Vol.900 ハビエル・フェセル、アテネア・マタ(『だれもが愛しいチャンピオン』について)

ハビエル・フェセル、アテネア・マタ(映画『だれもが愛しいチャンピオン』)

OKWAVE Stars Vol.900は映画『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年12月27日公開)ハビエル・フェセル監督と出演者のアテネア・マタさんへのインタビューをお送りします。

Q この企画の第一印象についてお聞かせください。

A『だれもが愛しいチャンピオン』ハビエル・フェセル最初に脚本が送られてきて読んだんです。脚本を読んだだけでも、主人公のマルコとアミーゴスの面々の人柄がすごく面白くて、彼らが自然に笑わせたり泣かせたりできる能力に驚かされました。それですぐ監督を引き受けようと思いました。

アテネア・マタ私が演じたソニアはマルコの妻ですが、積極的でアクティブな女性で、アミーゴスのために遠征のためのバスを運転したり、時にはとんでもないことをしたり、いろいろなアクションを起こすところがとてもいいなと思いました。

Q 知的障がい者のバスケットボールチーム・アミーゴスのメンバーには実際に知的障がいを持つ方々をオーディションでキャスティングされました。その狙いをお聞かせください。

Aハビエル・フェセルキャスティングのためのオーディションをすることで、知的障がいを持つ方々の世界というものを知ることができました。10人が決まった後で、そのひとりひとりの個性や性格に合わせて脚本を書き直したんです。それは物語に彼らを近づけるのではなく、彼らに物語を近づけようと思ったからです。より現実的な形で映画にできるようにしました。

Q 演技経験の少ないアミーゴス役の10人をどう演出していきましたか。

Aハビエル・フェセルもちろん映画の現場には努力や忍耐力も必要です。ですが、私は監督としてみんなが居心地のいい環境にして、みんなが自分自身を出せるような環境を目指しました。彼らのまなざしや表情については私の演出ではなく、彼ら自身のそのままの表現で出してもらいました。

アテネア・マタカメラが回っていない時はアミーゴスのみんなとは抱き合ったりキスしたりと肉体的な接触が多いんです(笑)。笑いが絶えない現場でした。私は普段は演劇の演技指導もしていますが、今回の現場では準備中の時間には演技のゲームをしたり歌ったり、みんなで楽しいことをして過ごしていました。

Q アミーゴスが遠征するバスの中の様子はとくに楽しそうです。

Aアテネア・マタカメラが回っていない時はもっと大騒ぎです。移動中のシーンはあれでまだみんな真面目にしているんです。

Q コーチ役の主人公マルコ役のハビエル・グディエレスについてお聞かせください。

A『だれもが愛しいチャンピオン』ハビエル・フェセル本当に素晴らしい俳優です。彼は常にユーモアと温かさを備えています。この映画は健常者と障がい者という2つの世界のぶつかり合いという側面もあります。ですが、ハビエル・グティエレスは俳優としての経験が豊富で寛容だったので、アミーゴス側に合わせてくれました。自分のためではなく、アミーゴスのみんなのために演技をしてくれたのでありがたかったです。

アテネア・マタ私はちょっと意見が違っていて、ハビエルはとても達者な俳優ですが、私との芝居では一人で突き詰めている姿を何度も見ましたよ。

Q バスケットボールの試合のシーンはどのように撮影を進めたのでしょう。

Aハビエル・フェセル物語を進めると同時に試合も進めなければなりません。そこで、本物の試合のようにみんなにはプレーしてもらって、映画として必要なカットを所々に足すというやり方にしました。アミーゴスのみんなは競うという考えではなかったので、撮影のために試合を中断させられても機嫌を損ねることなく協力してくれました。だから、球技としてのスピード感のようなものをどう出すか、といったテクニカルな表現に集中することができました。
決勝戦の撮影には3日かかりました。試合はもちろん、声援を送る観客たちやベンチに居るメンバーの動きなど、いろいろな要素を撮影していったからです。

Q マルコは勝利を目指してプロチームで問題を起こしてしまいましたが、この映画を通じて勝敗やその先にあるものをどう描こうと思いましたか。

Aハビエル・フェセル知的障がいの方たちは頭で考えるのではなく、心で感じて動くというところが、いわゆる健常者との違いで、それによって“予測不可能”と言われがちです。私はこの映画を構造的には非常に古典的な視点で作りました。コーチのマルコの視点に立って観てほしいと思って、彼の気持ちに共感できるように演出しました。古典的な手法ですので、ある程度は先が読める展開でもあります。だから最後にそれを覆す展開にしようと思いました。きっと観客の皆さんはマルコと同じように感じるだろうなと思います。そしてマルコと同じような気づきが得られると思います。マルコはアミーゴスとの出会いによって変化していきますが、同時に観客の皆さんもマルコのように感じて変わっていってほしいと願っています。

