OKWAVE Stars Vol.782はこまつ座『マンザナ、わが町』に出演の北川理恵さんへのインタビューをお送りします。
Q 『マンザナ、わが町』は2015年に上演されていますが、ご覧になられていましたか。
A北川理恵はい。お客さんの一人として観に行きました。作品背景などを事前には調べなかったので、第二次世界大戦中のアメリカに日系人の強制収容所があったということも知らず、その事実に驚きました。そして、生い立ちや職業、考え方が全く違っていた5人が最後には互いに手を取り合いながら強く生きていく姿を見て、大号泣してしまいました。終演後に吉沢梨絵さんにお会いしたのですが、感想を言いながらまた泣いてしまったんです。そんな感動をした作品に出演できると決まった時は、本当にびっくりしました。
Q 演じる日系人のリリアン竹内という役柄についてどう受け止めていますか。
A北川理恵リリアンは心の内側が熱くて、実はかなり過激だと思っています。でもそれは素直さや正義感からくるもので、中身は歌が好きで、アメリカのことも好きな純粋な女の子です。日系人だからと差別されたり、思ってもみないことを言われてしまった時には、自分の意見を言っていかないといけないと強く思っています。今の日本の18歳の女の子とは全然違いますよね。とても尊敬するところです。
Q ご自身と何か共通点はありますか。
A北川理恵歌が好きなところは同じです。強制収容所の5人の中で一番年下ですが、私も出演する5人の中で一番年下です。リリアンのようにコミュニケーションをどんどんとっていくほどではないですが、先輩方と仲良くなっていきたいというところは似ていると思います。
Q 女優5人のみの舞台、ということですが、共演者の方々とはどんなコミュニケーションをとっていますか。
A北川理恵私だけ今回の公演から参加なのですが、先輩方がとても温かく迎えてくださいました。稽古の休憩中にも「ぬか漬けを作ってきたよ」「とうもろこしを茹でてきたよ」と差し入れしてくださるんです。こんなに健康になる現場はない!と思うくらい良くしていただいています(笑)。普段のおしゃべりも含め、そんな関係性をつくってくださることが本当にありがたいですし、その距離感が舞台の上でも出るのだろうなと思います。前回の公演を観た時、最初から最後までを5人で演じ抜いていく姿にも感動しました。チームとして支え合わないとできないことだと思いますし、私も自分の心を近づけていく気持ちを大事にして過ごしています。
Q 井上ひさしさんの書かれたセリフについて思うところはいかがでしょう。
A北川理恵役者が言葉をそのまま伝えることに尽力しないと、井上先生のお考えがストレートに伝わらないのだろうなと思います。稽古が終わると、プロンプターの方がセリフの「てにをは」や前後が違う箇所を付箋に貼って渡してくださるんです。それがなくなるように頑張っていますが、たとえ「付箋から卒業!」できても、後戻りもしないようにしなければという気持ちです。
Q どんなところが見どころだと思いますか。
A北川理恵「日本とアメリカは分かり合えない」と言われる場面があります。アメリカ市民の日系人のリリアンにはそれは許せないことで、国や人種が違っても分かり合いたい、心を通わせたいと強く願っています。それをお客さんに伝える、というよりも観ていただけたらいろいろ考えられる作品だと思います。もしいま日本がどこかの国と戦争になってしまったら、日本にいるその国の人との関係はどうなってしまうのだろうとか、人種以外の差別、相手との思想の違いをどう受け入れるか、など生き方、考え方を問われるような場面が見どころだと思います。
Q 稽古期間中に心がけていることはありますか。
A北川理恵振り切ることです。ここ2年ほど再演ものに出る機会が多いのですが、再演だからといって、前回の公演のことをあまり気にしすぎないようにしています。自分はこういうリリアンだ、ということを大切にしたいなあと。まず飛び込んで振り切ってやってみて、それで演出の鵜山さんや共演の皆さんと相談しながらできればという気持ちでいます。「度胸あるよね」と言われました(笑)。
Q 北川理恵さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A北川理恵強制収容所や人種差別をテーマにしていますが、堅苦しくなく、柔らかく心を動かされる作品です。人のエネルギーや手を取り合うことの温かさを感じていただけると思います。楽しみにしていてください!
■Information
こまつ座第124回公演・紀伊國屋書店提携『マンザナ、わが町』
2018年9月7日(金)〜15日(土)新宿東口・紀伊國屋ホール
1942年3月下旬のカリフォルニア。4か月前の真珠湾攻撃以来、「排日」の気運は一気に高まっていた。特に西海岸に住んでいたおよそ11万人は、奥地に急造された10カ所の収容所に強制収容されることになった。
そのうちの1つ、スペイン語で「リンゴ園」という意味の名の土地につくられたのがマンザナ収容所。砂漠の真ん中のバラックの一室に集められたのは、新聞記者のソフィア、浪曲師のオトメ、手品師のサチコ、歌手のリリアン、女優のジョイスら日系アメリカ人女性5人。財産も自由も奪われた彼女らが収容所長に命じられたのは、収容所を美化する朗読劇「マンザナ、わが町」の上演だった。
ソフィアの演出のもとで「マンザナ、わが町」の稽古が進むにつれ、それぞれが抱える夢、怒り、葛藤、秘密が少しずつ明らかになっていく。時には反目し合うが、徐々に結束力を高めていく5人。だが事態は、ソフィアのある行動から劇の上演どころではなくなってしまう。
作:井上ひさし
演出:鵜山仁
出演:土居裕子、熊谷真実、伊勢佳世、北川理恵、吉沢梨絵
入場料:7,000円、学生割引4,000円(中学、高校、大学、各種専門学校ならびに演劇養成所の学生対象)
こまつ座:03-3862-5941
こまつ座オンラインチケット:http://www.komatsuza.co.jp/
■Profile
北川理恵
1990年11月25日生まれ、千葉県出身。
「アニー」ジュライ役でデビューして以来、卓越した歌唱力と豊かな表現力で数々の舞台で活躍。ヒロインから個性的な役柄まで幅広く演じる。またアニメーション「プリキュア」シリーズでは2015年より4年続けてTV・映画の主題歌歌唱を務める。出演舞台に「手紙」「死神」「マリオネット」「キューティ・ブロンド」「屋根の上のヴァイオリン弾き」他多数。