OKWAVE Stars Vol.887は映画『積むさおり』(2019年11月2日公開)主演の黒沢あすかさんへのインタビューをお送りします。
Q 身につまされる様な題材ですが、どう感じましたか。
A黒沢あすか音に視点をおいた描き方が面白いと思いました。梅沢ならではの切り口だと感じました。実は梅沢はとても音に敏感で夜は耳栓をして眠りますし熟睡するとことは難しいようです。劇中ではさおりが自分達の関係を妥協ではなく、離婚という形でもなく、どうしたら上手くやっていけるのか模索している所に焦点をあてています。私達もこの映画のさおりと慶介のようにバツイチ同士。もう失敗しないつもりで結婚しました。実生活では私が慶介で、梅沢がさおりなんだと思います(笑)。
Q ご自分はさおりのように“音”に反応することはありますか。
A黒沢あすか食べる時の音が気になってしまいます。子どもの頃から食べ方については母から厳しく教育を受けました。箸の上げ下げから姿勢まで。自分の家族のことで言えば、いま長男は20歳ですが、スマホから大音量で音楽を流してリビングで過ごすのをどうにかしてほしいですし、三男はゲームの音量と動画サイトの口真似を大声でやるので私が体調が悪い時などはツラいです(笑)。次男は物音はたてませんが、あまりにもマイペース過ぎて困りもので…そんな息子達に悩まされてます(笑)。
Q 木村圭作さんとの共演についてはいかがでしたか。
A黒沢あすか俳優としてのキャリアも長く、子育てについてもひと段落されている人生の大先輩でもあります。とても穏やかで優しくて、スタッフへの気遣いも忘れない方です。夫婦役を演じていて心地良かったです。懐がどこまでも深いんですね。
Q 役柄の慶介の立てる音はご自分でも気になりますか。
A黒沢あすか気になります!(笑)私だったらどうするだろうと考えちゃいますね。少なくとも寝室は別にします。あとは…慶介の歯ブラシで流しの掃除かなんかしちゃいそうです(笑)。
Q さおりが覗き込む“穴”の特殊造形についてお聞かせください。
A黒沢あすか穴を覗き込む私を下から撮っているシーンは2メートル以上の円錐状のタワーを立て、その中はブルーシートを貼り、かき集めてきた沢山の落ち葉を貼り付けて深い穴に仕立てました。同じ穴を覗き込むシーンでもバストサイズショットになった時には、落ちている枯れ枝を何本も集め、かなり大きめのクリスマスリースのような物を作りまた覗き込むようなショットを撮影しました。劇的なシーンにする為には“引き画”と“寄り画”に必要な美術をいくつか用意し、たった数秒数分の世界を表現するのにたくさんの労力と時間を費やしました。またカメラは必ずしも自分の目の前にあるわけではないので、カメラアングルによっては頭や体の角度、顔に掛かる髪の毛の具合、物の蹴り方に至るまで細心の注意を払い、常に一発勝負で取り組む必要がありました。穴覗きカットは手こずりましたね。梅沢の本業が活かされていますので、よく目を凝らしていただくと様々な造型物、慶介にまつわる物が映し出されていますので探して見てください。
Q 黒沢さん自身、さおりのような普通の主婦役は珍しいですね。
A黒沢あすかそうですね。「私も普通の役を演じたい」と梅沢に話した事がきっかけで出来上がった作品と言ってもいいかもしれません。梅沢は映画監督になりたくてこの世界を目指し、その途中で特殊メイクと出会い突き進んできました。50歳を迎えるにあたり、映画監督の夢も諦めきれず特殊メイクアップアーティストとの二足の草鞋で頑張る決心をしたんです。そして何作かを経て『積むさおり』が完成。追加撮影を重ね、編集にも時間をかけました。ホラー映画という枠組みではなく、女性たちにぜひ、観ていただいて共感してもらえたらと梅沢は言っています。無類のホラー映画好きの梅沢ですが『積むさおり』に関しては梅沢の中の女性性を垣間見た気がしました。細やかで包み込む優しさと静かな炎。さおりの内側から流れ出る澱のようなものに視点を置くところに梅沢の直向きさを感じました。
Q さおりが5周年のお祝いをもらった時の表情と、その後の表情の違いが印象的です。
