Vol.760 映画監督 綾部真弥(映画『ゼニガタ』)

映画監督 綾部真弥(映画『ゼニガタ』)

OKWAVE Stars Vol.760は映画『ゼニガタ』(2018年5月26日公開)の綾部真弥監督へのインタビューをお送りします。

Q 『ゼニガタ』に監督として参加した経緯をお聞かせください。

A映画『ゼニガタ』綾部真弥プロデューサーで脚本を書かれた永森裕二さんからお話をいただきました。初稿の時点ですでに世界観がかなり完成していて面白いなと思いました。闇金モノもひとつのジャンルとして、中にはシリーズ化されている作品もありますが、今までに観たことがないような少し毛色の違う作品にしたいなと思いました。闇金モノは借りに来る債務者の群像劇にはなりますが、それが個別のエピソードではなく、連なっているのがこの作品の特徴だったので、そのうねりのようなものが映画的なカタルシスにつながるようにと考えました。

Q どんなところを大事にしようと思いましたか。

A綾部真弥まずは何も考えずに観ていてもエンターテインメントとして面白いかどうかです。もうひとつは群像劇ですが、人間ドラマとしてしっかり描きたいということです。沼津で撮影しましたが、日本のある地方都市を舞台に、工場勤めの人もキャバクラ勤めの人もいて、プラプラしている人もいればヤクザや真面目に農業をしようという人もいる。そんないろんな人たちがみんなお金を欲して動き回っています。そんな人たちの間にある人間関係をしっかり描こうと思いました。

Q いま最も旬な俳優の一人である大谷亮平さんの主演についてはいかがでしたか。

A映画『ゼニガタ』綾部真弥普段の大谷さんの雰囲気も主役の銭形富男に似ているところがあります。大谷さんは知的で優しい方ですが、大谷さんに見られていると心の中を見透かされているような含みのようなものがあって、富男というキャラクターにぴったりだと思いました。優しそうだけど、見透かされていそうで怖い、その方が単に強そうな人よりも怖くていいなと思いました。周りが派手に動き回って、それでも富男は動じない、そんなところが出せるといいなと思いました。

Q 他のキャストの方々にはどんなことを期待しましたか。

A映画『ゼニガタ』綾部真弥脚本段階で世界観がしっかりできあがっていましたし、皆さんしっかり演技プランを考えて臨んでいたので一から演出するということではありませんでした。いかにみんなにギラギラしていただいたり、ノッてもらって一番いい瞬間を切り取れるかに気を配りました。
とくに佐津川愛美さんは天才タイプで本当に上手かったです。普段は肩の力が抜けていてカメラの前で待っている時でもすごくリラックスしています。それが本番の声がかかると急に役に入るので、撮りながらすごいなと思いました。僕が助監督の頃から知っている方でしたので、今回の早乙女珠役はぜひ佐津川さんにとお願いして実現できたので本当に良かったです。大谷さんと小林且弥さんの銭形兄弟に対して、佐津川さんが引っ掻き回す役だったので、佐津川さんの芝居無くしてはこんなにうまくはいかなかったなと思います。

Q ヤクザの磯ヶ谷剣を演じた渋川清彦さんは往年のヤクザ映画的な雰囲気もありました。

A映画『ゼニガタ』綾部真弥渋川さんのことはもともとファンで、ご一緒するのは初めてでしたが、現場にいて本当に楽しかったです。集中力がとてもある方です。繁華街での撮影で、衣装を着た渋川さんが歩いてくるのを遠目に見て、本当に街のヤクザが来てしまったのかと勘違いしかけたこともあります(笑)。昭和のにおいがする格好いい方で、獰猛な目つきが素晴らしかったです。磯ヶ谷はお金を集めることに対して他の登場人物と比べて迷いがないキャラクターです。考える暇があったらカネを持って来い、と肝が座っているので、銭形兄弟に最終的に対峙するキャラクターにできました。

