Vol.854 俳優 合田雅吏(映画『二宮金次郎』)

合田雅吏(映画『二宮金次郎』)

OKWAVE Stars Vol.854は映画『二宮金次郎』(2019年6月1日公開)主演の合田雅吏さんへのインタビューをお送りします。

Q 二宮金次郎役をオファーされてどう感じましたか。

A合田雅吏(映画『二宮金次郎』)合田雅吏僕は小田原が地元なので、二宮金次郎は地元の偉人なんです。ただでさえ実在の人物を演じるのは役者にとってはプレッシャーです。それがさらに偉人と言われ、しかも地元の偉人、となるとプレッシャーはとんでもなく、すごくハードルが高い役です。もちろんお話をいただいて嬉しかったですし、すぐに「演じたい」と引き受けました。でも、自分にできるのか、自分に合うのだろうかという不安が大きかったです。地元には子孫の方がいらっしゃいますし、しかも僕は小田原市の観光大使をさせていただいているので、その子孫の方とはこのお話が来る以前からお会いしたこともあります。そんな立場ですので、どう演じればいいか、というプレッシャーが大きかったです。五十嵐匠監督からはクランクインの1年前にお話をいただいていましたので、その準備期間がありがたくて、いろんな準備をして臨みました。

Q では実際にどのように役作りや準備を進めましたか。

A合田雅吏監督からは、二宮金次郎は武士の身分を与えられているが農民であると言われました。農民ということは土にまみれている人だと。撮影中も土を触る場面が多いのでとにかく土に慣れてくださいと言われました。地元に農業をやっている後輩がいるので、田植えや畑仕事を1年にわたってさせてもらいました。
役作りでは、演じる人物との共通点をなるべく多く見つけることをいつも心がけています。二宮金次郎の生家が「小田原市尊徳記念館」という記念館になっているので、何度か足を運んで生い立ちや人物像、歴史的な背景を勉強しました。それはすごく参考になりましたが、話を聞けば聞くほど、偉人ですのですごい話しか出てこないんです。だからハードルはどんどん高くなっていきました。しかも、記念館の近くには二宮金次郎の親戚の子孫の方が住んでいて「期待しているよ」なんて言われるんです(笑)。そんな時に、記念館に立っている本人の等身大の銅像を眺めていたら、何だか親近感があって、よくよく思い返してみると、自分の祖父とどこか似ていると気づいたんです。そう思えてからはすごく楽になれました。一番大きな共通点を見つけることができて、そこを拠り所にしました。
撮影に入ってからは、ずっと後ろから二宮金次郎ご本人に見られているような感覚でした。最終的には自分の演じる二宮金次郎を出し切ろうという気持ちだけで、プレッシャーよりも楽な気持ちで臨めました。

Q 撮影のロケ地がとても素晴らしいです。

A映画『二宮金次郎』合田雅吏映画の舞台となっている桜町領は、実際に二宮金次郎が仕法をしていた栃木県で撮影しています。二宮金次郎の映画なら、ということで特別に協力していただけたそうで、映画の中でも印象的な棚田は1年間自由に使っていい、と貸していただけたそうです。だから、田植えから稲刈りまで、実際に当地で撮影できているんです。金次郎が桜町領で住んでいた家も重要文化財の家屋をこの映画ならと使わせていただきました。あの家屋の庭は、本当は今風のきれいな庭でしたが、美術の方が植木なども全部抜いて畑を作って、しかも池や井戸まで作ったんです。初めてその変貌した庭を見た時は「ここまでしたか」と鳥肌が立ちました。
冒頭の河原のシーンも二宮金次郎の生家に近い酒匂川で撮っていますので、すべて縁の土地の人たちの協力あってのものです。そういう空気感はありますし、エキストラの方やボランティアの方も含めて、みんなが同じところを目指して2ヶ月間の撮影に取り組むことができたので、とても幸せな時間でした。

Q 共演者の方々についてお聞かせください。

A合田雅吏(映画『二宮金次郎』)合田雅吏妻なみ役の田中美里さんとはこれまでも共演したことはありましたが、夫婦役は初めてです。夫婦にはある種、お互いにいて当たり前、という感覚がありますが、その感覚を持たせていただいたので、とても演じやすかったです。雨の中、役人の豊田に踏みつけられて金次郎が泥まみれになるシーンで、なみが自分の顔に泥を塗るのは彼女のアイデアです。台本上ではト書きの説明だけでセリフのないシーンでしたが、いざ演じると彼女がその芝居をしたことで、本当に言葉は必要なくて、ナチュラルな気持ちで演じることができました。
五平役の柳沢慎吾さんはバラエティ番組でお見かけする姿そのままで、本当にムードメーカーでした。寒い時期の撮影の待ち時間は普通なら辛いですが、慎吾さんがいるととても場が和んで、みんな和気あいあいとしていました。僕は主演ということで、より演技に集中したい時にも、慎吾さんが和やかな空気を作ってくれていたので、安心して自分のことに集中することができました。
他の出演者の皆さんも役作りをすごくしてくれていたので、スタートする時点から役としてのやり取りができたのでありがたかったです。

