Vol.787 俳優 松下洸平(こまつ座『母と暮せば』)

松下洸平(こまつ座『母と暮せば』)

OKWAVE Stars Vol.787はこまつ座『母と暮せば』に出演の松下洸平さんへのインタビューをお送りします。

Q 本作への出演についてまずはどんなお気持ちでしょうか。

A松下洸平信じられない気持ちです。演劇を始めてそんなに月日も経っていない中で、すばらしい作品をたくさん世に送り出しているこまつ座さんとお仕事できるだけでも光栄です。僕は井上ひさしさんとはお会いすることは叶わなかったのですが、やはりこうして作品に携われることになるのだったら、一度くらいお目にかかりたかったと思っています。『木の上の軍隊』と今回の『母と暮せば』という作品は「戦後“命”の三部作」ということで、命の大切さを次の世代に届けていく大切な役割を頂いたんだなと、すごく責任を感じています。僕は演劇の人間なので、世の中に対してのメッセージなどは演劇をもってしか表現できません。演出の栗山民也さんは「どこかに怒りを持って、届けたい」と仰っていましたが、僕もこういう作品に携わることで芽生えてくる戦争や社会に対する怒りを、俳優として演劇を通じて伝えていかなければならないなと思います。

Q 二人芝居ということについてはいかがでしょうか。

A松下洸平舞台で二人は一番怖いです。逃げ場がないですし、究極の手法だと思います。その分、得られるものも大きいです。少人数での演劇は相手との会話がいかに大切かということを学ばせていただいているので、大変ですけれど非常にありがたいです。

Q 映画版もあって、いよいよ舞台版ということですね。

A松下洸平映画版を拝見して、ある種の悲惨さは描かずに、母子とそれを取り巻く町子と上海のおじさんの4人を主軸にした非常に温かい作品になっていると思いました。だからこそ、今回の舞台化は、それプラス戦争に対する怒りというものをブラッシュアップしたものになるんじゃないかと思います。映画版とはまた違った、すごく攻めた台本になっています。長崎から逃げずに向き合った畑澤聖悟さんの心意気も感じますし、栗山さんの怒りもそうです。でも、面白いのは、山田洋次監督にも畑澤さんにも栗山さんにも心のどこかに井上ひさしさんがいるということです。その共通点、井上ひさしさんの遺志を引き継いで作られているので、やはり井上ひさしさんは偉大な人なんだと改めて感じます。

Q 息子役を演じるにあたってどんな準備をされていますか。

A松下洸平やればやるほど難しいです。もちろん資料も見ています。本作の参考ににしたという「長崎の鐘」という永井隆さんの随筆も読みました。あの時に何が起きたのか、僕の頭の中で鮮明に描けるようにしておこうとしています。実際に長崎にも行きましたし、そこでいろんな人の話を聞いて、あの日何があって、そこからどう長崎が復興していったのか、知識として入れておく必要があると思いました。
それと、富田靖子さんが演じる伸子の息子である、ということが重要だと考えていかないといけないと思いました。このお母さんからこの子が育ったんだ、ということを富田さんからたくさんもらいたいと思っています。富田さんの演技をよく見て、この二人が親子であるという説得力を見つけたいです。

Q 舞台上はどのようになるのでしょうか。

A松下洸平(こまつ座『母と暮せば』)松下洸平僕たちが住んでいた家を再現したセットがしっかり組んであるので安心しました。栗山さんはたまに素舞台で照明だけ、という時があるんです(笑)。僕が栗山さんと長くやらせていただいている「スリル・ミー」という作品がありますが、そちらは、お客さんは覗き見しているような、見てはいけないものを見ているんじゃないかと錯覚するように、二人だけの芝居に集中してほしい、と栗山さんから言われていました。今回の芝居は僕と母の会話をそっと見守るように観ていただけたらいいなと思います。73年前の話ですが、これは現代史であって、確実に今につながる話なので、他人事のようには観られませんが、たくさん笑えますし喜劇的な要素もありますので、客席では温かく見守ってもらえたらいいなと思います。

Q 本作のキーとなる部分はいかがでしょう。

A松下洸平僕は戦争を知らない世代です。お客さんの大半も戦争を知らない世代だと思います。この作品を通じて、知ることの重要さを知ってもらいたいなと思います。僕がもし俳優をやっていなかったら、知ることもなかったこともたくさんあります。演劇というエンタテインメントを通して、当たり前のように生きていることをもう一度噛み締めてもらえるような作品になればいいなと思います。この作品は本当に深くて、伝えたりお見せするべきものが本当に多いんです。「演劇の持つ力はすごい」というところまで持っていけるようにしたいです。とはいえ、栗山さんは結構稽古の時間が短期集中型なので、相当な集中力と自分から提示をしないとついていけないです。ですので稽古でいろんなことを提示して失敗しながら、初日にはうまくまとまるようにしたいです。

