OKWAVE Stars Vol.955は映画『蒲田前奏曲』(公開中)に出演の瀧内公美さんへのインタビューをお送りします。
Q 4人の監督の短編が連なる本作の企画を聞いた際の印象はいかがだったのでしょう。
A瀧内公美私は第三作目の「行き止まりの人々」についてお話をいただいたんですけど、「Me Too」とセクハラが題材だったので難しそうだと感じたのが第一印象です。4人の監督にそれぞれテーマがあるということは聞いていたものの、他の3編の台本をいただいていたわけではないので、どんな作品になっていくのだろうと思いました。
Q では「行き止まりの人々」の台本を読まれてどう感じましたか。
A瀧内公美脚本だけでは分からないところが多かったので、どうお芝居したらいいんだろうか、と悩みました。安川有果監督と事前にお話した際には、「行き止まりの人々」の舞台となるオーディションのシーンではいろいろな素材を撮っていきたいと言われ、リハーサルを重ねて作り上げていきました。本作の劇中のオーディションで、あるシーンを何度も繰り返すのですが、脚本は土台のようなものだったので、安川監督はどんな素材を撮りたいのか、現場に入ってみないと分からないところもあり、言われたことを膨らませて対応できるようにしておかなければ、とは思いました。
Q 短編と長編で演じ方の違いなどはありますか。
A瀧内公美自分としては普段とは変わりませんが、短編ならではの短い中で表現するということについては安川監督が「自分としては難しいことです」と仰っていました。
Q ご自身と近しい世代の女優役とのことで、役柄についてどう感じましたか。
A瀧内公美オーディションは私も経験してきましたが、今回演じた黒川瑞季のようにオーディションの場で何かを物申したり、喧嘩になるようなことはなかったので、リアリティをもって表現できるのかは心配でした。
黒川瑞季は劇中の間島アラン監督から過去にセクハラを受けたことがある役柄です。松林うららさんが演じる蒲田マチ子は現在、あるプロデューサーからセクハラを受けています。過去のこととはいえ黒川にとってはまだ自分の中に蟠りがあると思いました。
黒川瑞季が発言することで蒲田マチ子に影響を与えていくので、黒川瑞季の危うい部分を出しつつも“きちんと言葉を吐く”ということを大切にしました。
Q かなりヒートアップするオーディション現場が描かれていますが、実際にああいったオーディションはあるのでしょうか。
A瀧内公美私はああいった険悪なムードになるオーディションを経験したことはないですね。これまでに監督から心にグサッと刺さってしまうような言葉を言われてしまったことはありますが、私自身はその言葉を自分の力に変えて前向きに捉えようと思えるので、ああいった状況に至るまでにはならないですね。
Q 演じていて印象的だったことは。
A瀧内公美撮影前日に同じくオーディションを受けるマチ子役のうららさんとリハーサルを行って、当日に間島アラン監督役の大西信満さんらが入って作り上げていきました。セリフは脚本通りですがオーディション台本以外の合間にある受け答えをしている部分は、エチュードでもあります。安川監督は狙いから外れないように段階的に誘導してくださっていたので、とにかく集中して、一言一言受け逃さないように必死だったことは覚えています。
本作は松林うららさんの実体験をもとにうららさんが安川監督と作り上げていったものですが、安川監督は「女性だけが被害に遭っていると叫びたい作品ではありません」と仰っていたので、監督の演出に沿うようにみんなで意見を出し合いながら、作り上げていきましたね。
Q 完成した全編をご覧になってどう感じましたか。
A瀧内公美蒲田マチ子が他の作品で友だちと会っている時や弟といる時の表情の違いも見ることができて、より蒲田マチ子が楽しめる作品だと思いました。
渡辺紘文監督のパート「シーカランスどこへ行く」は、蒲田マチ子の従姉妹のりこちゃんを通じて、東京で女優としてもがいている蒲田マチ子の姿が見える形になっていますが、最初は衝撃は受けました(笑)。
Q どんなところを楽しんでほしいですか。
