OKWAVE Stars Vol.839は映画『4月の君、スピカ。』(2019年4月5日公開)大谷健太郎監督へのインタビューをお送りします。
Q 本作の映画化の経緯をお聞かせください。
A大谷健太郎杉山美和子先生の「花にけだもの」という作品をFODでドラマ化をさせていただいて、杉山先生の作品の世界観の面白さは知っていました。この原作では究極の三角関係が面白く描かれています。ストーリーとしての複雑さや難解さはそれほどありませんが、三角関係の繊細さや脆さ、儚さのようなものが感じられる作品です。スイートでロマンチックな恋愛関係だけではなく、恋愛よりも友情の方が大事だったりする、高校生ならではの人間関係が描かれています。そんな時期は人生の中で高校3年間しかないと思います。大学に入れば個人行動になっていきますので、高校時代というものは友情を壊してまで恋愛にいくことはできないような、そんな一瞬のきらめきのような時期だからこそ起こり得ることが面白いと気づきました。原作の最初の方で深月が星のことを「俺、ダメだから、そういうの」と言って振ってしまいますが、そこまで読んだ時点でこれは映画にすると面白いと感じました。振ったり振られたり、傷ついたり傷つけたり。そんな高校時代のドキドキをもう一度呼び覚ませるようにリアルに描こうと思いました。キャラクターに依存したストーリー運びではなく、誰もが重ねられる高校時代の原体験のようなもの描こうと思いました。ですので映画好きな大人にもぜひ観てほしいなと。キャラクター重視の作品ではなく人間重視な作品として受け止めてもらいたいです。泰陽も深月も頭が良くてスポーツもできるスペックの高いキャラクターですが、そんなふたりがちゃんと普通の男の子のように傷ついたり悩んでいますので、そんな生々しさを面白く描きたいと思いました。
Q 福原遥さんのキャスティングについてお聞かせください。
A大谷健太郎福原遥さんのことは、僕の子どもが「クッキンアイドルアイ!マイ!まいん!」を観ていて知っていたので、アイドル的な子なのかなと思っていました。実際に会って話してみると女優というものに真剣に取り組みたいという熱意がすごくありました。原作に似せて役のために生まれて初めて髪の毛をばっさり切ったそうで、女優業に重きを置いているなと感じましたし、初めての主演作ということでしたので、僕も面白い作品にしようと改めて思いました。「3年A組-今から皆さんは、人質です-」での演技力が話題になっていましたが、そもそもポテンシャルがあって、この映画でも発揮していました。周りに配慮ができるし、気持ちをリアルに乗せた、身の丈に合った嘘がないうまい芝居をするなと感じました。一見、お人形のようなかわいらしさがあるようで、表情豊かですし、内に秘めた強さと見た目のバランスが取れていて自然な様子でした。
Q 佐藤大樹さんと鈴木仁さんについてはいかがでしたでしょう。
A大谷健太郎ふたりとも性格のいい子たちでした。佐藤大樹くんはEXILEの一番年下で、FANTASTICSのリーダーというふたつの立場があるので、頭が良く、泰陽に近い好感の持てる子でした。鈴木仁くんはこういう大きな役を演じるのが初めてだったそうで張り切っていましたが、福原さんと同じように背伸びせずに自然に役を作っていました。
これはキャスト全員に言ったことですが、「この作品は関係性が面白いので自分の役だけを考えるのではなく、自分の役割を考えて演じてほしい」と伝えました。「自分のセリフだけではなく、相手のセリフも覚えて、その相手のセリフを聞いた時の感情を活かした方がいいよ」と。ある時、ふたりが現場で役を入れ替えて遊んでる姿がありました。ふたりともちゃんとお互いのセリフが頭に入っているんだなと、真剣に取り組んでいるなと思って嬉しかったです。
Q ロケーションがとても素敵でした。
A大谷健太郎僕は長野県千曲市は初めてでした。原作は都会の真ん中の進学校が舞台ですが、実際にきれいな星空が見えるところを舞台にしようという話になりました。千曲市は星もよく見えますが、映画づくりに全面的に協力するのは初めてとのことでしたので、ほかの映画やドラマの中ではあまり見たことがない風景を見せられると思いました。「またここで撮ってる」と言われるよりも、初めて見る場所がいいなと。千曲川が素晴らしいですし、星見ヶ丘という丘も星を見るのにうってつけでしたので、ほとんどのロケを千曲市でさせていただきました。
Q 本作を通じての新しい発見はありましたか。
A大谷健太郎高校生という特殊な時期は、大人になって迷わなくなったり当たり前にできてしまうことがまだ不完全な時期です。自分が何者なのか、何を信じ何を大切にしていくのかを必死にもがいて掴み取ろうとしているので、そこを掬いとって貴重なものを映し撮れたのではないかと思います。大人を描いていたら描けないものがありますので、人間ドラマが好きな大人の映画ファンに観てもらいたいなと思います。少女漫画が原作のドラマをここ最近ずっと撮っていましたが、この作品は高校生の人間関係の繊細さと改めて向き合った気がします。
Q 大谷健太郎監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!
