OKWAVE Stars Vol.828は映画『赤い雪 Red Snow』(大ヒット公開中)主演の菜 葉 菜さんへのインタビューをお送りします。
Q 本作出演についてまずはご感想をお聞かせください。
A菜 葉 菜甲斐さやか監督とは「何かお仕事ができたらいいね」という話を以前にしていました。監督は実際に起きた事件をもとにした台本を描かれていて「ぴったりな役があるんですよ」とその台本を見せていただきました。“笑って泣ける”ようなエンタテインメント作品とは間逆なのが甲斐監督の魅力でもあって、今の日本映画ではなかなかない題材ですし、読んでいて衝撃も大きかったです。それで「ぜひやりたい」とお伝えしました。
Q 台本の印象はいかがだったでしょう。
A菜 葉 菜サスペンス要素が入って、軸である記憶の曖昧さとのバランスがいいなと思いました。人間を掘り下げている監督の目線と、サスペンスのドキドキ感が入っていて面白かったです。何よりも甲斐監督が「ぴったりだ」と言ってくださった早百合に惚れました。この役を絶対に演じたいと思えるようなキャラクターだと思いました。
現代は情報の量がすごく多いですし、それによって決めつけてしまう怖さがあります。それを世の中に問いかけたいと監督は仰っていました。真実は一つしかありませんが、その真実は受け止め方によって変わってしまいます。そこが面白いですし、それを描こうとしている甲斐監督はすごいです。観てくださる方がどう受け止めるのかという怖さもありますが、答えがない部分を楽しんでいただきたいです。
Q 早百合役について、台詞ではない芝居が多く求められていました。
A菜 葉 菜そうなんです。出てきてから10分以上、一言も話していません。台本上では、佐藤浩市さんの演じている宅間との会話など、喋っているシーンが結構あったんです。撮影後に、編集で早百合の台詞がかなり切られていて、出来上がったものを観て浩市さんから「こんなに台詞がなかったか?」と言われたり、私も「こんなに喋ってないんだ!」とびっくりしました。監督の狙いや見せたいものがそういうところにも表れていて、観る人がどう解釈するのか試されているなと。情報がたくさんある今の時代と真逆を行っていますので、それを与えない甲斐監督からの挑戦状のような作品になっていると思います。
Q 早百合の気持ちをどう演じましたか。
A菜 葉 菜早百合は過去に受けた虐待をはじめ、暗い過去を持っています。そんな心に闇のある部分を説得力をもって演じたいと思いました。脚色されている部分はありますが、似た経験をされた方が違和感を感じてはいけませんので、虐待を受けた方の心情について書かれた資料を読んだり、監督からも参考資料をいただいてリサーチしました。また、監督の思い描く早百合を演じたかったので、監督ともよくディスカッションしました。一つ一つのシーンに嘘をつきたくないという気持ちがありましたし、浩市さんら先輩方との芝居の中で出てくる感情を出していきたいという思いもありました。ですので、キャラクターの背景は作り込みましたが、現場に入ってからは監督と早百合と向き合う他の俳優の方との生身の芝居を大切にしよう、と思って演じました。
Q 佐藤浩市さん、永瀬正敏さん、井浦新さん。各世代を代表する映画俳優との共演はいかがでしたか。
A菜 葉 菜夏川結衣さんもそうですし、とても贅沢な現場ですよね。私が何をやっても受け止めてくださる方々ばかりですが、浩市さんとのシーンはやはり浩市さんの世界になりますし、それぞれの俳優さんによって現場の空気感が変わるのを間近に感じました。とはいえ、早百合は宅間に負けていない役なので、役者としてひるんでしまうと映像にも出てしまうので、気を張って演じました。皆さん、色が違いますので、そこで早百合を保つのはなかなか大変でした。
Q 撮影していて印象的だったシーンについてはいかがでしょう。
A菜 葉 菜浩市さんのオーラはすごかったですが、宅間と早百合の関係性も不思議です。早百合は逃げようと思えば逃げられるのに宅間と一緒にいます。早百合の背景を語る上であの二人のシーンは大事です。シーン数は多くはありませんが、浩市さんとの芝居はどれも印象深いです。
私は映画女優になりたくてこの道に入ったので、その当時から映画俳優として活躍されていた永瀬さんは憧れの存在でした。そんな永瀬さん演じる一希と早百合の雪の中の対決シーンが印象的でした。本番は一発撮りという緊張感もありつつ、二人が初めてぶつかるシーンでもあったので、お互いに押し殺してきたものをぶつける様子が出せたと思います。
Q 雪深いロケ地ですね。
A菜 葉 菜山形県の新庄市でのオールロケです。雪がないと成立しない作品ですが、実は撮影のときはそんなに降ってはいませんでした。それでも、分かってはいましたが撮影中はずっと寒かったです。ですが、その寒さがあったからこその悲壮感も画面に出ていると思います。
東北で撮影した映画ですので、初日の舞台挨拶は山形県内でさせていただきましたし、まず東北の方々に観ていただきたいという思いでした。
Q この映画を通じて新しい発見はありましたか。
A菜 葉 菜人には大事な思い出もありますが、忘れることで前に進むこともあると思いますし、その時々の判断で一喜一憂することも多いと思います。この作品に出演して、自分の過去や記憶について、たとえば「あのとき、みんなは本当はどう思っていたんだろう」と振り返る機会になりました。自分に都合よく記憶していたことが、本当はどうだったのか考えることがあると、そこから新しい気づきもあるのかなと思いました。
Q 菜 葉 菜さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A菜 葉 菜台詞で多くを語っている映画ではないので、一回だけではなく何回か観ると、見方によっていろいろな捉え方ができると思います。いまの日本映画にはない作りですので、本来の映画の面白さに気づいていただけると思います。自分の想像力や感性を使って観ていただけると、新しい引き出しが開けると思います。
Q菜 葉 菜さんからOKWAVEユーザーに質問!
名前最高の思い出だったはずが実はそうではなかったということ、または最悪だと思っていたけれど実はそうではなかったというエピソードをお聞かせください。
■Information
『赤い雪 Red Snow』
全国にて大ヒット上映中
テアトル新宿での凱旋上映第1弾は2月28日で終了。都内・横浜など、引き続き凱旋上映が続きます。詳細は、公式HPにて
ある雪の日、一人の少年が忽然と姿を消した。
少年を見失った兄・白川一希は、自分のせいで弟を見失ったと思いこみ、心に深い傷を負う。
少年誘拐の容疑者と疑われた女の周りでは次々と怪しい殺人事件が起こるが、真実は闇へと落ちていった。
30年後。
事件の真相を追う記者・木立省吾が容疑者と疑われた女の一人娘・江藤早百合を見つけ出したことにより、「被害者の兄」と「容疑者の娘」の運命の歯車が大きく動き始める。
一つの事件で深い傷を負った人間の、曖昧な記憶を辿る葛藤の中に垣間見えた真実は、それぞれの運命を予想もしない結末へと導いていく。
それぞれの記憶が氷解した先に見えたものは何か。
全てを信じてはいけない。
永瀬正敏 菜 葉 菜
井浦新 夏川結衣 佐藤浩市
脚本・監督:甲斐さやか
配給:アークエンタテインメント
©2019「赤い雪」製作委員会
■Profile
菜 葉 菜
7月17日生まれ、東京都出身。
女優として映画やTVドラマなど幅広く活躍中。
映画『君がまた走り出すとき』(2019年3月2日公開)にも出演。