Vol.830 渡邉裕也、吉村界人(映画『ハッピーアイランド』)

映画監督 渡邉裕也、俳優 吉村界人(映画『ハッピーアイランド』)

OKWAVE Stars Vol.830は映画『ハッピーアイランド』(2019年3月2日公開)渡邉裕也監督と主演の吉村界人さんへのインタビューをお送りします。

Q 『ハッピーアイランド』の企画立ち上げについての経緯をお聞かせください。

A映画監督 渡邉裕也、主演 吉村界人(映画『ハッピーアイランド』)渡邉裕也僕が高校を卒業する頃に震災がありました。僕の地元の福島県須賀川市は津波被害はありませんでしたが、その後に原発のことがあって、実家の農家では風評被害で野菜が売れなくなりました。その中で、愚痴も文句も言わずにただただ野菜を作り続けた祖父のことをとても格好良いなと思っていました。祖父が農業を続けていた50年間で、野菜が売れなくて捨てたことは一度もなく、原発事故が起きてはじめてそうせざるをえなかった祖父の気持ちは考えられなかったです。祖父はそれに対しても愚痴を言うことはありませんでした。普段ニュースを見ていてもそういう人間の尊い部分が紹介されることはないと感じていて、それを題材にして映画を撮りたいと思いました。でも、映画は実際にはなかなか撮れずにいました。祖父が亡くなって、それを機に、いろいろ考えて撮ることにしました。

Q 吉村さんを主演に迎えたねらいをお聞かせください。

A渡邉裕也主人公は青年がいいなと思っていました。自分を投影したかったわけではありませんが、青年の成長物語にしたいなと。農家の背中を見て成長する20代の若い主人公を描こうと思いました。

吉村界人この映画では、普通にドラマや映画の仕事をするのとは少し違う気持ちになりました。俳優の仕事の役割はこういうことを代弁することだとも思いましたので、責任感のようなものを感じました。

渡邉裕也最初に会って「こういう話をやりたい」と話した時点では、完成した映画のようなストレートな成長物語ではなく、もうちょっとハードな内容を想定していました。何度か話し合っているうちに、脚本も何度も書き直して今の形になっていきました。

Q 演じた真也のキャラクターについてはいかがでしたか。

A映画監督 渡邉裕也、主演 吉村界人(映画『ハッピーアイランド』)吉村界人東京でフラフラしている青年の心というものは、僕も引きこもりをしている時期があったのでわかりましたし、「何だかわからないけど福島でやってやるか」という生々しい気持ちを忘れずにいようと思いました。

渡邉裕也真也はできるかぎりストレートに見えるようにしてもらいました。あのキャラクターに裏があるように見えてしまうと、成長しているように見えないからです。フラフラしているようで、純粋でちゃんと目の前で起きていることを受け止められるものを持っている、芯の部分では「こいつは変わるんじゃないか」と思えるように調整しました。

Q 福島・須賀川市での撮影の様子についてお聞かせください。

A吉村界人現場では監督と萩原聖人さんがアイデアを出し合ってドンドン進めていました。農作業はやると楽しかったですが、すごく大変だとも感じました。何と言っても農地がすごく広いんです。農作業はすごく地味な作業ですが、僕らが食べているものはこうやってできていくんだと実感しました。強い信念がないと続かないだろうなと思いました。

渡邉裕也作品の狙いとしても、そう感じてもらえてよかったです。撮影で貸していただいた方の農地はすごく広かったです。畑と畑の移動にも車を使うくらいでしたので。

Q 共演者についてお聞かせください。

A映画監督 渡邉裕也、主演 吉村界人(映画『ハッピーアイランド』)渡邉裕也萩原さんはもともとすごくお世話になっていて、萩原さんのマネージャーさんにキャスティングの相談をしたら萩原さん本人が来てくださったので想定外でした。大後寿々花さんは親しみのある“福島にいそうなかわいさ”の女性でした(笑)。

吉村界人萩原さんはドシッと構えていてくださいましたし、結構引っ張ってもらいました。僕が暴れ馬のようになっていて、萩原さんに抑えていただいているような感じですね。大後さんのユーモアも頼りになりました。

Q 方言についてはいかがでしたか。

A渡邉裕也年上の方が使う方言は分かりやすく訛っていますが、大後さんくらいの若い子が使う言葉は訛りがやや溶けています。僕はそのリアルさにこだわっていましたが、とくに大後さんは違いが分かりづらかったようで大変だったようです。

吉村界人僕は方言は使っていませんが、後半の公民館でお話しを聞くシーンも含め、聞いている分には理解できました。

Q 印象的なシーンなどをお聞かせください。

A映画監督 渡邉裕也、主演 吉村界人(映画『ハッピーアイランド』)渡邉裕也最後の駅で吉村くんと大後さんが会話するシーンで、もともと書いていたセリフを、現場で吉村くんと話して変えたのをよく覚えています。「一生懸命生きるのは大変じゃん」というセリフがそれで、その前の萩原さんと吉村くんのシーンとは違った答えを出そうと思って作り変えたのが印象深いです。

