Vol.874 俳優 榎木孝明(映画『みとりし』について)

榎木孝明(映画『みとりし』)

OKWAVE Stars Vol.874は映画『みとりし』(2019年9月13日公開)主演の榎木孝明さんへのインタビューをお送りします。

Q 映画化の経緯についてお聞かせください。

A榎木孝明(映画『みとりし』)榎木孝明現在の一般社団法人「日本看取り士会」会長の柴田久美子さんと、10年以上前に島根県の日本海沿いの隠岐諸島・知夫里島でお会いしたのがきっかけです。他の用事でその島に行った際にそのような活動をされている方がいると聞いて会いに行きました。島民は600人くらいで、「身寄りのない方が多く、希望者を引き取って看取っているんです」という話を聞きました。「看取り士を将来的に全国的な制度にしたいので、榎木さん主演で映画にしたいです」と言われ、「時期が来たらぜひ」とお答えしました。そして準備が進む中でプロデューサーを紹介し映画化の話も進み、昨年、ついに撮影することができました。

Q 映画で伝えるということではどの様な部分を大切にしましたか。

A榎木孝明現場で看取り士の方が実際に体験したことを基に、映画の中でどう伝えられるかを考えながら物語にしていきました。ひとつは看取り士という言葉に馴染みがないので、そのことを伝えながら、共感しやすい、感動できるストーリーに仕立てていきました。

Q 主役の柴久生の役柄はどのように構築していきましたか。

A榎木孝明世代的には今の私と同じくらいに設定していただきました。日本国内で自殺者が年間2万人近くいる中で、私の演じた役も一度は自殺しようとしたのを止められて、新しい人生を送っていくことにしたのも今の世相を反映したものです。生きる気力を探せない今の時代性の中で、将来への明るい兆しが見えない典型的な男が変わっていくということで、このような人物になりました。

Q 岡山の高梁市を舞台にした理由はいかがでしょう。

A榎木孝明柴田さんが活動していらっしゃる岡山県下、ということで、いくつかの候補地の中から選ばれたのだと思います。本作のロケ地は、中堅の都市であって、自然も残っていて都会っぽくないところというのがイメージにあり、高梁市は雰囲気がとても良くていいなと思いました。西日本豪雨の後だったので地元の方々は苦労もされていましたが、ここで撮ることができて良かったと感じています。

Q 新人看取り士のみのり役の村上穂乃佳さんの印象は。

A榎木孝明23歳の新人で現代女性の典型的な代表として、村上さんはぴったりだと思いました。みのりはお母さんとの関係をずっと引きずっていますが、そこをうまく演じられると思いました。

Q 看取りのシーンの撮影についてはいかがだったでしょう。

A榎木孝明常に看取り士の方々が協力体制を敷いてくれたので、撮影する側も看取り士のことを勉強しながら、いい雰囲気で進んでいきました。笑いもいっぱいある現場でした。
撮影に一度入ってしまうとみんな忙しくなるので、休憩時間に助監督が「俺もう死にそうだよ」と一息ついたら、看取り士の方々が「いつでも私たちがいますからね」と優しく合いの手を入れて皆爆笑でした。そんなところにも非常に元気づけられました。

Q 若手医師も登場しますが、看取り士との連携の描き方についてお聞かせください。

A榎木孝明看取り士は医療行為ができませんので、医師と役割分担をしなければならないところは注意して描きました。看取っている相手が喉に痰が詰まったときに、吸引は医療行為に当たるため看取り士にはできません。そういう決まり事が多いので、今後もっと緩やかになればいいのになと、看取り士の現場を見ていて感じました。

Q 看取り士を取り巻く時に難しい環境についても描かれました。

A映画『みとりし』榎木孝明家族の最期を看取るにあたって、もしも家族内の水面下の争いがあると、これは看取り士に限らず医師や介護職の方も気を使う部分です。不正がないように人間のモラルが問われるところですので、看取り士になる際にきっちり研修を受けます。看取り士はいまは女性が多く、暴力にさらされてしまいそうな時もあります。その様なところも今後変わっていけばいいと思います。

Q 本作を通じての新しい発見についてお聞かせください。

A榎木孝明昔から人の生と死というものへの関心がありました。今回の映画の中の話に対して、死の持つ暗い、悲しい側面だけを見るのではなく、明るく転換できればとも思っていました。ですので、この映画はいいきっかけになるだろうなと。日本看取り士会の趣旨自体が、見送る人、送られる人双方を幸せにしたいというところから始まっています。そのためにも生死を正面から考える機会を作っていければと思っています。

Q 榎木孝明さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A榎木孝明この映画で取り上げているのは、看取り士という、馴染みはないかもしれませんが、これから需要が増えていく仕事です。先日テレビ番組で若い納棺師が紹介されていました。看取り士も同じく、若い人であってもなれる職業です。死は誰しもが必ず通る道ですから、看取りについても、前向きな発想で取り入れてほしいです。

Q榎木孝明さんからOKWAVEユーザーに質問!

榎木孝明昨今は孤独死も話題になっていますが、あなただったら誰に看取られたいですか。

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■Information

『みとりし』

映画『みとりし』2019年9月13日(金)より有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー

交通事故で娘を亡くした定年間際のビジネスマン・柴 久生。自殺を図ろうとした彼の耳に聞こえた「生きろ」の声。それは友人・川島の最期の時の声だと彼の“看取り士”だったという女性から聞かされる。“看取り士”とは、最期に残された時間を旅立つ人、見送る人に寄り添い、支える人のことだった。5年後、柴は岡山・備中高梁でセカンドライフを“看取り士”として、9歳の時に母を亡くした23歳の新人・高村みのりたちと最期の時を迎える人々を温かく支えているのだった。

出演:榎木孝明、村上穂乃佳
高崎翔太、斉藤暁、つみきみほ、宇梶剛士、櫻井淳子ほか
原案:『私は、看取り士。』柴田久美子著(佼成出版社刊)
監督・脚本:白羽弥仁
配給・宣伝:アイエス・フィールド

http://is-field.com/mitori-movie/

(c) 2019「みとりし」製作委員会


■Profile

榎木孝明

榎木孝明(映画『みとりし』)1956年1月5日生まれ、鹿児島県出身。
1978年、劇団四季に入団し、「オンディーヌ」(81)で初主演。退団後、連続テレビ小説「ロマンス」の主演でドラマデビューを果たす。95年にスタートした「浅見光彦シリーズ」は2002年まで主演を務める大ヒットシリーズとなる。主な出演映画に、『天と地と』(90)、『天河伝説殺人事件』(91)、『半次郎』(10)、『マンゴーと赤い車椅子』(14)、『きばいやんせ!私』(18)など。
旅を好み、アジア各地を中心に世界の風景を描き続ける。全国各地で個展を開催し続けている。

http://www.officetaka.co.jp/

 

取材場所:アートスペースCuore