アテネア・マタこの映画を携えてイタリアに行った時に、知的障がい者のバスケットのチームと出会って、アミーゴスのみんなは「彼らに勝ちたい」と言っていました。だから何でも勝敗に関心がないわけでもないということは付け加えたいです。

Q 本作を通じて新しい発見などはありましたか。

A『だれもが愛しいチャンピオン』ハビエル・フェセル私はこの映画を撮る前は、「私たちはみんな同じ」だと思っていました。それがこの映画を撮り終えた頃には、「素晴らしいくらいにみんな違う」という考えに改まりました。

アテネア・マタ私は案外楽観的ではない発見でした。撮影中はお互いのことを敬愛していたし、心が通じ合っていたと思っていました。それがこの映画が大ヒットしたら、お互いのことをライバル視し始めたんです。それは「認められた」ことの結果だとは思うんです。だけど、撮影していた時の純粋さがずっと続くものではないんだなあと少し寂しくなってしまいました。もしかしたら彼ら自身ではなくてその周りにいる人たちの影響かもしれません。アミーゴスの中でもとくに評価された人もいれば、次の仕事につながっている人とそうではない人がいるのも事実です。私自身、18歳の時から役者の仕事をしているので、若くして野心を持っている人やいい役を得た人のことを妬む人も見てきました。だから私は監督と違って、みんなも私たちと同じなんだと気づきました(笑)。

Q ハビエル・フェセル監督、アテネア・マタさんからOKWAVEユーザーに質問!

アテネア・マタ日本の企業には「職場で女性はメガネをかけてはいけない」というルールがあると聞きました。それについて日本の皆さんは実際のところどんな意見なのでしょうか。

ハビエル・フェセルぜひ日本の皆さんに違った視点で作ったこの映画を観ていただきたいです。微笑みがいつまでも続く映画なのでぜひ劇場でご覧ください。
それで日本の皆さんに質問ですが、パンの間に生魚を挟んで食べたことはありますか?深くは考えないでくださいね(笑)

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■Information

『だれもが愛しいチャンピオン』

『だれもが愛しいチャンピオン』2019年12月27日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

プロ・バスケットボールのコーチ、マルコは“負ける”ことが大嫌いなアラフォー男。ところが短気な性格が災いして問題を起こし、チームを解雇されてしまう。その上、飲酒運転事故を起こし、判事から社会奉仕活動を命じられたマルコは、知的障がい者たちのバスケットボール・チーム“アミーゴス”を指導するはめに。アミーゴスの自由過ぎる言動にはじめは困惑するマルコだったが、彼らの純粋さ、情熱、豊かなユーモアに触れて一念発起、全国大会でまさかの快進撃を見せる……。

監督・共同脚本・編集:ハビエル・フェセル
脚本:ダビド・マルケス
出演:ハビエル・グティエレス、フアン・マルガージョ、アテネア・マタ
配給:シンカ

http://synca.jp/champions/

© Rey de Babia AIE, Peliculas Pendelton SA, Morena Films SL, Telefónica Audiovisual Digital SLU, RTVE


■Profile

ハビエル・フェセル

ハビエル・フェセル、アテネア・マタ(『だれもが愛しいチャンピオン』)1964年、スペイン・マドリード生まれ。
マドリード・コンプルテンセ大学でコミュニケーション学の学位を取得。著名なジャーナリストで、監督、脚本家でもあるギレルモ・フェセルを兄に持つ。1990年代半ばにいくつかの短編を監督したのち、『ミラクル・ペティント』(98)で長編デビュー。子供に恵まれない老夫婦と宇宙人の奇妙な交流を描いたこのSFコメディで、ゴヤ賞の新人監督賞にノミネートされた。フランシスコ・イバニェスの人気コミックを実写映画化した長編第2作のスパイ・コメディ『モルタデロとフィレモン』(03)では、ゴヤ賞の編集賞、美術賞など5部門を受賞している。その後はゴヤ賞で作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞など6部門に輝いた『カミーノ』(08・ラテンビート映画祭)を発表。『モルタデロとフィレモン』のシリーズ3作目にあたる長編アニメ『Mortadelo y Filemón contra Jimmy el Cachondo』(14)では、ゴヤ賞のアニメ映画賞、ガウディ賞の長編アニメ賞を受賞した。

アテネア・マタ

1976年、スペイン・マドリード生まれ。
1990年代後半にTVシリーズのレギュラーで女優のキャリアを踏み出し、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督作品『どつかれてアンダルシア(仮)』(99)で映画デビュー。それ以降、数多くの映画、TVシリーズ、短編に出演。ハビエル・フェセル監督の長編アニメ『Mortadelo y Filemón contra Jimmy el Cachondo』(14)にはボイスキャストとして参加した。