Vol.880 映画監督 セバスチャン・マルニエ(映画『スクールズ・アウト』について)

セバスチャン・マルニエ(映画『スクールズ・アウト』)

OKWAVE Stars Vol.880はシッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2019にて上映される『スクールズ・アウト』のセバスチャン・マルニエ監督へのインタビューをお送りします。

Q 本作はホラー要素を含んだ学園ミステリー作品ですが、本作の映画化の経緯をお聞かせください。

A映画『スクールズ・アウト』セバスチャン・マルニエ本作はフランスで2002年に刊行されたクリストフ・デュフォッセ(Christophe Dufossé)という作家の小説が原作です。謎めいた子どもたちが登場する学園ミステリーで興味深く読みました。初めて読んでから映画化するまで15年かかっています。原作にある「思春期の子どもたちが恐れていること」は原作にも映画にも共通することですが、原作を初めて手にとった当時から世界は随分と変わっています。原作者には口出しされたくなかったので(笑)、完成するまで映画は見せませんでした。原作者はすごく驚いていたけれど、「いい意味で裏切られた」というメールをもらったので、自分としては小説の映画化で一番いい賛辞だと受け止めています。

Q 映画にする上で大事にしたことは何でしょう。

Aセバスチャン・マルニエ将来に対する悲観的な見方という要素を入れました。若い俳優たちがいまの世界をどう見ているのか、10年後の未来をどう見ているのかを聞いて、それを取り入れました。今の子どもたちは私たちの世代よりも環境問題への意識が高いです。環境を守るために行動も起こしています。このまま何もしなければ世界に恐ろしいことが起きるのではないかということを、これは私もですが、強く感じています。世界が破滅に向かってしまうのではないかという危惧を感じているんです。ですので、ただのサスペンス映画にせず、そのようなメッセージを映画の中に込めました。

Q ロラン・ラフィット演じる教師の目線で描かれる本作をどう演出していきましたか。

Aセバスチャン・マルニエ彼の目を通して観客にもいろいろ感じてほしくて、シナリオ段階からそのようにしていきました。主人公のピエールが体験すること、彼が目にすることを観客も知り、ピエールが知り得ないことは観客もわからない、常に観客がピエール自身であるかのように感じられることを目指しました。実は初期の編集段階では、ピエールがいろいろなものを目撃しているカットも入れていました。しかし、それをわざわざ入れなくても観客に伝わると思って外しました。観客と一体化しているという前提で、ピエールがいろいろ調べているけれど、真相はぼかされたまま物語は進んでいきます。そのうちに、ピエールは妄想的な、悪夢と現実の区別がつかなくなるような状況に追い込まれていきます。
それを、ロラン・ラフィットの撮影箇所について5つの段階に分ける工夫をして演出しました。元気な段階から疲労困憊しきっている段階です。撮影は順撮りではないので、いまのピエールの状態を伝えることで、メイクもそのようなものを施せるので、自分もロラン・ラフィットもいい形で取り組めました。

Q ミステリアスな生徒役の子どもたちへの演出についてお聞かせください。

Aセバスチャン・マルニエコーチを付けて撮影前に3ヶ月間、演技のレッスンをしました。身体の使い方や姿勢、話し方を教えたり、ゾンビ映画を使って学ばせたり。様々な指導をしましたが、最後に面する大きな危機に、子どもたちが感情を顕わにするシーンを有効に見せるため、それまでは感情を隠して芝居をするように、と彼らには伝えました。

Q 本作を通じて、監督自身が新しく発見したことなどはありましたか。

A映画『スクールズ・アウト』セバスチャン・マルニエ撮影中は映画そのものに集中するので、撮影前後に多くの発見がありました。とりわけ、撮影前には子どもたちと現代社会の抱える問題を話し合ったことで、ちゃんと自分たちと彼らがつながっているんだということを考えさせられる機会になりました。撮影後には、ヴェネツィア国際映画祭から始まって、世界各地にこの映画を携えて紹介して回りました。とくに若い世代には自分を投影してくれる観客が多くて、みんな考えていることは同じなんだと思いました。撮影は2017年、フランスでの公開は2019年1月ですが、時間が経てば経つほど、このストーリーは重みを持ち始めていると感じました。私たちの世代があまり考えてこなかった問題に若い世代はしっかり取り組んでいるんだという印象を受けました。

