Vol.857 映画監督 穐山茉由(映画『月極オトコトモダチ』)

映画監督 穐山茉由(映画『月極オトコトモダチ』)

OKWAVE Stars Vol.857は映画『月極オトコトモダチ』(2019年6月8日公開)穐山茉由監督へのインタビューを送りします。

Q 「MOOSIC LAB 2018」で4冠を獲得されて、このたび劇場公開される本作ですが、製作の経緯をお聞かせください。

A映画『月極オトコトモダチ』穐山茉由この映画は、音楽と映画をかけ合わせた映画制作企画の「MOOSIC LAB 2018」での公開に向けて作りました。 “レンタル友達”と“男女の友情”は私がやりたかった企画で、元々は音楽と関係なかったのですが、「MOOSIC LAB 2018」に合わせて企画を詰めていきました。コラボアーティストでは、芦那すみれさんのことを知って、徳永えりさん演じる主人公と音楽をやっている人との三角関係のようなもの、というところから物語を膨らましていきました。
元々、映画でも音楽の使い方が印象的な作品が好きでしたので、自分で映画を撮る時も音楽にはこだわりたいと思っていて、今回それができて良かったです。

Q “レンタル友達”と“男女の友情”というテーマについてお聞かせください。

A穐山茉由この企画を出したのは2017年の年末くらいです。レンタル友達を雇って、SNS用に友達がたくさんいるように見せている人がいる、というWebのニュースを見て興味を持ちました。レンタル友達というビジネスがあることは知っていましたが、それを使って人間の欲望をこんな形で実現するのかと感じました。それで、レンタル友達という材料を使ってどう楽しく作るかを考えました。「友達がいないからレンタルする」といった暗い理由ではなく、楽しく見せるにはどうすればいいか考えて、男女の友情はあるのかを検証する、という方向に転がしてちょっとポップな形にしました。

Q 監督は長編初挑戦とのことでしたが、準備段階ではどんな苦労がありましたか。

A映画『月極オトコトモダチ』穐山茉由たくさんありましたが、個人的には脚本です。長編の脚本を書くのは初めてだったので、物語の筋そのものをどう飽きさせずに観てもらうか、ということと、男女の友情を自分で投げかけながら、自分なりの答えを示すことにだんだんと怖くなってしまいました。自分が追い込まれてしまったので、書き上げるのは大変でした。話の筋はできていましたが、重要なシーンがギリギリまで書けなくて、“書きます詐欺”のような感じで、まだ書き終わらないうちにクランクインしてしまいました。撮影の前日に役者を集めて、それぞれの役として喋ってもらいながら脚本として仕上げるような、まるでライブのような感じで作ったシーンもあります。自分のやりたいことを最後までできたので、それに対する観ていただいた方の感想が様々だったのが面白かったです。そういう意味でも物語を楽しんでいただけたのかなと思います。

Q “男女の友情”の物語ということでは監督自身の考えはどの程度投影されているのでしょう。

A穐山茉由主人公の那沙は私自身だと言われることがよくあるんです。私はそんなつもりはなく書いていたので、あまりにそう言われるので振り返ってみると、自分の実感に基づいた感情が大切だと思って脚本に落とし込んでいるからなのかなと思います。細かな設定に関しては、自分の知っていることの方が書きやすいので、実体験も入っていますが、物語のために突き放して書いている部分もありますので、半分くらいだと思います。

Q 演出についてはいかがでしたか。

A映画『月極オトコトモダチ』穐山茉由徳永えりさんも橋本淳さんも実力のある役者さんなので、彼らを信じてキャスティングしました。事前の打ち合わせの時間がほとんど取れなかったので、現場で作っていきました。撮影はほとんど時系列だったので、最初のうちは硬いかなと思いましたが、役者同士で仲良くなっていってくれて、良い形になったと思います。彼らがどんなふうにキャラクターを作ってきたのかを意識して見ていたので、そこから演出をしていきました。徳永さんで言えば、那沙がオフィスの中を歩いている時に、時々ぴよぴよとはねるような動きを入れていたのが面白かったので、それを全体に取り込んでほしいと伝えて、そこから那沙のキャラクターを固めていっていました。
また、私が徳永さんと橋本さんと最初に会ったのが本読みの時で、終わった後にみんなでお好み焼き屋さんに行きました。その時に徳永さんと橋本さんが協力してお好み焼きを焼いてくれて、その様子を動画にも撮っていたのですが、最初にそれぞれが作ってきた芝居はもっとカチッとしていたので、「お好み焼きの時みたいに自然体で」とその時に撮った動画を送ったりもしました。

