Vol.761 映画監督 シドニー・シビリア(映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』)

映画監督 シドニー・シビリア(映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』)

OKWAVE Stars Vol.761は映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』(2018年5月26日公開)シドニー・シビリア監督へのインタビューをお送りします。

Q 前日譚である『いつだってやめられる 7人の危ない教授たち』を経て本作に至るとのことですが、作品の着想をお聞かせください。

A映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』シドニー・シビリアイタリアが抱えている現実に着想を得ました。聡明な哲学の学者が早朝に道路の掃除をする仕事をしながら我が身の不幸を嘆いているという新聞記事を読んで着想を得たんです。それに加えて、イタリア式喜劇は世界的なブランドにもなっています。そういった映画の作り方を取り入れました。イタリアの喜劇はドラマティックな中身をコメディに変えてしまう手法を持っています。それでそんな深刻な新聞記事をコメディにしました。

Q 「いつだってやめられる」というタイトルは、イタリアでよく使われる常套句とのことですね。

Aシドニー・シビリアよく言われますね。僕が子どもの頃はイタリアの街のあちこちにドラッグ中毒の人がいました。彼らはよく「いつだってやめられるんだ」と言っていたのが何とも皮肉だと思っていました。その思い出があったのでこのタイトルにしましたが、この作品のテーマにも合っていました。1作目でお金に困って合法ドラッグ作りを始めた主人公たちですが、「いつだってやめられる」と言っていたのがこの2作目で今度は警察からの命令で出回っている30種類の合法ドラッグを探せと言われてしまいます。「いつだってやめられる」はずがいつまでもやめられないんですよね。

Q 本作で一番大切にしたことは何でしょうか。

A映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』シドニー・シビリア2作目と3作目の脚本は続けて書いて、撮影も同時に行いました。あたかもひとつの作品のように作りましたが、脚本執筆だけでも1年半かかりました。この『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』は『いつだってやめられる 7人の危ない教授たち』を観ていただくと分かると思いますが、本作はいわゆる続編ということではないです。もともと3部作の映画を作ろうとしていたわけではなく、1作目で完結するはずでした。しかし1作目が予想外にヒットして続編を作らないかとプロダクションから相談されたんです。はじめは続編に乗り気ではなくて、僕の好きな映画である『バック・トゥ・ザ・フューチャー』PART2とPART3が同時に撮影されたと聞いて、「全3部作にしてもいいならやります」と冗談交じりに言ってみたらGOサインが出てしまったのです!あと2作撮ると決まった時、僕の中にはたくさんのアイディアがあったのでどれもジャンルが違う作品にしようと思っていました。1作目はイタリア喜劇、そして本作はアクションです。3作目は…まだ秘密です!(笑)

Q 「神経生物学者」「解釈論的記号学者」といったマニアックな学者がたくさん出てきますが、これらは実在するものなのでしょうか。

A映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』シドニー・シビリアはい、実際にあります。彼らが自分の専門について語るシーンもすべて事実に即しています。大学に行ってそれぞれの専門家にお会いしてリサーチしましたので間違いないですよ(笑)。取材の相手先にはこの映画の登場人物よりももっとトンデモナイ研究をしている先生もいました。仲間の教授の一人として古典考古学者が出てきますが、この映画の舞台のローマは街中が遺跡の塊のようなところなので、ちょっと地面に穴を掘るだけで考古学的なモノが出てくるんです。だから道路工事を始めるとすぐに考古学者が工事現場にやって来る(笑)。昼休みになると工事の作業員たちはみんなレストランに行って食事をしているのに考古学者たちは貧乏だからパンしか食べられなくて、そんなところもこの映画と同じです。

Q 計算化学者のアルベルト役のステファノ・フレージさんは1作目出演によってイタリアで大人気になったそうですね。キャスティングについてお聞かせください。

A映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』シドニー・シビリアそうですね、みんな前作ですっかり人気者になりました。とくにステファノは大ブレイクしました。ちょっと太った役者というと今ではステファノが第一人者です。みんな役者としての経験は豊富でしたが、これまでは演劇などで活躍していたので、この作品でメジャーになったと思います。
ところで、イタリア喜劇の悪役は誰にでもある表と裏を描いているので本当の悪役とは言い切れないところがあります。今回登場するルイジ・ロ・カーショ演じるヴァルテル・メルクリオはもっとハリウッド的な悪役にしようと思いました。3作目で彼が演じるヴァルテルの過去が描かれます。難しい役だと思ったのでベネチア国際映画祭男優賞も獲っているルイジ・ロ・カーショに声をかけたら、彼は楽しい役が演じられるのかと思って現場に来たそうです。

