OKWAVE Stars Vol.850は映画『パリの家族たち』(2019年5月25日公開)のマリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督へのインタビューをお送りします。
Q パリで働く女性とその家族を題材にした映画を作ろうと思った経緯をお聞かせください。
Aマリー=カスティーユ・マンシオン=シャール(以下、監督)自分の子どもやお母さんとの関係というものは人生ににおいてとても大きなものです。それについてアンサンブルキャストで探ってみるのが面白いだろうなと思いました。こういった関係というものは、皆さんそれぞれ違うけれども、どこか似ているところがあると思います。
Q 本作の脚本作りはどのように進めましたか。
A監督実はもっと多くのキャラクターを出したいと思って脚本を書いていました。「多すぎるよ」と言われてキャラクターを減らすことの方が大変でしたし、撮影後、編集をすることの方がもっと大変でした。最初に編集した3時間くらいあったものをいろいろカットしていかなければなりませんでした。短いエピソードの中にも大事なものがあるし、それらをつないでいく上でのバランスをとることも大変でした。
Q 育児中の女性大統領が登場しますが、そこに込めた意図などお聞かせください。
A監督演じる女優はタフでなければ難しいだろうなと思いました。それと同時に女性的で美しい人がいいとも思いました。タフなだけの男っぽい女性では伝わらないだろうなと。観客に女性大統領を視覚化することと、リアルに感じさせることが大事でした。大統領はフランスで一番大変な仕事の一つでしょうし、それができる女性でも、母親になるということでの脆さは、他の新しくお母さんになった女性と同じだということを伝えたいと思いました。
Q 三姉妹と母親の関係についても考えさせられますね。
A監督同じ母親だけれども、三姉妹それぞれの悩みや関係性があるということを見せたいと思いました。母親を施設に入れるかどうか、三人三様の反応を見せることも興味深く観てもらえる要素だと思います。偉大な母であれ、虐待的な母であれ、母親とのつながりというものには特別な思いがありますし、幾つになっても母親の前では子どもであるということを描きました。
Q 監督自身は家族像や家族の関係について、本作を作ったことで新たに気づいたことはありましたか。
A監督気づきに終わりはないですよ(笑)。まだ3本くらい映画が撮れるくらい多くのことを学びました。感動的で素晴らしかったのは、この映画を観たいろんな人が私のところに感想を言いに来てくれたことです。母親あるいは子どもとの関係は、それぞれが特別なストーリーです。中には、はるか前にお母さんをなくしていても、まるで昨日の出来事のような痛々しさをもったままの方もいて、それほど母親と子どものつながりは複雑で難しいもので美しいものなんだと思いました。
Q マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!
A監督外国の映画ですが日本の皆さんにも身近に感じられると思います。フランスの観客からは、母親であること、子どもであることに対して、この映画を観ることで少し気持ちが楽になった、という感想を聞きました。映画を観てそんな感覚になっていただけたら嬉しいです。
■Information
『パリの家族たち』
2019年5月25日(土)、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
フランス、パリ。5月の母の日が近づくとある日。女性大統領アンヌは、職務と初めての母親業の狭間で不安に揺れていた。強硬なリーダーシップで国民を率い、高い支持率を得ていたにも関わらず、母親となり戸惑うアンヌ。そんな彼女を夫のグレゴワールは優しく支えていた。
2人の子どもを持つシングルマザーでジャーナリストのダフネは、野心家で仕事を優先するあまり思春期の子どもたちの気持ちに寄り添えないでいた。子どもたちは、母よりもベビーシッターのテレーズに心を許している。
ダフネの妹で、独身を謳歌する大学教授のナタリーは、教え子との恋愛を愉しんでいた。一方で、世間の母親たちに強烈な偏見を持つ彼女は、母の日をテーマに講義をするが…。
小児科医のイザベルは幼少期の母ジャクリーヌとの関係が原因でトラウマを抱え、養子を受け入れることを考えていた。妹のダフネとナタリーと共に、認知症が進む母ジャクリーヌの介護のことで頭を悩ましている。幼いころに母から受けた仕打ちが三者三様の心の傷となっていた三姉妹は、母の日に母親を置き去りにする…。
病気を患っていた舞台女優のアリアンは、残された時間を舞台女優として、さらに新たに始めたタップダンスにと、人生を充実させたいと思っていた。だが、自由にしたいアリアンに対して、心配のあまり行動を制限しようとする息子が悩みのタネだった。
息子の将来のため、国を出て我が子と離れて暮らすことを選んだ中国人娼婦。スカイプでの息子との会話だけが生きがいだ。
花屋のココは、全く電話にも出てくれない恋人スタンの子どもを妊娠し、悩んだ末に生む決意をする。さらに、同じ花屋で働くジャックは、亡き母への思い出とともに生きていた。
それぞれが、大切な人への想いを胸に、幸せになるための決断をする。
監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール(『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』)
出演:オドレイ・フルーロ、クロチルド・クロ、オリヴィア・コート、パスカル・アルビロ、ジャンヌ・ローザ、カルメン・マウラ、ニコール・ガルシア、 ヴァンサン・ドゥディエンヌ、マリー=クリスティーヌ・バロー、パスカル・ドゥモロン、ギュスタヴ・ケルヴェン、ノエミ・メルラン
配給:シンカ
© WILLOW FILMS – UGC IMAGES – ORANGE STUDIO – FRANCE 2 CINÉMA
■Profile
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
コロンビア・ピクチャーズのDevelopment Excutive、ハリウッド・リポーターの国際版編集長を務めたあと、制作会社Trinacaでエクセキューティブプロデューサーを務める。1998年に制作会社LOMA NASHAを共同で立ち上げ、着想、脚本執筆、公開時のマーケティングなどの、プロジェクトを通した展開戦略に力を尽くしている。2001年、さらにVENDREDI FILMを共同で立ち上げ、この2つの制作会社で12本の長編を制作している。主な長編作品として、国際映画祭で数々の賞を受賞し日本でも大ヒットした『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(14)、第29回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で上映された『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(16/劇場未公開)などがある。また、プロデューサー、配給、テレビの映画編成担当者、エージェント、ジャーナリストなど、映画業界の女性たちからなるCERCLE FEMININ DU CINEMA FRANÇAIS(フランス映画の女性サークル)の設立者でもある。