A瀧内公美4人の作家が4つのテーマで蒲田を中心に撮るということで、一本の映画でそれぞれの個性豊かな作風を楽しめます。私の作品で言うと、二ノ宮隆太郎さん演じる新川が話す内容がキーになってくるので注目して観ていただけたらと思います。
それと私自身は蒲田との接点がこれまでになかったのですが、2つ目のエピソードの「呑川ラプソディ」に出てくる蒲田温泉は、蒲田をロケ地にしているからこその場所だと思うので、蒲田の魅力も堪能していただける、と思いました。
Q 新しい発見などはありましたか。
A瀧内公美『蒲田前奏曲』は松林うららさんが企画して自分がご一緒したい監督と製作費、キャストを集めて作り上げた作品です。彼女のバイタリティー溢れた行動と勇気に感銘を受けましたし、そんな作品に携われて嬉しかったです。自分自身、#meToo、セクハラを扱った題材の作品に出演し、考えさせられるものがありました。
■Information
『蒲田前奏曲』
2020年9月25日よりヒューマントラストシネマ渋谷・キネカ大森他全国順次公開中
売れない女優マチ子の眼差しを通して、“女”であること、“女優”であることで、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を、周囲の人々との交わりを介在しながら描いていく。
4人の監督が各自の手法でコミカルに描き、1つの連作長編として仕上げていった新しいタイプの作品。
監督には日本映画界の若手実力派監督が集結。最新作『静かな雨』が釜山国際映画祭上映、東京フィルメックス観客賞受賞など、国内外の注目を集める中川龍太郎、長編デビュー作『月極オトコトモダチ』がMOOSIC LAB グランプリ受賞、東京国際映画祭上映の穐山茉由、『Dressing Up』(第8回CO2助成作品、OAFF2012)で日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞の安川有果、最新作『叫び』が東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞に輝いた渡辺紘文(大田原愚豚舎)が務める。
『飢えたライオン』で主演を務め、舞台、TVドラマなどでも活躍する松林うららが自身の地元である蒲田を舞台にプロデュースし、自らも出演。
また、伊藤沙莉(『タイトル、拒絶』)、瀧内公美(『火口のふたり』)など、旬の俳優が名を連ねる。
出演 : 伊藤沙莉 瀧内公美 福田麻由子 古川琴音 松林うらら
近藤芳正 須藤蓮 大西信満 和田光沙 吉村界人 川添野愛 山本剛史
二ノ宮隆太郎 葉月あさひ 久次璃子 渡辺紘文
監督 ・脚本 : 中川龍太郎 穐山茉由 安川有果 渡辺紘文
配給::和エンタテインメント、MOTION GALLERY STUDIO
https://www.kamataprelude.com/
© 2020 Kamata Prelude Film Partners
■Profile
瀧内公美
1989年10月21日生まれ、富山県出身。
高校生の頃から地元・富山にてグラビア活動を始める。18歳で上京し、大妻女子大学に入学。教員免許を取得するも、自分が本当に進みたい道を見つめることとなり、2012年、本格的に女優としての活動を開始。半年後、オーディションにて映画『グレイトフルデッド』(2014公開/内田英治監督)の主演を射止める。また、2015年には白石和彌監督『日本で一番悪い奴ら』にて、打算的な若手婦警役を好演。 2017年、廣木隆一監督『彼女の人生は間違いじゃない』にて主演。第27回日本映画プロフェッショナル大賞新人女優賞受賞、2017年度全国映連賞女優賞受賞など、高い評価を得る。 2018年公開の主演映画『火口のふたり』(荒井晴彦監督)ではキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞する。その他の主な出演作はドラマ「ゾンビが来たから人生見つめ直した件」「凪のお暇」「恋はつづくよどこまでも」など。2021年は主演映画『裏アカ』『由宇子の天秤』が公開予定。
人との出会いを大切にして、水のように柔らかく、目の前のことに全力を傾けることを信条とする。