Vol.935 女優 日南響子(映画『銃2020』について)

女優 日南響子(映画『銃2020』)

OKWAVE Stars Vol.935は映画『銃2020』(2020年7月10日公開)主演の日南響子さんへのインタビューをお送りします。

Q 中村文則さん原作の『銃』にも出演されていますが、本作『銃2020』主演の経緯についてお聞かせください。

A映画『銃2020』日南響子『銃』の舞台挨拶に出させていただいたある回に、プロデューサーの奥山和由さんが突然「次は日南が銃を拾うんで」と仰ったんです。主演ではないのに舞台挨拶にいつも出させていただいていたので気を遣った冗談なのかなと思っていたら、後日、本当にオファーが来て驚きました。ですので、最初に聞いたのは特殊な形でした。

Q 台本を読まれた印象はいかがだったでしょう。

A日南響子中村さんが台本を書かれていて、小説として読めるくらいに面白かったです。主人公の東子(トオコ)を私の当て書きに近い感じで書いてくださっていて、似ている部分が多かったんです。中村さんとは撮影前には一度しかお会いしたことがなく、自分のことを中村さんに話した覚えはないのですが、鳥を飼っていることや、収集癖のようなものがあったことを役柄に取り入れていたり。私自身小さい時から仕事をしていて人が怖いと思う時期もあって、そんな私と何となく似ている部分がいくつもあったので、まるで見られていたのかと驚きの連続でした。

Q 東子役は精神的にも追い詰められる難しい役どころだったかと思います。

A映画『銃2020』日南響子本当に難しかったです。セリフが圧倒的に少ないですし、小さな頃からのトラウマや家族との関係、とくに父親に対するコンプレックスがその後に出会う男性との関係性にも影響してきます。住んでいるのはゴミだらけの部屋ですし。自分の守り方を普通の人のように構築できなかったから、そんな風になったのだと思いました。その中で、銃という、本来なら人の命を奪ったり身を守るものと出会ってから、東子は変わっていきます。それを演じるには東子のバックグラウンドが大きいと思って、ゴミだらけの部屋に住んでいて普段どんな感情なのかと考えていきました。

Q 武正晴監督から役柄などについて言われたことはありましたか。

A日南響子監督は自由に演じさせていただいて、それに対してより良くするにはどうすればよいか言ってくださる方です。東子と銃との関係性については東子のコンプレックスの一つである男性だと思って接してほしいと言われました。相方のような存在だと思って、銃にも意思があると思って接してくださいと。男性だと思って、というだけだと難しいですが、銃が意思を持っている、というところから、人と接している時の感覚などを考えながら演じることができたので、大きなヒントをいただけました。
この銃との関係性については、冒頭の銃が落ちている建物自体、よく入っていく気になったなと思いますし、そもそも銃に導かれたという部分もあると思います。

Q 濃いキャラクター揃いでしたが、共演の方々についてはいかがでしたか。

A日南響子こんなキャラクター自体が滅多に無いですし、皆さん楽しんで演じていらっしゃったのだろうなと現場で見ていても感じました。皆さん全力で来てくださるのでとてもやりがいがありましたし、楽しくて仕方がなかったです。その分、東子にとってつらいシーンは私自身も精神的ダメージが大きかったです。友近さんが演じた母親は一言一言が突き刺さって、本当に追い詰められる気分でした。もちろん友近さんが日南響子に向けて言っている言葉ではないのですが、言葉が生きているというか、自分自身が言われているようで、撮影の後半になるにつれ私自身が東子の気持ちになってしまっていました。目に光が入っていなくて、映像を観て、私じゃないという感覚になるくらい違っていました。そんな皆さんとお芝居ができて本当に良かったです。

Q ダークな雰囲気やハードなシーンも多い本作ですが、どんな現場でしたか。

A日南響子東子の部屋のシーンは本当に大変でした。何せゴミだらけですし、出演者だけではなくスタッフもいますので、部屋の中の動きのあるシーンの本番ではスタッフさんが物を踏んで音が入ってしまったり、カメラ位置を移動する時も、ゴミをどかして移動してまた戻して、という作業があったり、音声の都合で空調が入れられないので、真夏の撮影を締め切ったまま40度くらいの中で撮影していたので、スタッフの皆さんも大変そうでした。あの重い感じはそのまま出ているかもしれません(笑)。

Q 武監督というと「全裸監督」や『嘘八百』など作品の振り幅が大きいですが、どんな様子でしたか。

A日南響子準備で時間が空くとみんなと話していたり、とても穏やかな方でした。「武さんって怖いのでしょう」と俳優仲間から言われることもあるんですが、そんなことはなかったですね。

Q 演じていて印象深かったことはありましたか。

A映画『銃2020』日南響子主要キャストの皆さんとの関わりが深いのですが、まずストーカー役の加藤雅也さんを蹴るシーンですね。加藤さんとのシーンはどれも濃いのですが、こんなに蹴って大丈夫かなと思うくら思い切りやらせていただきました。加藤さんが袋をかぶるのも印象深くて「大丈夫かな」と思ったり。それから、吹越満さんとは、吹越さんが演じた刑事の部屋のシーンで、すごく引っ張ってくださっている感覚があって、圧倒されました。