A黒沢あすか慶介の優しさは分かるし、精一杯考えてくれたことも分かる。だけどそのセンスをどう受け止めたらいいのか悩みました。エキセントリックな役柄が多かった私には“普通・日常”を演じる事の難しさを痛感しました。お祝いカードを手渡された瞬間、素の自分に戻ってしまったんです。ホチキスでパチパチされた5周年の文字を見て。そこから演じてるのか何なのか、頭の中はフリーズしてしまいました。でもこれが、さおりが私に出してくれた答えなんじゃないかって解釈して乗り切りました。映画が完成し自分でチェックした時、一瞬でも素に戻ってしまうことはいけないことと今までは思っていたのですが、映し出された表情がとても良く複雑な気持ちになりました(笑)。
Q ご夫婦で新しく取り組んでいることはありますか。
A黒沢あすか数年前にゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映したことのある短編を長編として作ろうかと話し合っています。私も梅沢もいろいろ映画を観ながら勉強を重ね、独自性のある作品にすべく模索しているところです。
Q 黒沢あすかさんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A黒沢あすか好きな人と人生を再スタートさせようとしたところで、何かが生じた時に、この人とはうまくいかないと判断するのではなく、お互いが譲れる懐の深さを見せられれば、自分たちを修復できるんじゃないかと、それを模索してもらえたらなと思います。さおりはどのようにそうしたのかを観ていただけたらと思います。
Q黒沢あすかさんからOKWAVEユーザーに質問!
黒沢あすかあなたのパートナーとのことについて、一緒にいてこれだけは失敗できなかったり見せられないことは何でしょう。また、こんなにやってあげているのにと思ったことと、逆にそう言われてしまったことはありますか。もうひとつ、パートナーとの会話で、ココは許せないよね、譲れないよねと意見が一致するタイミングは多いですか?少ないですか?
■Information
『積むさおり』
2019年11月2日(土)新宿K’s cinemaほか全国順次公開
間も無く結婚5周年を迎えるバツイチ同士の夫婦、さおりと慶介。さおりは、自宅の一室を仕事部屋にし、イラストレーターとして働きながら、夫を支えていた。
そんなある日、さおりがいつものように犬の散歩に出かけると、積み枝の前に見たことのない穴を発見する。風が起こり、音が吸い込まれるような不可思議な体験をするさおり。
それ以来耳鳴りが起こり、さらには夫の立てる些細な音にも敏感になってしまうさおり。夫や仕事に不満を抱えることなく暮らしていた日々が一変、気づかぬうちに積み重なっていた鬱屈が頭をもたげ始める。
軋み出す夫婦関係を守るために、さおりは何に向き合うのか。
出演:黒沢あすか 木村圭作
監督:梅沢壮一
(C)「積むさおり」製作委員会
■Profile
黒沢あすか
1971年12月22日生まれ、神奈川県出身。
10歳から児童劇団に所属し、1990年『ほしをつぐもの』で映画デビュー。柳町光男監督『愛について、東京』や、ドラマ「あすなろ白書」などに出演後、2002年の塚本晋也監督『六月の蛇』では、オポルト映画祭、東京スポーツ映画大賞などで主演女優賞を受賞。その後2010年の園子温監督『冷たい熱帯魚』では、殺人鬼の妻を演じた村田愛子役が評価され、ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。2017年のマーティン・スコセッシ監督『沈黙〜サイレンス』では主演ロドリコの妻を演じ、高く評価された。現在三児の母。
瀬々敬久監督『楽園』が絶賛公開中。
*写真のトロフィーは『積むさおり』にてHorrible Imaginings Film Festival短編部門の主演女優賞を受賞した記念のトロフィー。
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