Q 監督からはどんなことを言われていましたか。

A合田雅吏準備期間にはワークショップなどもありましたが、その時から監督から言われていたことは「芝居をしないでください」という一点だけでした。役者としてセリフを入れて演技プランを作ろうとすると、どうしてもストーリーとして重要なセリフを際立たてたいと思いがちです。それが出てしまうと監督からは「芝居しないで」と言われてしまいました。セリフは頭の中に完全に入っていましたので、流れの中で自然なやり取りになることを、とくに僕には求められていました。結果、自分でどういう芝居をしたかを覚えていない場面が多いです。完成した映画を観て、自分でも「こうなっていたのか」と、ある意味、とても客観的に観ることができました。

Q 成田山に籠もるシーンの撮影は大変だったそうですね。

A合田雅吏準備期間を長くいただけたため、二宮金次郎は大柄だったのでその外見を似せることも考えて、監督とも相談をして体重を増やして撮影に臨もうとしました。7〜8キロ増やすつもりでトレーニングと食事で計画的に増やしていきました。それが、いざ撮影スケジュールが発表されると、最初の2日間で断食シーンを撮ります、と。「幽霊のようにやせ細って来てください」と監督に言われてしまいました。体重を一旦落とすしかなかったのですが、時間を掛けて落とすと、また増やすのが大変だと思ったので、野菜とプロテインだけに切り替えて10日ほどで一気に7キロくらい落として断食シーンの撮影に入りました。その後、3日ほど撮影が空いていて「その間によろしくね」と監督に言われて(笑)、また増やしましたが、短期間でこんなに増減させたのは初めてです。

Q 成田山で金次郎が開眼するシーンは、実際演じていかがだったのでしょう。

A合田雅吏僕自身が減量のためあまり食事をしていない状態で撮影に入っていたので、断食をしている金次郎と同じような状態でした。実際に成田山のお坊さんが修業していたお堂を使用させていただいています。狭い場所で護摩も焚いていただいてお経を何度も唱える撮影しているので、段々とトランス状態のようになりました。「演じる」とか「なりきる」というレベルではなく本当にそういうものを体感したような気がしています。撮影があのシーンからということで監督も気にされていましたが、あの撮影を経験して、その後の農村でのエモーショナルなシーンの撮影だったので、逆に良かったのかなとも思います。

Q 合田雅吏さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A合田雅吏二宮金次郎という名前を知らない方はあまりいないと思いますが、実際に何をしたのかはそれほど知られていないと思います。金次郎が説いた教えや施策はすごいことのようで、実はすごく当たり前のことです。いま現在進行形でやらなければならない理想的なことだと思います。だからこそ、没後150年以上経っても、名前が残っているのだと思います。この映画に出演するにあたって、100年残る映画にしよう、ということを目標にしました。次の世紀までつなげなければならないし、そのきっかけになるような映画にしなければと思いました。そのきっかけのために、この映画は道徳映画でも教育映画でもなくエンタテインメントとして作られています。金次郎の教えの細かなところよりも、一人の破天荒な、革命家のような人物のお話なので、この映画を観て興味を持ってもらえたら、実際にどんなすごいことをしたのか調べていただければと思います。この映画を観て面白いなと思っていただけたらぜひ周りの人、一人か二人でもいいので勧めていただけたらと思います。そのように輪が広がるのも金次郎の教えだと思います。

Q合田雅吏さんからOKWAVEユーザーに質問!

合田雅吏二宮金次郎にキャッチフレーズもしくはニックネームをつけるとしたら、どんなものが良いでしょうか。

回答する


■Information

『二宮金次郎』

映画『二宮金次郎』2019年6月1日(土)東京都写真美術館ホールにて公開ほか全国順次

幼い頃、両親が早死にし、兄弟とも離れ離れになった二宮金次郎。
青年になった金次郎は、小田原藩主に桜町領(現・栃木県真岡市)の復興を任される。金次郎は、「この土地から徳を掘り起こす」と、“仕法”と呼ぶ独自のやり方で村を復興させようとするが、金次郎が思いついた新しいやり方の数々は、一部の百姓達には理解されるが、保守的な百姓達の反発に遭う。そんな中、小田原藩から新たに派遣された侍・豊田正作は、百姓上がりの金次郎に反発を覚え、次々と邪魔をし始める。はたして、金次郎は、桜町領を復興に導けるのか?

出演:合田雅吏 田中美里 成田浬
榎木孝明(特別出演)柳沢慎吾 田中泯
監督:五十嵐匠

公式サイト:ninomiyakinjirou.com

(c)映画「二宮金次郎」製作委員会


■Profile

合田雅吏

合田雅吏(映画『二宮金次郎』)1970年1月9日生まれ、神奈川県出身。O型。
1995年「超力戦隊オーレンジャー」で俳優デビュー。「水戸黄門」の第32部から41部まで格さんこと渥美格之進(格さん)役で出演。映画、TVドラマ、舞台など幅広く活躍中。

http://official.stardust.co.jp/goda/

 

ヘアメイク&スタイリスト:山崎惠子
衣装:MONSIEUR NICOLE