OKWAVE Stars Vol.911は映画『静かな雨』(公開中)W主演の仲野太賀さん、衛藤美彩さんへのインタビューをお送りします。
Q 台本を読まれての印象をお聞かせください。
A仲野太賀僕はすごく純粋で美しい話だと思いました。それと、すごく直球だとも思いました。記憶喪失ものはたくさんある中で、どのようにこれを中川監督が映画にしていくのかすごく楽しみでした。
衛藤美彩原作と台本を読ませていただいて、とても素敵な話だと思いました。こよみさんの内面についてはあまり描かれていなかった印象なので、キャラクターをどう深掘りしていけばいいのかと、最初は不安もありました。
Q 役作りで考えたことをお聞かせください。
A仲野太賀僕は足を引き摺って歩く役なので、そのお芝居に慣れるのに時間がかかりました。演じているとどうしても普通に歩いてしまうので、その不自由さがあることで行助のことを深く知ることができました。そのことをどう感じているのか、痛みがあるのかと、そういうところから理解していくことができました。
衛藤美彩こよみさんはどんなときにも動じない強さがある人です。事故後も、毎朝自分の状況を受け止められる飲み込みの早さからも、どっしりしている人なんだろうなと。撮影中は、ナチュラルに感情を抑えて演じることを心掛けていました。仕上がった映画を観て、改めて引き算のお芝居だったなと思います。
Q 中川龍太郎監督から言われていたことなどはありましたか。
A仲野太賀監督や撮影の塩谷大樹さんらとも以前に一緒にやっていて、監督とはディスカッションする時間がたくさんあり、とても有意義でした。今回のような物語を中川監督の新作として魅力的にするために、原作の持っている美しい部分を核として、いろんな要素を集めたら、普通の純愛ストーリーではないカオスなものになるのかなと思いました。結果的に、普段の中川監督のスタッフだけではなくて、高木正勝さんの音楽なども入って、不思議な形に収まったんじゃないかと思います。
衛藤美彩私も監督とは現場に入る前からたくさんディスカッションをしました。監督以外にも太賀くんをはじめとするみなさんがこよみを作ってくれたなって。初映画・初主演ということで最初は緊張しましたが、監督が「僕たちもこの映画を撮るのは初めてだから」と言ってくださって、みんなで一緒に作るんだと思えて気が楽になったんです。それから撮影は不安もなく一緒に作っていけました。
Q ご共演されていかがでしたか。
A仲野太賀衛藤さんは「初映画・初主演」とのことでしたが、そんなことを感じさせず、ヒロインとしてとても頼もしかったです。今までアイドルとして培ってきた瞬発力や見せる力が圧倒的にあると思いました。監督が演出したことにも柔軟に対応していたので、地に足がついたままそれができるのは簡単なことではないのですごいなと思いました。何より、現場が圧倒的に明るくなったので、それはまさにヒロイン力だと思います。
衛藤美彩太賀くんとはこの映画で初対面でしたが、同い年ということもあって話しやすくて、何より現場ですごく引っ張ってくれました。私がしっかりと役に向き合うことができたのは、太賀くんが周りに気を使いながらも集中してストイックに演じられていたからです。役者さんのすごさを改めて体感できて感動しました。また、メイクルームでその日の撮影をどうしようか気を揉んでいると、自然体で現れた太賀くんを見て、自分もそういう風にいればいいんだと思えたこともありました。
Q 記憶喪失ものとして捉えた時に、どんなお芝居を意識されましたか。
A仲野太賀行助は誠実な男ですし、自分にコンプレックスがあります。それもあって、記憶を失ってしまうこよみさんに惹かれるし、ある種、傷を持った者同士の優しさもあると思います。ただ、日々、こよみさんの記憶が更新されないことへのフラストレーションと、行助の間では愛情が深まっていっているのにその足並みが揃わないことへの歯がゆさがあります。その脆さが行助にとっての人間味になると思って、そこを慎重に演じました。
衛藤美彩こよみさんは、自分のことを語らないし謎に包まれているところもありますが、一貫しているのは芯の強さです。それは私とはリンクする部分ではないので、こよみさんはどんな人なんだろうと今でもわからないこともあるんです。なので、シーンごとにセリフの背景などは監督と相談して作っていきました。
仲野太賀行助もセリフはそんなに多くないので、こよみさんの行動に合わせて、こよみさんの存在が大きいということを意識していました。
Q 何か印象的な撮影エピソードはありましたか。
A衛藤美彩セリフは台本通りですが、結構アドリブ的な要素もあって、演じていて楽しかったです。「衛藤さんらしさをもっと出してほしい」と言っていただいたことと、太賀くんにも引っ張ってもらえたので、目に見えなくともたしかに信頼関係があって、私はナチュラルでいられました。