Q セバスチャン・マルニエ監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aセバスチャン・マルニエこの映画は私の長編2作目です。映画を作っている間はフランスから11,000キロ離れた日本の皆さんが観てくれることを想像もしていませんでした。本作のとくに最後のシーンは日本の皆さんにも大きく関係していると思います。皆さんがどう反応するのかとても楽しみです。

Qセバスチャン・マルニエ監督からOKWAVEユーザーに質問!

セバスチャン・マルニエ主に若い人向けの質問になるかと思います。20年後に地球はどうなると思いますか。いろいろな問題を改善するためにあなただったら何をしますか。

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■Information

『スクールズ・アウト』

映画『スクールズ・アウト』シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2019
【東京】ヒューマントラストシネマ渋谷 10月11日(金)~10月31日(木)
【名古屋】シネマスコーレ 10月26日(土)~11月15日(金)
【大阪】シネ・リーブル梅田 11月8日(金)~11月21日(木)

上映時間は公式サイトを参照:https://www.shochiku.co.jp/sitgesfanta/

名門中等学校で、先生が生徒たちの目の前で教室の窓から身投げする異様な事件が発生した。新たに教師として赴任したピエールは、6人の生徒たちが事態に奇妙なほど無関心なことに気付く。彼らの冷淡で気まぐれな振る舞いに翻弄され、やがて6人がなにか危険なことを企んでいると確信するようになり……。

監督:セバスチャン・マルニエ
出演:ロラン・ラフィット、エマニュエル・ベルコ、グランジ
提供:キングレコード
配給・宣伝:ブラウニー
協力:松竹

© Avenue B Productions – 2L Productions

シッチェス映画祭とは

シッチェス映画祭は、1968年に創設されたスペイン・バルセロナ近郊の海辺のリゾート地シッチェスで毎年10月に開催される映画祭。国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の国際映画祭であり、ファンタジー系作品(SF映画・ホラー映画・スリラー映画・サスペンス映画など)を中心に扱うスペシャライズド映画祭として、世界でも権威のある国際映画祭のひとつである。ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭、ポルト国際映画祭(ファンタスポルト)と並ぶ世界三大ファンタスティック映画祭の代表格であり、ホラーやファンタジージャンル映画の最先端作品を選定する特徴がある。歴代の最優秀作品には『狼の血族』『死霊のしたたり』、日本映画の『リング』などがある。最優秀賞受賞者もヴィンセント・プライスからデヴィッド・クローネンバーグ、審査員には『食人族』のルッジェロ・デオダートがいたりと、本映画祭の歴史がホラー映画の歴史を表していると言っても過言ではない。
近年では中島哲也監督の『渇き。』が最優秀男優賞、新海誠監督の「君の名は。」がアニメーション部門にて、最優秀長編作品賞を受賞するなど、日本ともゆかりの深い。

『シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション』は、シッチェス映画祭で上映された作品の中から厳選した作品を日本で上映する、シッチェス映画祭公認の映画祭。これまで2012年、13年、14年、15年まで開催され、2018年に日本のホラーファンから復活を求める声が多数集まり、3年振りに完全復活!そして、令和元年の今年も『シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2019』の開催が決定!


■Profile

セバスチャン・マルニエ

セバスチャン・マルニエ(映画『スクールズ・アウト』)フランスにおける米アカデミー賞にあたるセザール賞にて長編デビュー作のサイコスリラー『欲しがる女』がノミネートされ絶賛を浴びた。小説家としての顔ももつフランス映画界注目の監督。