Q 東子と関わる男性陣との関係性には考えさせられる部分も多いですが、この映画で女性に伝えたいポイントは。

A日南響子東子は過去に父親とのトラウマがあって、そのことですべてを遮断してしまっています。兄妹のことも含め、東子のような家庭環境の問題はどこにでもあるでしょうし、東子の気持ちに共感できる方は男女に関わらず多いと思います。東子は恋愛もしてこられなかっただろうし、トラウマにとらわれてしまっている間は自分のことを客観視することもできないと思います。そういう方々が第三者として東子を見てどう感じるのか、私も興味があります。

Q 本作を通じてご自身の新しい発見などはありましたか。

A日南響子東子の部屋に最初に入った時は「これは人が暮らせる部屋ではない!」と思いました。映り込んではいませんが風呂場にまでゴミがあったので、「この子は絶対入ってない!」と思ったり(笑)。足を床につけるのも抵抗があるくらいでした。東子がベッドで過ごしているシーンが多い中で、撮影の準備が始まるとそのままベッドの上で待機していたのですが、段々と「意外とここで寝られるかも」と思ったのが発見ですね(笑)。

Q 銃との関係で東子は変わっていきますが、日南さんご自身で何かそういった存在はありますか。

A映画『銃2020』日南響子私にとっては鳥ですね。飼い始めて5年くらいになりますが、つらい時に支えてくれましたし、その分、自分の自由にも制限ができてしまいました。9羽いるので誰かに預けるのも難しいので、早めの帰宅が必須ですが、自分にとっては苦ではないんです。私に対して幸せもくれるし、癒しもくれる良いパートナーですけれど、行動範囲や自由度は下がっているので、紙一重なのかもしれません。私は人見知りがすごくて、友だちともなかなか会話が弾まないのですが、鳥の話になると目の色が変わると言われるくらい話せるので、もはや狂わされているのかもしれません(笑)。大切な存在ですね。

Q 日南響子さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A日南響子この映画はいろんな要素がありますし、銃を手に入れたことでの東子の変化や運命が変わっていきます。東子とは家庭環境が身近な方も多いと思いますし、この映画を観て感じた感覚をお土産にして帰っていただきたいなと思います。始まりから最後の0.01秒まで、私は呼吸するのも忘れるくらい見入ってしまったので、皆さんにも楽しんでいただきたいです。

Q日南響子さんからOKWAVEユーザーに質問!

日南響子もしも銃を拾ったら、撃つ、撃たない、どちらでしょう。

回答する


■Information

『銃2020』

映画『銃2020』2020年7月10日(金)全国ロードショー

深夜、東子は自分の後をつけてくる不穏なストーカー・富田から逃れるため、薄暗い雑居ビルに入る。
流れ続ける水の音が気になり、トイレに入ると辺りは血に染まり、洗面台の水の中に拳銃が落ちていた。拳銃を拾った東子は、電気が止められ、ゴミに溢れた部屋に一人戻る。 拳銃を確認すると、中には弾丸が四つ入っていた。
自分を毛嫌いし、死んだ弟を溺愛し続ける母・瑞穂を精神科に見舞った後、東子はこの銃が誰のものだったのかが気になり、再び雑居ビルに行く。そこで見かけた不審な男・和成の後をつけるが、逆に東子は和成に捕まってしまう。
事件が不意に起きる。隣の住人の親子がある男を殺害する。
「早く撃ちたいよね。……これでいい?」
東子は埋めるのを手伝った後、その死体に向かって拳銃を撃つ。
だが拳銃の行方を探す刑事に、東子は追い詰められることになる。「また来る」刑事は去っていくが、何かがおかしい。銃そのものに魅了された東子はさらに事件の真相に巻き込まれ、自らもその渦の中に入っていこうとする。東子の「過去」が暴発する。そして――。

日南響子 加藤雅也 友近 吹越満 佐藤浩市
リリー・フランキー(友情出演) 村上虹郎

原案:中村文則「銃」河出書房新社(河出文庫)
監督:武正晴
脚本:中村文則・武正晴
配給:KATSU-do

https://thegunmovie.official-movie.com/

© 吉本興業


■Profile

日南響子

女優 日南響子(映画『銃2020』)1994年2月6日生まれ、愛知県出身。
06年、雑誌「ニコラ」の第10回モデルオーディションでグランプリを受賞。
10年、TVドラマ「ハンマーセッション!」(TBS)で女優デビュー。以後、映画、ドラマ、CM、モデルと活躍は多岐に渡る。
映画では『七つまでは神のうち』(11/三宅隆太監督)で初主演を果たし、主題歌の「Save me」を担当。ほか、『桜姫』(13/橋本一監督)、『シマウマ』(16/橋本一監督)、山戸結希企画・プロデュース『21世紀の女の子』の短編『粘膜』(18/加藤綾佳監督)など。昨年は、Netflixオリジナル『愛なき森で叫べ』(園子温監督)、本年はドラマ「GARO-VERSUS ROAD-」に出演。
13年より別名義「珠麟-しゅりん-」として本格的に音楽活動開始、Single/Album 配信等、日々曲作り、Liveも精力的に行なっている。

https://twitter.com/kyooko_hinami
https://www.instagram.com/kyooko_hinami_official/