Vol.835 映画監督 佐藤慶紀(ドキュメンタリー映画『新宿タイガー』)

映画監督 佐藤慶紀(映画『新宿タイガー』)

OKWAVE Stars Vol.835はドキュメンタリー映画『新宿タイガー』(2019年3月22日公開)佐藤慶紀監督へのインタビューをお送りします。

Q 新宿タイガーさんのことを監督はいつ知ったのでしょう。

A佐藤慶紀前作『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』を配給した渋谷プロダクションの小林良二プロデューサーに新宿タイガーさんのことを紹介されて知りました。映画の中で街頭インタビューもしましたが、タイガーさん自身、行くところは大体決まっているそうなので、新宿の地元の方以外では知らない人も多かったです。

Q 初対面の印象はいかがでしたか。

A映画『新宿タイガー』佐藤慶紀小林プロデューサーの紹介でタイガーさんと僕と3人で会って映画の話をしたら最初から映画企画に興味を持っていただけました。その日に3時間くらい、後日にも3時間くらいのミーティングをしましたが、タイガーさんはお喋り好きで、ほとんどタイガーさんの話を僕が聞いているという感じでした。撮影に対しては協力していただけましたが、自分のことはあまり話さないし、用心深い方でもあるので、接していて、余計にタイガーさんが何者なのかは分からなくなってしまいました。

Q どう映画にまとめようと考えましたか。

A映画『新宿タイガー』佐藤慶紀ドキュメンタリー映画はその人の葛藤を描くことが多いので、最初は僕もタイガーさんのそういうものを探していました。タイガーさんはああいった格好で新宿で仕事をして、飲みに行ったりしているので、そこには葛藤はないなとすぐに気づきました。そこで、タイガーさんを描きつつ、新宿の街や、タイガーさんが好きな映画のことを描けたらいいなと思いました。撮影当初は新宿の街に重点を置こうとしましたが、あるときから、タイガーさんの日常を描こうと思いました。タイガーさんから「いまから飲みに行くよ」と電話がかかってくるので、ひたすらそんなタイガーさんの様子を追いかけたりしました。編集で、タイガーさんの日常を描きながら、なぜその格好を続けているのかの理由であったり、新宿の街の歴史を描いていきました。

Q 監督自身は新宿に思い入れはありましたか。

A佐藤慶紀新宿はいわゆるサブカルチャーが生まれた街、という印象です。何で新宿からサブカルチャーが生まれたのか、という疑問はありましたので、それを知りたいとは思っていました。
映画の中に出てくる田代葉子さんが「新宿は何もカテゴライズされずにいろんなものが混ざっている街」と言っていて納得しました。人に対して温かいわけではないですし、むしろ無関心だからこそ、自分と違う人に対して、それはそれでいいと認めているようなところがあるんだと思いました。

Q タイガーさんが新宿から電車で移動しているシーンもありましたが、周りの反応はいかがでしたか。

A佐藤慶紀みんな見てはいけないものを見た感じでそっとしているような様子でした。新宿は彼の生活の場ですが、タイガーさんは違う街を歩くことを「パフォーマンス」と言っていましたので、何か表現しようという気持ちを持っているのだと思います。

Q タイガーさんがタイガーさんで居続けられる凄みを感じる瞬間はありましたか。

A佐藤慶紀タイガーさんはすごく真っ直ぐな方です。お金のことに対して潔癖ですし、自分の発言には責任を持っています。台風の日でもあの姿なので、もはや一体なのだと思います。

Q 監督自身はこの映画での新しい気づきや学びはありましたか。

A映画『新宿タイガー』佐藤慶紀この映画を作り始める前は、ロマンや理想というものはあまり好きではありませんでした。そういったものよりも、現実を見て冷静に考えていきたいという考え方でした。この映画も分析的な作品にしようと考えていましたが、タイガーさんはロマンという言葉を口にして、実際に生き方もその通りでした。これだったらロマンを描いてもいいなと思いましたし、これがロマンだと言えるとも思いました。タイガーさんは「愛と平和」という言葉もよく使います。使い古された言葉ですし、ときに理想的すぎる言葉ですが、タイガーさんはそういう理想を掲げることの大切さを分かって使っていたので、僕もそういった理想について考えさせられました。タイガーさんのような生き方はできませんが、でもタイガーさんはそれを実践できているということを伝えたいと思いました。

Q 佐藤慶紀監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A佐藤慶紀新宿タイガーさんという、ずっとタイガーさんで居続けている人の生き方を観ていただきたいです。僕はこれからもタイガーさんを応援していきたいです。映画の中で、新聞配達の仕事をあの姿のままやっていて、会社もそれを認めてしまっていることも収めていますが、うまくやればそういう生き方ができる、という生き方の可能性も感じられるかもしれません。

Q佐藤慶紀監督からOKWAVEユーザーに質問!

佐藤慶紀ちなみに皆さんは新宿タイガーさんのことは知っていたでしょうか。

回答する


■Information

『新宿タイガー』

映画『新宿タイガー』2019年3月22日(金)~テアトル新宿にてレイトショー公開他全国順次

東京のエンターテイメントをリードする街・新宿。1960年代から1970年代にかけ、新宿は社会運動の中心だった。
2018年、この街には“新宿タイガー”と呼ばれる年配の男性がいる。彼はいつも虎のお面を被り、ド派手な格好をし、毎日新宿中を歩いている。彼は、彼が24歳だった1972年に、死ぬまでこの格好でタイガーとして生きることを決意した。1972年当時、何が彼をそう決意させたのか?新聞販売店や、1998年のオープン時と2012年のリニューアル時のポスターにタイガーを起用したTOWER RECORDS新宿店の関係者、ゴールデン街の店主たちなど、様々な人へのインタビューを通じ、虎のお面の裏に隠された彼の意図と、一つのことを貫き通すことの素晴らしさ、そして新宿の街が担ってきた重要な役割に迫る。

出演:新宿タイガー
ナレーション:寺島しのぶ
監督・撮影・編集:佐藤慶紀
配給:渋谷プロダクション

公式サイト:http://shinjuku-tiger.com/

(C) 2019「新宿タイガー」の映画を作る会


■Profile

佐藤慶紀

映画監督 佐藤慶紀(映画『新宿タイガー』)1975年生まれ、愛知県半田市出身。
アメリカの南カリフォルニア大学・映画制作学科卒業。
フリーランスTVディレクターとして働きながら、自主映画を作り続けている。家庭崩壊を描いた長編映画第1作目の『BAD CHILD』は、第29回ロサンゼルス・アジア太平洋映画祭に正式出品され、東京、愛知、宮城、北海道など、全国15カ所で自主上映会を開催。全国47都道府県での上映を目指し、現在も自主上映活動を続けている。長編2作目の『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』は、第21回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門に正式出品され、第23回ヴズール国際アジア映画祭インターナショナルコンペティション部門でスペシャルメンションを受賞。第12回大阪アジアン映画祭のインディフォーラム部門にも正式出品された。『新宿タイガー』は初のドキュメンタリー作品である。