Vol.772 映画監督/ジャーナリスト アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン(映画『子どもが教えてくれたこと』)

映画監督/ジャーナリスト アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン(映画『子どもが教えてくれたこと』)

OKWAVE Stars Vol.772はドキュメンタリー映画『子どもが教えてくれたこと』(2018年7月14日公開)アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督へのインタビューをお送りします。

Q 複数の子どもを追ったドキュメンタリーを撮ろうと思ったきっかけをお聞かせください。

A映画『子どもが教えてくれたこと』アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン私の経験ですね。私自身、病気をもった娘が2人いましたが、病気のことよりもその人生に関心がありました。もちろん、子どもからは生き生きとした生命力を感じられるものですが、病気であっても生きようという気持ちを娘たちから感じました。それがきっかけでこの映画を作ろうと思いました。そして、大人が語るのではなく、子どもたちに発言権を与えるような映画にしようと思いました。

Q 5人の主役たちはお互いに面識がなかったそうですね。

Aアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンひとつの病院という単位で描くのではなく、いろんなところから、いろんな出自、いろんな環境で育っている子どもたちを選ぶことで、よりユニバーサルな視点を持ちたいと思いました。

Q 子どもたちが自分の病気のことをしっかり語っていますが、フランスではそれが普通なことでしょうか。

Aアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンそうですね。今ではそれが普通ですが、昔はそうでもなかったです。段々とそうなってきました。診断の時にも親だけではなく子ども自身を介入させることが普通のことになってきました。

Q 子どもたちはカメラの前で雄弁に語っています。どんなアプローチを取られたのでしょう。

A映画『子どもが教えてくれたこと』アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン彼ら5人はとくにおしゃべりしてくれる子たちだということは事前にリサーチ済みでしたけれど、実際に初めて会った時からみんな慣れ親しんでいましたね(笑)。カメラが回っていることを気にかけてはいませんが、カメラの存在を忘れてもいなかったと思います。というのは、時々、彼ら自身が「カメラを止めて」とか「いま撮って」とまるで監督になったように言ってくることがあったからです(笑)。カメラ目線で喋り出すこともあって、それも受け入れました。

Q 子どもたちの哲学的な発言にはっとさせられたりもしました。

Aアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンドキュメンタリーの原則でもあるのですが、子どもたちのひとり、カミーユがニョッキを食べながらとてもいいことを言ったのですが、もぐもぐしていて聞き取れなかったんです。「もう一度言って」とは言えなかったですね(笑)。だから、彼らの貴重な発言が収められているとも言えますね。

Q 原題の『Et Les Mistrals Gagnants』のもとになっているルノー・セシャンの歌「Mistral gagnant」についてお聞かせください。

Aアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン古い曲ではあるのですが、フランスではいまでも人気がある曲です。日本語の字幕をつけていただきましたが、「水たまりをいくつも飛びこえよう」という歌詞がまさに子どもの頃の悩みのないような時代を語っているので、この映画ではぜひ使いたいと思いました。

Q この映画を通じて、新しい発見などはありましたか。

Aアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンこの映画は自分で編集もしました。発見ということではありませんが、嬉しいサプライズがありました。この映画は子どもたちを一人ずつ順番に撮影しました。彼ら自身は顔を合わせていないのですが、映像をつないでみると、呼応し合っている瞬間が何度もありました。そんなつながりや連続性を感じました。

Q フランスでの公開時の反響についてお聞かせください。

Aアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン非常に注目されて、皆さん、肯定的に受け止めていただきました。映画を観た方は目元は真っ赤ですけれど口元は笑っている姿が多くて印象的でした。

Q 今後の監督の展望などお聞かせください。

Aアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンテーマによって表現を変えた方がいいとは思っています。ものを書くということと映像で撮るということは私にとっては同じくらいの意味があるものです。いまはちょうど小説を書き終えて、新しく映像の企画もあるので、両立させていこうと思っています。

Q 子どもと向き合う時に監督自身が大切にしていることをお聞かせください。

A映画『子どもが教えてくれたこと』アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン子どものことを信頼することが大切だと思っています。それは赤ちゃんでも同じです。子どもは年齢に関わらず人生は自分のものだという自覚がちゃんとあります。親は寄り添ったり伴走するしかない立場なんだと思います。子どものことがすごく心配でコントロールしたがることが先進国の親にはありがちです。子どもたちが選んだり、子どもたちに降り掛かってくることに対して、見守る立場だと思っていれば、ガッカリしたりネガティブに評価することもなく、そういうこともあるんだ、と広い心で受け止められるのかなと思います。

Q アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンできるだけたくさんの日本の方がこの映画と出会ってくれるのを願っています。大人としてこの映画に接するのではなく、自分の中に隠されている子ども心というものを感じながら観ていただけるといいなと思います。

Qアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督からOKWAVEユーザーに質問!

アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンあなたにとっていちばん大切なことは何ですか。皆さんがどんなことを考えているのか興味深いです。

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■Information

『子どもが教えてくれたこと』

映画『子どもが教えてくれたこと』2018年7月14日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

主人公はアンブル、カミーユ、イマド、シャルル、テュデュアルの5人の子どもたち。彼らに共通するのは、みな病気を患っているということ。治療を続けながらも、彼らは毎日を精一杯生きている。家族とのかけがえのない時間、学校で仲間たちと過ごすひと時。辛くて痛くて、泣きたくなることもある。けれど、彼らは次の瞬間、また新たな関心事や楽しみを見つけ出す。そんな子どもたちを、カメラは優しく、静かに見つめ続ける。

監督・脚本:アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン
出演:アンブル、カミーユ、イマド、シャルル、テュデュアル
配給:ドマ

http://kodomo-oshiete.com/

© Incognita Films ‒ TF1 Droits Audiovisuels


■Profile

アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン

映画監督/ジャーナリスト アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン(映画『子どもが教えてくれたこと』)1973年、フランス・パリ生まれ。
大学でジャーナリズムを学び、新聞や専門誌などに幅広く執筆。2000年にロイックと結婚、02年に長男ガスパールが誕生する。04年、長女タイスが誕生。06年、タイスが異染性白質ジストロフィーを発病し、家族が一丸となっての闘病生活が始まる。この時、すでに3人目を妊娠中だった。07年、タイスが短い生涯を終える。生まれたばかりの次女、アズィリスもタイスと同じ病を患っていることを告げられる。08年、次男アルチュールが誕生。
11年、タイスとの日々を綴った「濡れた砂の上の小さな足跡」(講談社刊)が発売される。新聞や雑誌を中心に大きな話題を呼び、35万部を超えるベストセラーとなり、現在も部数を伸ばしている。13年、家族のその後を描いた「Une journée particulière(ある特別な1日、未邦訳)」を上梓。
17年2月、『子どもが教えてくれたこと』がフランスで公開されると、フランス版ロッテントマト「AlloCiné」では、一般観客は5点満点中4.2、プレスは5点満点中3.8の高得点を記録する。同年、次女アズィリスが短い生涯を終える。
現在は苦痛緩和ケア財団の科学委員会のメンバーを務める。夫と二人の息子と共にパリで暮らしながら、フランス各地で講演活動を行っている。