Q 俳優としては普段からどのようなことに気を配っていますか。

A松下洸平僕はオンとオフの切り替えが得意ではなくてひとつのことしかできなくなってしまうタイプですが、作品に関するニュースをよく見るようになりました。『木の上の軍隊』の時は、稽古期間中にちょうど沖縄の基地問題や米軍の沖縄での事故の話題が多くて敏感になっていました。今回は、長崎のことや原発のニュースがあると、ちゃんと聞かないといけない、という気持ちになります。

Q 松下洸平さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A松下洸平映画をご覧になった方もそうでない方も、当たり前のようにあるものを当たり前ではないということに気づかされる作品になると思います。戦争というと大きな話題だと身構えてしまうかもしれませんが、家族や友だち、住んでいる地域のような身の回りの人や物の大切さが感じられる作品になると思います。何かに迷っていたり足踏みしている人がいたら、僕と母の姿を観ていただくと、前向きな気持ちにもなれると思います。ぜひ劇場に足を運んでください。

Q松下洸平さんからOKWAVEユーザーに質問!

松下洸平昨日、ボーリングに行ったら、今日はすごい筋肉痛なんです。しかもスコアは70点台でした。どなたか、そんな僕にもできるボーリングの上達方法を教えてください。

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■Information

こまつ座『母と暮せば』

【東京公演】2018年10月5日(金)〜21日(日)新宿東口・紀伊國屋ホール
【茨城公演】2018年10月27日(土)水戸芸術館 ACM劇場
【岩手公演】2018年11月3日(土・祝)花巻市文化会館
【滋賀公演】2018年11月17日(土)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール
【千葉公演】2018年11月23日(金・祝)市川市文化会館 小ホール
【愛知公演】2018年12月1日(土)春日井市東部市民センター
【埼玉公演】2018年12月8日(土)草加市文化会館
【兵庫公演】2018年12月11日(火)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

平和を願うすべての人に捧げる、こまつ座「戦後”命”の三部作」の第三弾。
ヒロシマ(『父と暮せば』)、オキナワ(『木の上の軍隊』)に続く、ナガサキを描いたこまつ座渾身の一作がついに幕を開ける。
戦後70年に完成し、日本アカデミー賞をはじめ数々の賞を受賞した映画「母と暮せば」をもとに待望の舞台化。
井上ひさしが遺したナガサキの物語を畑澤聖悟(劇団 渡辺源四郎商店)が引き継ぎ、栗山民也の手によってここに生み出される。

核兵器というものは、どこまでも人間をつけ回し、
なんどもなんども人間を騙し討ちにして、
人間の生きる勇気と誇りとを台無しにする悪魔の贈物であって、
こんなものを兵器だの爆弾だのと「やさし気に」呼んではいけない。
たとえ、どんな理由があろうと、こんなものをつくったり、保持したり、
人間の上に落としたりするやつは、この世の大ばかやろうである。
彼らはじつに人間の顔をした悪魔である。そう呼んでまちがいない。
いや、人類の中で最初に、核兵器の正体が悪魔の弟子どもであることを体験したわたしたちは、
そう呼ぶ資格と、そう呼ばねばならない(人類にたいする)聖なる勤めがあります。

―――――井上ひさし

原案:井上ひさし
作:畑澤聖悟
演出:栗山民也
協力・監修:山田洋次

富田靖子 松下洸平

【東京公演】入場料:6,000円(全席指定・税込)、U-30 3,500円(観劇時30歳以下)

http://www.komatsuza.co.jp/


■Profile

松下洸平

松下洸平(こまつ座『母と暮せば』)1987年3月6日生まれ、東京都出身。
2008年、自作曲に合わせて絵を描きながら歌を歌うPerformanceを開始。「ペインティングライター」として都内及び関東近郊でライブ活動を行い、同年11月5日「STAND UP!」でCDデビュー。09年から TV、舞台と活動の幅を広げる。主な出演舞台作品に『テロ』(演出:森新太郎)、『ラディアント・ベイビー 〜キース・ヘリングの生涯〜』(演出:岸谷五朗)、『九条丸家の殺人事件』(演出:オークラ)、『アドルフに告ぐ』『スリル・ミー』(演出:栗山民也)、ミュージカル『next to normal』(演出:マイケル・グライフ)、音楽劇『リタルダンド』(演出:G2)、『十九歳のジェイコブ』(演出:松本雄吉)など多数。こまつ座へは 2016年『木の上の軍隊』(演出:栗山民也)に出演。

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