Q 音楽と映画のコラボという部分で、楽曲はどのように制作が進められたのでしょう。

A穐山茉由主題歌・劇中歌の「ナニカ」という曲は入江陽さんに作っていただきました。最初に打ち合わせをして作ってきてくれた曲を聴いて、私からは「歌詞はこういうものを」と那沙の言葉や脚本を見ていただいて、往復書簡のようなやり取りをしながら出来上がっていきました。劇中でこの楽曲を作っていく過程を描いていますが、この曖昧で不思議な人間関係を扱った作品にあった、ちょっと不思議な楽曲になったかなと思います。さらに、エンドロールで使われているのは、長谷川白紙さんという別のアーティストが編曲したもので、それによってまた違う世界に飛べたんじゃないかなと思います。楽曲が作品に寄り添って作られていくのは興味深い経験でした。
芦那すみれさん演じる珠希が部屋の中で歌っているのは芦那すみれさんが即興で作った曲です。撮影の準備中に「一曲できちゃった。私、今日調子いい!」とできたての歌を使いました。

Q 終盤の音楽でつながっている2人と那沙のスタジオでのやり取りは、音楽をやっている人同士通じる部分とそうでない那沙の気持ちの違いがはっきり見える、普段あまり描かれないようなシーンだと感じました。

A穐山茉由音楽をはじめ、モノづくりをされている方に好評なシーンでした。シナリオを書く時、最後まで書けなかったのもこのシーンです。それぞれの抱えているドロッとしたものが出てくるので、観客は何か不思議なものを見せられているような、異物のようなシーンにしようと思いました。みんな追い込まれる中で出てきたものなので、撮っていて私自身、はっとさせられることもありましたし、印象深いシーンになりました。

Q 本作を通じて、新しい発見などありましたか。

A映画『月極オトコトモダチ』穐山茉由この映画が初めての長編で、撮り始めた頃はこんなに多くの方に観てもらえる機会があると思わずに作っていました。脚本を悩み抜きながら書きましたが、自分の思いを込めながら、それがなるべく伝わるような映画にしたいと思っていました。受け取ってもらえるのかという不安はありましたが、観ていただいた方がそれぞれの目線を持ってくださっていることに気づかされたので、観る人それぞれの『月極オトコトモダチ』があっていいんだと思いました。男女、世代によって感じ方も意見、感想も違うので、それもまた人間関係みたいで面白いなと思いました。

Q 監督は30代になってから映画学校に通われてこの道に入られたとのことですが、一念発起したきっかけをお聞かせください。

A穐山茉由20代は社会に出て自分に何ができるかをガムシャラに探っている時期でした。仕事もある程度慣れてきて、私はいろんなことに興味を持って飛び込むタイプなので、自分の人生のToDoリストの中からやってみたいことをいくつかやるうちに、その中にあった映画を作りたいという気持ちが強くなっていきました。ちょうどその頃には私自身、結婚を考えることもありましたが、映画美学校に入ったら、今は新しいことにチャレンジして結婚は今じゃなくてもいいかなと、吹っ切れたような気持ちになりました。

Q 穐山茉由監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A穐山茉由男女の友情はあるのか、という大きなテーマはありますが、人間関係を描いた作品です。人と人の距離感を映像で描きたいと思ったので、どんな人にも感じてもらえる作品になっていると思います。ぜひ観に来てください。

Q穐山茉由監督からOKWAVEユーザーに質問!

穐山茉由皆さんは男女の友情はあると思いますか。

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■Information

『月極オトコトモダチ』

映画『月極オトコトモダチ』2019年6月8日(土)新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺、イオンシネマ板橋ほか全国順次ロードショー!

「男女の間に友情は本当に存在する?」
アラサー女性編集者の望月那沙は、ひょんなことから、「男女関係にならないスイッチ」を持つと語るレンタル“オトコトモダチ”の柳瀬草太に出会う。
一方、那沙のリアル“オンナトモダチ”である珠希は音楽を通じて柳瀬との距離を縮めていき……。
仲良くなっても、「契約関係」の壁はなかなか越えられない。
恋愛と友情、夢と現実の間で悩む男女が織りなす、不思議な関係の行きつく先は……?

キャスト:徳永えり、橋本淳、芦那すみれ、野崎智子
監督・脚本:穐山茉由
劇中歌・主題歌:BOMI
音楽:入江陽
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS

https://tsukigimefriend.com/

(C)2019『月極オトコトモダチ』製作委員会


■Profile

穐山茉由

映画監督 穐山茉由(映画『月極オトコトモダチ』)1982年生まれ、東京都出身。
ファッション業界で会社員として働きながら、30代はやりたいことをやろうと思いたち、映画美学校で映画制作を学ぶ。監督作『ギャルソンヌ -2つの性を持つ女-』が第11回 田辺・弁慶映画祭2017で入選。本作が長編デビュー作品となる。