吉村界人僕は現地の方たちと公民館でしゃべるシーンです。実際にそんなことをしたこともないし、それを映画のシーンとしてやっています。現地にいる人たちの生の声を聞けて、心の豊かさを感じました。

渡邉裕也台本で言うと、「公民館で主人公が質問する」としか書きませんでしたが、狙ったとおりにできました。企画を立てたときから、主人公が成長する糧として、役としてではなく生の声を聞く、ということにしていて、それを踏まえて結末の主人公の決断に至るという流れにしました。

Q この映画を通じて新しい発見や気づきなどはありましたか。

A渡邉裕也自分が思い描いていた予定通りの撮り方ではなく、吉村くんが演じてそれを撮っていくことで演出法を発見していく、という感じでしたので、撮りながらの発見、というものが多かったです。撮り終えて感じたのは、映画を公開するということがこんなに大変なのか、というのが発見でしたね。

吉村界人2015年の撮影当時やっていたことが間違っていなかったなと、最近映画を観直してみて改めて感じました。監督や僕らが思っている以上に福島出身の方は何かを感じると思います。4年前に撮っていときはこの映画を届かせるんだと熱くなっていました。そこから少し時間があったことでまた新しい火がついたように感じています。

渡邉裕也撮っているときは周りからいろいろ言われたりもしましたが、こうして今振り返ってみると間違ってなかったなと思います。福島の人がいて、吉村くんが演じることで、追体験できるようにできているし、単なる福島の映画にはしたくなかったから、ちゃんと福島で過ごした青春物語として芯が通っていると思います。観た人にもそれが伝わるだろうという自信もあります。

Q OKWAVEユーザーにメッセージ!

A渡邉裕也3.11があって、ただ福島がかわいそうだと思っている人もいるかもしれませんが、きちんと前を向いて生きている人がいることも忘れないでほしいと思います。前を向くことは人間が生きていく上で必要なことだと思いますし、そんな彼らを僕はすごく尊敬しています。この映画はそれを伝えることが大事だと思っています。僕はこの映画で福島のイメージを変えようとまでは思っていません。福島の人たちが人としてちゃんと尊敬できる存在だと思ってもらえたり、自分もそれを見て頑張ろうと思ってもらえればいいなと思います。

吉村界人震災があって福島県は弱っているのかというと、そんな弱々しさはなくすごく強さを感じました。東京で生活しているからこそ思うことかと思いますが、福島に限らず、一生懸命生きるのは大変ですが一生懸命頑張っている人の素晴らしさがストレートに伝わればいいなと思います。

Q渡邉裕也監督、吉村界人さんからOKWAVEユーザーに質問!

渡邉裕也僕はこの映画を通じて尊敬する祖父について語った意味合いが強いのですが、皆さんが尊敬できる人は誰ですか。

吉村界人皆さんは熱くなれる映画は日本映画に必要だと思いますか。僕は必要だと思っています。

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■Information

『ハッピーアイランド』

映画『ハッピーアイランド』【東京】2019年3月2日(土)
【福島】2019年3月8日(金)
【大阪】2019年3月16日(土)
ほか順次全国公開

金ナシ職ナシやる気ナシ。東京で暮らす23歳の真也は飲み屋の店主の薦めから福島の農家で働くが、さむい・きつい・朝がはやい農作業に初日から嫌気がさす。しかもそもそも野菜は大きらい!
ただ、そんな彼にも優しく厳しく向き合う農家の先輩たち。初めは地元の保育士・里紗への下心で居残った真也だが、やがて手塩にかけた農作物の収穫や、彼のボス正雄の農業への誇りに触れるうち、福島の日々を好きになる。そんな中、ある日真也は初めて売り子をした県外の直売所で、福島県産の野菜を毛嫌いする客にキレて殴りかかる。真也は諫められるが、どうしても納得がいかず……。

吉村界人
大後寿々花
三輪江一 中村尚輝 岡村多加江
萩原聖人

監督・脚本:渡邉裕也

公式サイト:http://movie-happyisland.com/

©ExPerson2019


■Profile映画監督 渡邉裕也、主演 吉村界人(映画『ハッピーアイランド』)

渡邉裕也

1992年生まれ、福島県須賀川市出身。
2014年大学中退後、助監督として映像業界に入る。MVなどの監督をしながら、助監督として商業映画に関わり始める。今作が初監督であり、初商業監督作品となる。

https://twitter.com/youyou7you

吉村界人

1993年2月2日生まれ、東京都出身。
2014年、映画『ポルトレーPORTRAITー』(内田俊太郎監督)で映画主演デビュー。以降、多数の映画、ドラマ、CMに出演。主な近作に、主演作『太陽を掴め』(16/中村祐太郎監督)、映画『獣道』(17/内田英治監督)、『ビジランテ』(17/入江悠監督)、『劇場版 お前はまだ グンマを知らない』(17/水野格監督)、主演映画『サラバ静寂』(18/宇賀那健一監督)、『悪魔』(18/藤井道人監督)等。話題作の『モリのいる場所』(18/沖田修一監督)にも出演を果たし、ドラマ「スモーキング」(TX系列)、「獣になれない私たち」(NTV系列)他数々のドラマに出演をする等、活躍の場を広げている。

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