーションは絶対に変えられないということで、雪を用意するしかない、ということになりました。ロケ地は金沢でしたが、スタッフさんが隣の富山県から雪を運んできて雪を敷き詰める姿を見て本当に大変なことだと思いました。演じる側は待つしかなかったのですが、あるスタッフさんから「これはみんな君のためにやっているんだよ」と言われて、改めて身が引き締まりましたし、改めて火がついたような感覚にもなりました。ありがたい環境でやらせていただいているんだと再確認できました。

Q 今後のご自分の展望についてお聞かせください。

A西川可奈子今はまだ映像の作品の数をこなしているわけでもないので、一つ一つコツコツとやらせていただいて、私という人間がいるんだということを多くの人に知ってもらえるようになりたいです。そうして、最終的には求められる女優になりたいです。

Q インドのノイダ国際映画祭で審査員特別賞を受賞されました。

A西川可奈子賞をまだまだ実感できていませんが、一つ言えるのはこれは日本だけの問題ではないということです。世界でも問題視されている中でピックアップされましたが、#MeToo運動ではありませんが性暴力被害者の女性たちが声を上げることは日本ではまだまだ難しいと思います。この映画が賞を獲ったことで、さらに話題になって、長い期間、上映されるといいなと思います。

Q 西川可奈子さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A女優 西川可奈子(映画『私は絶対許さない』)西川可奈子信じがたいことですが、これは実際に起きたことです。また、自分にいつ被害がおよぶかも分かりません。被害に遭って自分で声を上げている方は10分の1もいないと思います。そんな中で原作の著者の雪村さんは自分の体験を書かれました。そしてこの映画は同じ被害に遭った方に対するメッセージもありますし、加害者たちに向けて今は幸せに生きているという強いメッセージも送っています。加害者側の人にも観ていただいて、考え方を改めてほしいという思いもあります。また、少しでも性犯罪を減らせたらという思いでいます。
映画としては主観撮影という新たな撮り方で、読者の方も主観撮影と言われてもどういうことか分からないかと思います。目に見えるものは葉子の目線で映し出されたものなので、主観撮影だから分かる距離感やリアリティを目の当たりに感じていただけると思います。もしかすると目を背けたくなってしまうかもしれません。だからこそ、しっかりと向き合って観ていただきたいと思います。

Q西川可奈子さんからOKWAVEユーザーに質問!

西川可奈子自分にとって絶対許せないことは何でしょうか。

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■Information

『私は絶対許さない』

映画『私は絶対許さない』2018年4月7日(土)~東京・テアトル新宿、4月14日より名古屋・シネマスコーレ、4月28日(土)より大阪・第七藝術劇場にて公開ほか全国順次

東北地方の田舎で育った中学3年生の葉子は、メガネに化粧っ気のない素朴な女の子。厳格な父と、女々しく意地悪な母と、優しいがどこか他人事の様に接する祖母と、小さな弟と妹に囲まれて平凡に暮らしていた。あの日までは……。
年末、若い男達に無理やり輪姦されたのだった。
元旦に全身傷だらけで帰宅した葉子を待ち受けていたものは、冷たく突き放す家族と親戚だけだった。体のみならず、心もズタズタにされ、天涯孤独の様な気持ちだった。ひょんなことからレイプ犯の一人である若者の養父・早田と出会い、援助交際という名の契約を交わす。どうせ私は傷物なんだから……。
冬休み明けの学校でも、瞬く間に輪姦された噂は広まり、イジメが始まった。その間も援助交際でコツコツと大金を稼ぐ葉子。一刻も早くこの地獄から自力で抜け出すために。そしていつか、あの男達に復讐するために……。
高校卒業後、大都会東京へ。
すぐさま全身整形し、昼間は真面目な学生、夜は学費や生活費を稼ぐべく風俗で働いていた。そんな中、葉子は客としてきた雪村に出会う。彼は将来の夫になる人だった……。しかし、ある日、彼の真実を知ってしまう……。
そんな体験を実際に持つ雪村葉子さんが35歳になって執筆した手記を元に、その半生をたどる衝撃のストーリー。彼女は日々何を見て、何を感じ、何に対して復讐しているのか。あの男達への思いは……。

出演:平塚千瑛、西川可奈子、隆大介、佐野史郎 ほか
監督:和田秀樹
原作:雪村葉子(ブックマン社)
脚本:黒沢久子

http://watashihazettaiyurusanai.com/

(C) 2018 『私は絶対許さない』製作委員会


■Profile

西川可奈子

女優 西川可奈子(映画『私は絶対許さない』)大阪出身。女優として活躍中。最近の出演作にNHK大河ドラマ「西郷どん」、「税務調査官 窓際太郎の事件簿33」(TBS)など。

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