OKWAVE Stars Vol.954は映画『小さなバイキング ビッケ』(2020年10月2日公開)にてビッケ役の吹き替え主演を演じた伊藤沙莉さんへのインタビューをお送りします。
Q ビッケ役を演じることについてお母様がアニメ版の世代だったとのことですね。
A伊藤沙莉ビッケ役に決まったことに家族みんな喜んでくれましたが、母がリアルタイムで観ていた世代なのですごく興奮していましたし、「私のイメージを壊さないでよ」と誰よりもプレッシャーを掛けてきました(笑)。オファーをいただいた際に、以前に作られたアニメも観てみましたが、今回の『小さなバイキング ビッケ』は別物と考えていい作品になっています。当時のアニメのビッケが私に似ていると母が言っていましたが、その昔の作品を観たことで、ビッケがキャピキャピした声ではなかったことに安心しました。「ぴったりだと思うよ」と母が背中を押してくれたので、感想を聞くのが楽しみです。
Q ストーリーについてはどう感じましたか。
A伊藤沙莉ビッケたちはバイキングですし、大海原の大冒険という大きなスケールですが、誰もが経験したような身近な出来事に置き換えられる内容だと思います。ビッケは「バイキングになるのはまだ早い」と決めつけられてしまいますが、決めつけられてしまって成長できないモヤモヤするような葛藤は、大人の目からは心配だけれど、本人はもっとできると思うことがあります。私も3兄妹の末っ子なのでいまだに続いていたりもします。26歳でまだ早いことって何だろうと思いますが、そういうもがいているところは共感しました。いろいろな人に思い当たるところが多い作品だと思います。
Q 少年の役を演じるにあたってどのような準備をされましたか。
A伊藤沙莉男の子らしくできるようにと意識したのと、子どもなので大人よりもテンションが高いですし、それをどこまで表現しようかを考えました。アニメとはいえリアリティも欲しいので、その塩梅は難しかったです。最初に作った声は「青年に聞こえるので少年を表現してほしい」と言われましたので、より少年らしく高くて張りのある声を出すために、目線を上にしてしゃべるようにしました。目線によって声の出し方は変わるので、自分なりに意識して演じました。
Q 女優として演じることと声優として演じることの違い、また、国内のアニメと吹き替えアニメの違いについてお聞かせください。
A伊藤沙莉アニメと実写の違いは足し算と引き算だと思います。実写の演技は引き算で、余分なものを排除して演じるのが好きです。必要のない動きはしたくないですし、演じる人物が言わないこと、やらないことはしないようにしています。アニメでは自分の感覚よりもちょっと大げさな方が映像に合っていたりします。その演出のされ方が違うと感じていて、私の経験では、押さえ気味なのが実写で、もっと大げさにと言われるのがアニメです。作品にもよると思いますが、「映像研には手を出すな!」は基本的に映像の動きがつく前に声を録っていましたので、最終的にどんな表情で話しているのかは想像しながら演じていました。とはいえ、日本の作品なので表現の自由さはありますし、自分が感じたとおりに演じて正解ということも多いです。吹き替えの場合はお手本がある分、それに引っ張られてしまうことが多いです。この作品のオリジナル版は意外に繊細で、実写に近い表現をされている印象を受けました。それにつられてしまうと元気なビッケにはならなかったと思います。日本バージョンとして日本の皆さんに伝わるためにはもう少し色濃くした方が面白く観てもらえるかなと思いました。
Q アフレコの様子についてお聞かせください。
A伊藤沙莉ひとりでの収録は掴めない部分もあったので、ビッケのお父さんハルバル役の三宅健太さんと、幼馴染イルビ役の和多田美咲さんとご一緒させていただいて、ソーシャルディスタンスを取りつつ、アフレコさせていただきました。午前中にひとりでリハーサルをして、午後からおふたりがいらっしゃって録りましたが、おふたりとご一緒させていただいたことでキャラクターのテンションが全然違いました。
Q 三宅さんと和多田さんは伊藤さんのビッケを絶賛されていましたが、逆におふたりの声はいかがでしたか。
