Vol.781 女優 高畑淳子(パルコ・プロデュース2018「チルドレン」)

高畑淳子(パルコ・プロデュース2018「チルドレン」)

OKWAVE Stars Vol.781はパルコ・プロデュース2018「チルドレン」出演の高畑淳子さんへのインタビューをお送りします。

Q 原発事故後、移住した元物理学者たちの物語、という本作の題材についてはどうお感じになられましたか。

A高畑淳子まさに福島のことなんです。本作を書いたルーシー・カークウッドさんの母国イギリスではあまり地震が起きないそうですが、海に囲まれているという点ではイギリスと日本は似ています。考える意識がとても高いお国柄ですし、舞台も大好きな国ですので、とても見事にまとめられたなと思います。3人の物理学者を主人公に据えて、青春時代の思い出もあれば、お互いの人間関係、夫婦関係、子どものことなどもまぶしつつ、この大きな主題に持っていくのがすごい書き手だなと思います。それも若干30代前半の女性が書かれたということも驚きです。

Q 演じる役柄についてお聞かせください。

A高畑淳子私が演じるヘイゼル役を演じられた方はトニー賞にノミネートもされていて、素晴らしい演技をされたと聞いています。ヘイゼルは物理学者で、母性も非常に強く、もうひとりの女性の登場人物ローズとは真逆にあるような女性です。生をどれだけ謳歌するか、ということを大事にしていますが、ローズからあることを突きつけられます。非常に人間的で俗物感も強いですが、その俗物感もまた人間らしい、非常に正直な人物でもあると思います。

Q 鶴見辰吾さん、若村麻由美さんとの3人芝居ですが、事前には作品について話したりされましたか。

Aパルコ・プロデュース2018「チルドレン」高畑淳子チラシの撮影は三浦半島に行って1日がかりで行いました。ドローンを使ったり、動画撮影もあったので、その待ち時間には、それこそ、あいさつもそこそこに、「物理学者に会ったことないよ」とか、自然とこの戯曲に対して感じたことを話し合いました。この舞台で登らなければならない山がとても高いので、同じ山を登る不安もあれば、やりきらなければという気持ちも感じられて、舞台に対して欲張りな方たちで良かったと感じました。この作品をきちんと創り上げること以外は、余計な気を使わずにいいと思えましたし、そのくらいこの舞台は高い山なんだとも感じました。

Q 物理学者の役作りについてはいかがでしょうか。

A高畑淳子これまでに物理学者の方に会ったこともないですし、原子力の仕組みもそれまでは知りませんでした。鶴見さんが淡々と語ってくださって、「どんなふうに反応するのかしら」などと話していたら、若村さんが「そういうふうに話しているのが物理学者みたい」と言われて、ひとつのことに探究心をもって取り組むというところは役者と科学者の共通点なのかなと思いました。

Q セリフ量が相当多いようですね。

A高畑淳子(パルコ・プロデュース2018「チルドレン」)高畑淳子ヘイゼルは、自分のところに闖入者が“のそっと”立って現れたことでペースがおかしくなって、前半は意味もなくしゃべり倒すんです。海音が聞こえてくる、人があまり来そうにないコテージが舞台で、水を使った仕掛けもあります。台本を読んだだけではイメージできなかったシーンが読み合わせでみんなの声を聴くとこうなるんだとイメージが広がりました。スラスラ読めてしまう戯曲は案外自分が思っているとおりにしかならないのですが、そうではない作品は自分でも思ってもみないシーンになります。今回の「チルドレン」はまさにそういう戯曲で、具体的な起承転結が見えづらい作品ですので、それを私たち3人で探すのも楽しいですし、お客さんも不思議な時間を体験しつつ、「え、ここに持っていくのか」と思ってもらえたらいいなと思います。見え隠れするのは地震や原発、大きな人間のドラマですが、それを妙齢の、生への執着もある3人が右往左往する様は、むしろ神々しくも見えるようなドラマになればいいなと思っています。
セリフの長さについては、昔は3日くらい机上で稽古をさせてもらえば、セリフを覚えるってどういうこと、というくらいセリフが頭に入りました。それが今は千本ノックのようにやらないと頭に入らないです。仲代達矢さんは紙にセリフを書かれて、それを家中に貼って覚える、という話を聞いたことがあって、聞いた当時は笑い話かと思っていましたが、今はまさにその状態です(笑)。

Q 本作の見どころについてお聞かせください。

A高畑淳子若村さん演じるローズという女性が鼻血を出した状態から始まるので、まさに何が起きているのか、というところから始まります。私の演じるヘイゼルがあたふたしているところに鶴見さん演じる旦那さんのロビンが帰ってきます。3人の関係が見えてきたところで、ローズが訪れた理由が分かるので、「こういうところに持っていかれるのか」という落差と、彼女は何のために来たんだろうということを一緒に探す時間が面白いと思います。ローズとヘイゼルの間で何が起きるのかも見どころだと思いますし、振り子が揺れるような振り幅がこのお芝居の面白さだと思います。
「お芝居はINGで進んでいれば絶対に面白い」という好きな言葉があります。1ヶ月稽古をして、本番で毎回「わ、驚いた!」というセリフが本当に驚いて出ていれば絶対に面白いです。いま初めて起きていることをお客さんと一緒に体感できるように稽古していくことが私たちがやることなのだと思っています。

Q 高畑淳子さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A高畑淳子これまでに見たことがないものをお見せできたらと思います。忘れられないお芝居だと思っていただいて、何年か経ってふっと思い出していただけるような作品になれたらと思います。

Q高畑淳子さんからOKWAVEユーザーに質問!

高畑淳子皆さんは劇場に行ったことはありますか?
若村さんがお芝居を始めたきっかけは、何となく渋谷を歩いている時に、時間があったので、「ハロルドとモード」というお芝居をやっていたので観てみようかな、と思ったのがお芝居の道に入るきっかけだったそうです。

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■Information

パルコ・プロデュース2018「チルドレン」

パルコ・プロデュース2018「チルドレン」2018年9月8日(土)~9日(日)彩の国さいたま芸術劇場
2018年9月12日(水)~26日(水)世田谷パブリックシアター
2018年9月29日(土)~30日(日)穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
2018年10月2日(火)~3日(水)サンケイホールブリーゼ
2018年10月10日(水)高知市文化プラザかるぽーと 大ホール
2018年10月13日(土)~14日(日)北九州芸術劇場 中劇場
2018年10月20日(土)富山県民会館
2018年10月30日(火)えずこホール(仙南芸術文化センター)

巨大地震、大津波、そしてそれに伴う原発事故。
そこから遠くもない海辺のコテージに移り住んだ夫婦。
そこへ数十年ぶりに女友達が訪ねてきた。
昔のように語らい、踊り、冗談を言い合う3人。ユーモラスなやり取りの向こうにも、スリリングなテーマ、秀逸なヒューマンドラマが徐々に浮かび上がっていく。
現代を生きる私たちは、母なる地球とどう関わるべきなのか?
人生の後半に差し掛かった3人の元物理学者。
彼らに迫る決断の時。そして彼らの下す結論とは・・・。
母なる地球から託された警鐘を、どう未来の子どもたちのために伝えていくのか。
人類の「叡智」が問われる挑発的な問題作、日本初演。

作:ルーシー・カークウッド
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:高畑淳子 鶴見辰吾 若村麻由美

http://www.parco-play.com/web/program/children/


■Profile

高畑淳子

高畑淳子(パルコ・プロデュース2018「チルドレン」)1954年10月11日生まれ、香川県出身。A型。
女優として舞台、ドラマ、映画に活躍中。