仲野太賀撮影期間は色濃くて、アドリブの要素もたくさんありました。こよみさんを初めて行助が家に連れてくるシーンは、ト書きに「行助、こよみに家を紹介する」とだけあって、全部アドリブでした。監督はそういう風に役者に委ねてくれるところが結構ありました。
衛藤美彩それがあったので、新鮮でいられるように撮影前にはなるべく家の中を見ないようにしていました。
Q たいやきを実際に焼いていらっしゃいましたが、いかがでしたか。
A衛藤美彩実際に1週間ほど、師匠のもとに通って、道具の手入れの仕方、あんこの練り方、焼き方と習いました。焼き方はとても難しいんです。温度をほっぺたで測るような職人ならではの動きをできるように訓練しました。撮影中は何個焼いたか分からないくらいで、スタッフの皆さんに食べていただきました。あんこは自分で作っていませんが、撮影中にも焼き方は上達したので、今でも上手に焼けると思います(笑)。
仲野太賀衛藤さんが作ってくれるのも嬉しかったですし、美味しかったです。
Q 不思議な世界観も本作の魅力かとも思います。
仲野太賀不思議な意外性がありますよね。監督は「現代におけるおとぎ話」と言っていて、リアリティだけではない寓話性もあって、そういう情緒を感じてもらえるといいなと思います。
衛藤美彩だからといって、違和感もなく観られる作品ですよね。
Q OKWAVEユーザーへのメッセージをお願いします。
A仲野太賀この映画は記憶喪失もので純愛ものですけれど、変わったことはしていないのに似た映画はない、僕らにとっても理想の形になりました。すごくストレートな美しい話ですが、スタッフ、キャストみんなの知恵とアイディアを集約して不思議なところに着地できたと思います。中川龍太郎監督の最新作として新境地にたどり着いていると思いますので、ぜひ皆さんに観ていただきたいです。
衛藤美彩私は完成してからすでに2回この映画を観たのですが、こよみさんと行助がこれからどう生きていくのだろう、きっと幸せになれるだろうなとかやっぱり切ないなとか、いろいろと考えました。話はシンプルですが、もともと個人的にも好きな高木正勝さんの音楽が、今作でも本当に美しくてきれいで。カメラマンの塩谷さんの映像はまるで目線のようで、そういった全ての要素が組み合わさってできている映画ってすごいと、改めて思いました。
仲野太賀まさに映画という総合芸術の面白さが感じられると思います。中川龍太郎という若い監督の作品であると同時に、宮下奈都さんの原作があって、塩谷さんの映像、高木さんの音楽があって、衛藤さんや僕らキャストの個性もあって、それを中川監督のカラーで集約しているので、何かが欠けてもこの形に着地はできなかったと思います。
■Information
『静かな雨』
2020年2月7日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
たとえ記憶が消えてしまっても、ふたりの世界は少しずつ重なりゆく
大学の研究室で働く、足を引き摺る行助は、“たいやき屋”を営むこよみと出会う。
だがほどなく、こよみは事故に遭い、新しい記憶を短時間しか留めておけなくなってしまう。
こよみが明日になったら忘れてしまう今日という一日、また一日を、彼女と共に生きようと決意する行助。
絶望と背中合わせの希望に彩られたふたりの日々が始まった・・・。
キャスト:仲野太賀 衛藤美彩
三浦透子 坂東龍汰 古舘寛治 川瀬陽太 村上淳 河瀨直美 萩原聖人 でんでん
監督:中川龍太郎
原作:宮下奈都『静かな雨』(文春文庫刊)
脚本:梅原英司 中川龍太郎
音楽:高木正勝
配給:キグー
https://kiguu-shizukana-ame.com/
Copyright © 2019「静かな雨」製作委員会 / 宮下奈都・文藝春秋
■Profile
仲野太賀
1993年2月7日生まれ、東京都出身。
俳優として映画やドラマなどに活躍中。
今後の公開映画には『今日から俺は!!劇場版』(福田雄一監督/2020年7月17日公開)、『生きちゃった』(石井裕也監督)など。
https://www.stardust.co.jp/section1/profile/nakanotaiga.html
衛藤美彩
1993年1月4日生まれ、大分県出身。
乃木坂46のメンバーとして活動後、女優、モデルとして活躍中。本年1月にフォトブック「Decision」(角川春樹事務所)を発売。現在、雑誌「美人百花」レギュラーモデルを務める。
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