A伊藤沙莉本当に素敵でした。シーンの状況や環境を目の前の映像以上に伝えられる表現に、プロの方々の声の表現の奥深さを感じました。距離感や上から下に呼びかけるといった声の聞こえ方から違いました。テンションを引っ張っていただけましたし、下から上に声をかけられているから、こちらも上から下に声をかける、という風に空間が思い浮かんで演じやすかったです。おふたりと同じ場所で演じられて本当にありがたかったです。
Q ビッケ以外に注目のキャラクターはいますか。
A伊藤沙莉みんなかわいいキャラクターですが、中でも敵役ですがおっちょこちょいで憎めないスベンがいいなと思いました。出てくるとワクワクしますし、ハルバルのいいライバル関係ですよね。スベンが出てこないと面白みが違うと思いますし、こういう悪者なのに憎めない人物が好きです。
Q 何でも黄金に変えられる「魔法の剣」がストーリーの柱にありますが、魔法の剣があったら、どんなものに変えたいですか。
A伊藤沙莉いろんなものを小さくしたいです。苦手な人を小さくすればかわいく見えるだろうし、好きな人は小さくして持ち歩きたいですね(笑)。
Q 伊藤沙莉さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A伊藤沙莉終盤のロキとの戦いを前に、ロキの誘いをビッケが反駁するシーンがすごく好きです。演じていても楽しかったですし、感動できるシーンになっていると思います。10歳のビッケからしたら相手は神様ですごく怖いはずですが、自分の意志をはっきり伝えられるのはビッケの何よりも成長しているシーンですし、ビッケの男気を感じます。ストーリー上のいろんな伏線が回収されて、活躍するシーンにもなっているので、ぜひそこに向かっていくこの映画を楽しんでいただきたいです。
■Information
『小さなバイキング ビッケ』
2020年10月2日(金)EJアニメシアター新宿他にて全国公開
ビッケは海賊の長ハルバルの息子。
父ハルバルは元気な力持ちだが、どうも頭の回転が鈍く海賊長としては頼りない。
そんな父とは正反対にビッケは小さくて力はないが、知恵は誰にも負けませんでした。
ある日、ビッケの母イルバがハルバルたち海賊団の戦利品である「魔法の剣」の力で黄金に姿を変えられてしまいます。
あわてたハルバルは案内役のレイフや船員たちと共に海賊船で、その剣の秘密を解く旅に出発!
小さいからとおいてきぼりを食らったビッケはそっと樽に隠れ海賊船に乗り込みます。
様々な困難に遭遇する旅を、ビッケの知恵と仲間の力で乗り越え、やがて辿り着いたのは謎の島。
そこには天上界から人間界に追放された悪い神ロキが「魔法の剣」を目当てに待ち受けていました。
果たしてビッケたちの運命とは!?
伊藤沙莉(ビッケ)、三宅健太(ハルバル)、前野智昭(レイフ)、和多田美咲(イルビ)、田坂浩樹(スベン)、前田雄(ウローブ)、鷲見昂大(ファクセ)、白井悠介(ゴルム)、 神尾晋一郎(ウルメ)、長瀬ユウ(スノーレ)、坂田将吾(チューレ)、矢尾幸子(イルバ)、 野津山幸宏(ソー)
監督:エリック・カズ
配給:イオンエンターテインメント/AMGエンタテインメント
©2019 Studio 100 Animation – Studio 100 Media GmbH – Belvision
■Profile
伊藤沙莉
1994年5月4日生まれ、千葉県出身。
2003年、9歳でドラマデビュー。『パンとバスと2度目のハツコイ』『榎田貿易堂』『寝ても覚めても』『blank13』などの映画に出演し、第10回TAMA映画賞で最優秀新進女優賞、第40回ヨコハマ映画祭で助演女優賞、主演を務めた『タイトル、拒絶』で第32回東京国際映画祭東京ジェムストーン賞を受賞。2020年6月、テレビアニメ「映像研には手を出すな!」やドラマ「これは経費で落ちません!」「ペンション・恋は桃色」などでの活躍を評価され、第57回ギャラクシー賞テレビ部門個人賞、さらに『生理ちゃん』で第29回日本映画批評家大賞助演女優賞に輝いた。そのほかの出演作にドラマ「ひよっこ」「獣になれない私たち」「全裸監督」「いいね!光源氏くん」など。公開待機作に、映画『十二単を着た悪魔』『ホテルローヤル』『タイトル、拒絶』が控えている。