Q 印象的な撮影エピソードはありましたか。

Aシドニー・シビリア今回はアクション映画ですが、イタリアではアクション映画を撮り慣れていません。とくに列車の決闘シーンは大変でした。CGを使うのはいやだったので、ちょっと西部劇風の本物のアクションシーンを撮りたいと思いました。そもそも、線路の脇に長い直線道路があるというロケーション探しに難航しました。ようやく見つけて撮影をしてみると、思った以上に走っている列車は速かったです。エドアルド・レオとルイジ・ロ・カーショの二人が列車の屋根に登って、それぞれの足をワイヤーで固定してアナログな方法で撮影しました。線路沿いの道路で撮影していたので、一般の方がその様子を見て驚いているのも印象的でした。幸いにもあれは日本の新幹線ではなく(笑)、貨物列車なのでそんなに速くなくてもいいだろうとは思いましたが、それでも疾走している列車の上に役者本人が立ちましたので、本人たちはかなり怖かったと思います。

Q シドニー・シビリア監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aシドニー・シビリアとにかく観て笑って笑顔になって欲しいです。娯楽作ですが、良い娯楽作は観終わった後に何か考えさせるものですので、そういったものになれば嬉しいです。

Qシドニー・シビリア監督からOKWAVEユーザーに質問!

シドニー・シビリア皆さんは全3作観たいと思いませんか?ぜひ声を上げてください。

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■Information

『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』

映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』2018年5月26日(土)笑撃ロードショー

ピエトロ・ズィンニとその同僚たちは、生き延びるために超絶合法ドラッグの製造に精魂を傾けた結果、犯罪者となった。ところが今度は警察が彼らを必要とする。パオラ・コレッティ警部は服役中のズィンニに、グループのメンバーをもう一度集めて、スマートドラッグの蔓延を防ぐためのミッションを依頼する。彼らの犯罪歴抹消と引き換えに。
ズィンニの呼びかけで例の7人のドラッグ製造連中が再結集。新たなミッションを遂行するには、近年の頭脳流出によって国外へ出ていた研究者の多くを、イタリアへ呼び戻さねばならない。ズィンニはコレッティ警部と共に海外に潜む優秀な研究者たちのリクルートへと向かう。そして10人の新たなチームが結成された。
次々にミッションをこなしていくズィンニたち、しかし大物“ソポックス”にだけはたどり着けなかった。やがて“ソポックス”に必要な成分がピルから抽出できることに気づいたズィンニは、大量のピルが狙われると踏んでピルを追跡する。ピル強奪に新たな敵が現れた。果たしてズィンニは釈放され、妻と生まれたばかりの子どもが待つ病院に駆けつけることができるのか……。

監督・原案・脚本:シドニー・シビリア
出演:エドアルド・レオ(『おとなの事情』)、ルイジ・ロ・カーショ(『夜よ、こんにちは』『人間の値打ち』)、ステファノ・フレージ、グレタ・スカラーノ、ヴァレリア・ソラリーノ
配給:シンカ

http://www.synca.jp/itsudatte/

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■Profile

シドニー・シビリア

映画監督 シドニー・シビリア(映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』)1981年、イタリア生まれ。
生まれ育ったサレルノで短編映画を撮り始め、2007年にローマへ移った。ローマで短編映画『Oggi Gira Così(原題)』(10年・未)をマッテオ・ロヴェーレの製作で監督し、数々の栄誉に輝いた。2014年に初めて手がけた長編映画『いつだってやめられる 7人の危ない教授たち』が大ヒット。ファンダンゴ、アセント・フィルム、ライ・シネマの製作による同作は、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で12部門にノミネートされると、ナストリ・ダルジェント賞など、国内外で数々の賞に輝いた。2017年2月2日には、続篇となる本作『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』が本国で劇場公開された。