Q 闇金の世界のリアリティはどう作っていきましたか。

A綾部真弥居酒屋が闇金をやっているなんて設定は実際にはもちろん見たことがありません。僕が10代から20代くらいの頃、闇金からお金を借りた人が周囲にいました。闇金の怖さや頭の良さというものを見ましたし、ちゃんとしていた人がギャンブルのためにお金を借りるスパイラルにハマっていく様子を見たこともあります。お金のために人はこんなになってしまうのかと。そういう魔物としてのお金を描こうと思いました。今はまだ現金としてお金が見えているからいいですけれど、カードやスマホ決済でお金という対価が目に見えなくなってきていますし、働いた対価を現金で受け取ることの方が少ないです。借金は最たるもので、利子が付いて膨らんでいきますが、お金を欲して借金を繰り返してしまうような、お金に取り憑かれて抜け出せなくなる泥沼感を出せるといいなと思いました。佐津川さんが演じた早乙女珠がショッピングにお金を使いまくっていますが、そんなのおかしいと思うかもしれませんが借りる側になったらそれこそ笑えない話です。そういうところを目指しました。

Q 『ゼニガタ』の撮影を通じて新しい発見などはありましたか。

この映画を作ってみて感じたのは、お金だけを求めているとひとりぼっちで寂しいだろうなということです。お金だけでは結局埋まらない何かがあると、撮ってみたことで気づきました。お金の怖さのようなものがそんなところからも伝わるといいなと思いました。

Q 綾部真弥監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A綾部真弥まずは110分、理屈抜きにエンターテインメントとして楽しんでもらいたいです。そこに人間ドラマがあるので、似たような人を知っているとか、自分が当事者だったことがある方は、背筋をゾクゾクさせて観ていただきたいです(笑)。闇金ジャンルやアウトロージャンルが好きな人はもちろん、それが苦手な人でも面白く観ていただける作品になっていると思います。この映画を観てお金をガツガツ稼ごうと思うのか引いてしまうか、ぜひ見届けてください。

Q綾部真弥監督からOKWAVEユーザーに質問!

綾部真弥ゼニガタにどんな人がお金を借りに来ると面白いと思いますか。

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■Information

『ゼニガタ』

映画『ゼニガタ』2018年5月26日(土)全国ロードショー

錆びついた漁船が停泊するひなびた漁港。路地裏の一角でひっそり営む居酒屋「銭形」。店主は銭形兄弟の富男と静香。表向きは居酒屋だが、深夜0時から闇金「ゼニガタ」に変わる。トサン(10日で3割)という違法な高金利で金を貸し苛烈な取立てで債務者を追い込むのが銭形兄弟のスタイル。ある日、ボクサー崩れの男・八雲が「銭形」に入れてくれと申し出てきて…。

大谷 亮平
小林且弥 佐津川愛美 田中俊介 玉城裕規
岩谷健司 松浦祐也 八木アリサ えんどぅ 土田拓海 吉原雅斗
安達祐実 升毅 渋川清彦

監督:綾部真弥
配給:AMGエンタテインメント スターキャット

http://zenigata-movie.com/

(C)2018『ゼニガタ』製作委員会

★『ゼニガタ』5/26(土)初日舞台挨拶舞台挨拶決定
http://www.cinemart.co.jp/theater/shinjuku/topics/20180510_15054.html


■Profile

綾部真弥

映画監督 綾部真弥(映画『ゼニガタ』)1980年10月16日生まれ、東京都出身。
世界の映画祭で高い評価を受ける鬼才・園子温に師事。助監督として、映画『新宿スワン』(15)、『リアル鬼ごっこ』(15)、『ひそひそ星』(15)、『新宿スワン2』(17)、『アンチポルノ』(17)など多数参加。ドラマ「みんな!エスパーだよ!~欲望だらけのラブウォーズ~」(15/dTV)では監督を務める。『人狼ゲーム クレイジーフォックス』(15)で劇場長編映画デビューを果たし、以後、人気シリーズに成長させる。