OKWAVE Stars Vol.792は映画『スカイラインー奪還ー』(2018年10月13日公開)リアム・オドネル監督へのインタビューをお送りします。
Q 前作『スカイラインー征服ー』と同じ時間軸で新作を撮ったねらいをまずはお聞かせください。
Aリアム・オドネル前作も作るのは楽しかったですが、低予算だったのでやり残した感覚もあって、少し苛立ちもありました。そのひとつとして、高層階で繰り広げられていた物語を、今回は地面に近い場所で何が起きているかを描こうとしました。前作では「海辺に逃げよう」といって実現しなかったことを今回は実際にやりました。エイリアンから逃げるところを描くこと、同じ時間帯を別の視点で見ること、そしてエイリアンの宇宙船を前作でも出したので、今回はその中をもっと描きたいと思いました。そして何より、3つ目のロケーションを用意することです。第一幕で人類は侵略され、第二幕で主人公たちが宇宙船にさらわれます。最後の第三幕で彼らが生き残るために戦うシーンを入れました。
Q エイリアンとの戦いがたとえば銃撃戦ではなく、フィジカルな戦いにした理由は何でしょう。
Aリアム・オドネルいろんな要素をミックスしました。第三幕では罠を仕掛けたり爆弾も使いましたが、最後は自分の体でエイリアンの弱点をねらう、というシンプルなアクションにしたいと思いました。たとえば『スター・ウォーズ:ジェダイの帰還』に出てくるイウォーク族が帝国軍をシンプルな手段でやっつけるシーンが出てきますが、あれはベトナム戦争からヒントを得ているのだと思います。今回の舞台となっているラオスも同様で、戦争がなければ地下トンネルもなかったでしょう。人が追い込まれた時に、強さをどう表すのか、それをフィジカルの戦いに織り込みました。
Q キャストの方々、とくに伝統武術シラットの使い手であるイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンの起用についてお聞かせください。
Aリアム・オドネル二人の前に、主人公マーク役のフランク・グリロについて言うと、見てのとおり洗練されていて、タフだし、怖いものなしなタイプです。その上、プロ意識も高くて、努力家です。映画はそれぞれの部門にヘッドがいますが、彼はまさに俳優部のヘッドでした。ベテランなので、周りにも良い影響を与えてみんなを導いていました。
イコとヤヤンのことは元々ファンでしたが、人々を楽しませるためにどうすればいいかを考えて彼らはがんばってくれました。ヤヤンはどんな作品に出ても映えるタイプです。イコは純粋な面もあるので、ジャッキー・チェンのようにファミリー向けの映画に出てもいいんじゃないかと思いました。とはいえ、やはり彼の“殺し合い”の部分は魅力なのでそういう作品にも出続けてほしいです。
Q スペクタクル映像のVFXを手がけてきたハイドラックス[Hydraulx]の新作として、VFXでの新しい取り組みについてお聞かせください。
Aリアム・オドネル常に技術は革新されていますので新しい要素を取り入れています。宇宙船が衝突する場面では「Houdini」という新しい3DCGソフトを使っています。ハイドラックスは地震のようなディザスターものは得意でしたが、エイリアンのようなクリーチャーものやスーツを使ったエイリアンの造形は初めての経験でした。でもこれでそういう作品もできると証明できたかと思います。また、地球外の宇宙空間を描くのも初めての経験だったと思います。これでハイドラックスは「スター・ウォーズ」のような世界観の表現もできるようになったと思います。
Q エイリアンのスーツについて、エンドロールでメイキングを見せていましたが、役者が演じる時は、どのくらい完成形を分かっているものなのでしょうか。
Aリアム・オドネルコンセプトアートがあるので、出来上がりの映像は想像できると思います。実は僕がスーツの中に入ってエイリアンを演じているシーンもあります。スーツの中に入ってみると、自分ではない何かになることができて、ちょっとしたトランス状態を味わうことができました。こういう映画を撮る人は、ぜひ自分もスーツの中に入ってみるといいと思います(笑)。実際には重いし暑いので、ダイエット効果もあると思います(笑)。そのスーツを着てある人物を刺すシーンを演じているのですが、刺し方が思っている以上に弱々しかったようで、外で演出している時と比べて、演じるのは難しいものだと思いました(笑)。
Q 長編初監督とのことでしたが、撮り終えていかがでしたか。
Aリアム・オドネル夢が叶いました。一つ一つの決断を下すのも楽しいですし、新しい学び、出会いがあるのも楽しかったです。編集だけ、脚本だけ、ということだと、同じ作業の繰り返しで、時にはイライラすることもあります。監督の仕事は、キャスティングやロケハン、コンセプトアート、衣装、すべて自分の判断になりますが、それを全部やってパズルを組み合わせるように完成させていく仕事はやはり楽しいです。完成した作品を携えて日本にやって来られたことも、すべてが旅路のようで、大変ですけれど、世界で一番の仕事だと思います。
Q 「スカイライン」第3弾も企画中とのことですね。
Aリアム・オドネル脚本をもう書き上げています。この『スカイラインー奪還ー』はひとつの映画として完結していますが、第3弾は本作のエンディングの後の物語となっています。『スカイラインー奪還ー』に出てくるある人物をエイリアン映画のスーパーヒーローとして描きたいと思っています。いろんなジャンルを組み合わせて、この「スカイライン」という世界観を語り継いでいきたいです。
Q リアム・オドネル監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!
Aリアム・オドネル本作を日本で公開できることを光栄に思います。前作もそうですが、この「スカイライン」は日本のアニメや怪獣映画に影響を受けて作っているので、それらの映画へのラブレターのようなものです。製作のグレッグとコリンのストラウス兄弟も僕もそれらを観て育ったので、皆さんにはぜひ本作を大きなスクリーンで観ていただきたいです。
■Information
『スカイラインー奪還ー』
突如として世界各地に現れ、地上から人々を吸い上げていく未確認飛行物体。軍隊の攻撃も空しく、地球はわずか3日間で征服された。しかし、人類反撃の希望は僅かに残されていた。
息子のトレントを追い、宇宙船に吸い込まれたLA市警の刑事マークは、人間の心を残したエイリアンの協力により内部からの破壊に成功する。
内戦が続くラオスに墜落した宇宙船から、船内で助けた赤ん坊ローズと共に脱出したマークは、反政府組織のボス、スアのアジトに身を潜める。
驚異的なスピードで乳児から幼女に成長するローズから、エイリアンに対抗する手がかりを見つけだした彼らだったが、アジトには大量のエイリアンが押し寄せていた。
地球の支配者の座を賭けて、残されたわずかな武器と肉体を駆使した最終決戦のときが迫っていた…。
フランク・グリロ ボヤナ・ノヴァコヴィッチ ジョニー・ウエストン イコ・ウワイス ヤヤン・ルヒアン
製作・監督・脚本:リアム・オドネル
製作:グレッグ・ストラウス、コリン・ストラウス<ストラウス兄弟>
配給:REGENTS / ハピネット
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■Profile
リアム・オドネル
1982年生まれ。
2005年からゲータレード、コカコーラ等のCM、アッシャーや50セントのミュージック・ビデオの脚本でストラウス兄弟と仕事を始め、『AVP2 エイリアンズvs.プレデター』(07)では、クリエイティブ・コンサルタントとして参加した。『スカイラインー征服―』(10)には製作・脚本として参加をしていて、本作は監督デビューとなる。