A大谷健太郎杉山先生の持っている原作の世界観をすごく大事にしつつ、いかに映画ファンの方たちに観てもらえるかを考えて撮りました。この三角関係の人間ドラマを楽しんでもらいたいです。また、スクリーンいっぱいに輝く星空も楽しめると思います。千曲市の風景が魅力的なので、ぜひ同じ星空を観に行ってほしいです。
■Information
『4月の君、スピカ。』
2019年4月5日(金)新宿ピカデリー、イオンシネマほか全国劇場公開
地味で暗いと言われ続けて17年。東京から長野の高校へ、リセットするはずの転校初日、うっかり空気読めない発言で失敗デビューをしてしまった運の悪い早乙女星(さおとめ・せい)。クラスメートにいじられ、勉強もついていけず、明るいはずの新生活がすっかりお先真っ暗と落ち込んでいた矢先、ちょっぴり意地悪で強引な学年トップの秀才・宇田川泰陽(うだがわ・たいよう)と、天文好きで無口な好青年・大高深月(おおたか・みづき)に出会う。「早乙女星…乙女座の星・スピカと同じ名前だ」と、深月の静かに熱く語る姿に、星は初めての恋に落ちる。そんな気持ちになど全く気づかない深月は、星を泰陽と部員二人の天文部に誘う。どうせ不純な動機の入部だと反対していた泰陽だが、ケンカしながらも何かと目が離せない星への恋を自覚していく。
そして二人の様子を深月はそっと見つめる。お互いの気持ちが見え隠れしながらも楽しい三人の部活生活がずっと続くと思っていた、そんな時、泰陽の元カノ・天川咲が転校してくる。突然星への想いにブレーキをかける泰陽。それには、深月も関わるとある過去の出来事が関わっていた…。
春の夜空に輝く大三角形のように想い合う引力で身動きが取れない、もどかしくて切ない天体観測ロマンチック・ラブストーリー。
福原遥
佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS from EXILE TRIBE)
鈴木仁
井桁弘恵
監督:大谷健太郎
配給:イオンエンターテイメント
(C)2019 杉山美和子・小学館/「4月の君、スピカ。」製作委員会
■Profile
大谷健太郎
1965年11月14日生まれ、京都府出身。O型。
多摩美術大学美術学部芸術学科卒。
大学在学中は映像演出研究会で8ミリ映画を製作。そのうちの1本『青緑』が1988年のぴあフィルムフェスティバルに入賞。1991年に『私と他人になった彼は』で同3部門を受賞。1999年『avec mon mari アベックモンマリ』で劇場用映画デビューを果たす。
この作品と2作目『とらばいゆ』(2002年)が国内外の映画祭で高い評価を受け、「本物の恋愛映画が撮れる新しい才能」として注目を集める。初のメジャー作となった『NANA』(2005年)はその年を代表する大ヒット映画となった。また、日本テレビ「ヤング ブラック ジャック」(2011年)以降は、テレビドラマなど映画以外にも活躍の場を広げている。