Vol.960 アーティスト 正山陽子(3rdアルバム『The Songs for 7 Days』リリースについて)

正山陽子(3rdアルバム『The Songs for 7 Days』)

OKWAVE Stars Vol.960は3rdアルバム『The Songs for 7 Days』をリリースしたシンガソングライター・正山陽子さんへのインタビューをお送りします。

Q この3rdアルバムの製作はどのように着手されましたか。

A正山陽子2016年に2ndアルバムの『Sing and Sparkle〜たびだちの歌』を発売しましたが、アルバムに参加してもらったドラムスの田中教順さんが他の公演や海外に行かれて忙しくなってしまったので、リリース後に一緒にライブをする時間が少なくなっていました。教順さんが帰国後にようやく一緒にライブができるようになって、しばらくライブを中心に活動しているうちに、気づけばリリースの間隔も空いていました。「次のアルバムも聴きたい」という声をライブの後にも言われるようにもなって、着手したのが2018年末です。急ごうとは思わなかったので、作品はゆっくり作っていって、今年の3月にはレコーディングをすべて終えていましたが、今度は新型コロナウイルスのために、リリースがずれこみこの時期になりました。

Q アルバムのコンセプトなどはありましたか。

A正山陽子1stアルバムが完全にアナログ録音で、音楽ジャンルで言えばスウィングとブラジリアン・ポップスに寄せて、自分のルーツに近い作品でした。2ndアルバムでは自分の中のR&Bやソウルな部分を元に新しい音楽を作ろうと、録音方法もデジタルにしました。1stアルバム以来のメンバーであるドラムスの田中教順さん、ウッドベースのヤマトヤスオさんとはライブを重ね、お互いの緩急のつけどころも分かってきていたので、今回はジャズを基調に彼らのいいところをたくさん引き出した作品にしたいと思いました。作曲の過程でも、彼らの演奏を前提にして、彼らの特徴や得意な領域が生かせるアレンジにしようと考えました。さらにここに2ndアルバム以降のライブでご一緒してきたキーボードのヤマザキタケルさんが加わって、私のソロアルバムでありながら、全員の個性が反映された「このメンバーありき」のアルバムになりました。結果として人間味あふれた作品に仕上がり、ボーカロイドのような完全デジタルなものとは対極の作品になったと思います。

Q 曲作りはどのように進めましたか。

A正山陽子作曲していた時期はコロナウイルス前でしたが、何となく明るい気持ちになれる曲にしようと思っていました。私はアメリカに日系人の親戚がいて、日本語が分からない彼女たちでも聴いただけで楽しい気持ちになれるような曲にしたいなと。これまで日本語を大事に曲作りをしてきましたが、自分も外人になった気持ちで曲のフックやサビのフレーズが残るような全体のバランスを大事にしました。音の方向性はジャズですが楽曲的にはポップなものに仕上げて、みんなが楽しい気持ちで聴けるものを目指そうと。そういう意味では今までよりも目的がはっきりしていました。
「流しっぱなし歌いっぱなし弾きっぱなし叩きっぱなし」や「なんでこんなにギスギスと窮屈きわまりないのかね」は以前からの持ち曲で、このメンバーのアレンジで楽しい曲に仕上がったので、自分なりのいいリメイクができたと思いました。歌詞に関しては、曲と同時進行で作っていきました。

Q レコーディングはどのように進めましたか。

A正山陽子(3rdアルバム『The Songs for 7 Days』)正山陽子今までは私がイメージを固めてそれをメンバーに伝えて演奏してもらっていました。今回はメンバーの特徴が分かってきたので、曲のアレンジが半分くらいできたところで、メンバーに聴いてもらってアイディアを出し合ったので、よりバンド的な進め方になりました。私の作った原型を踏襲しているものもあれば、「恋泥棒」などはメンバー同士アイディアを出し合って完成させる、ジャムセッション的な自由な作り方だったので、予想しなかったイメージに移動していった楽曲です。CDの10曲目の「流しっぱなし歌いっぱなし弾きっぱなし叩きっぱなし」(ExtendedVer.)は、ライブバージョンのようにセッションをしながらレコーディングをしていて、後半のドラムスのいいグルーヴ感を残したかったので、レコーディングの実録としてボーナストラック的に入れました。
レコーディングは、ドラムスに合わせて演奏をする一発録りなので、もしも誰かが間違えばやり直しになります。その時に一番負担がかかるのが歌っている私なので、できるだけテイク1かテイク2で集中して録りました。みんながドラムスの音を信頼して演奏しているので、テンションも高いし、ドラムスやキーボードがアドリブで面白いフレーズを弾くとみんなついていくので、段々とライブ的になっていきます。この録音方法はとても楽しかったし、ただ演奏が上手いということだけではなく人間性も音ににじみ出るものとなりました。

Q 「天体観測」のカバーについてお聞かせください。

A正山陽子関西に帰省した際に、小学校からの友だちとペルセウス座流星群を観測する機会があって。流れ星が見えるまでずっとおしゃべりをして待っていた時に、この曲のことを思い出しました。Bump Of Chickenさんの大切にしている曲ですし許可がおりないのではないかと心配しましたが、良い返事をいただき、カバーができて良かったです。この曲もメンバーありきで、ヤマトヤスオくんがウッドベースを弾いたらどんな「天体観測」になるかな、というところからアレンジをして組み立てていきました。

Q レコーディングにまつわる印象深い出来事などはありますか。

A正山陽子レコーディングがコロナウイルスの感染拡大前で良かったなと思います。このレコーディングではブースの中にみんなが集まってひとつのマイクの前でコーラスをしているんです。スタジオで肩よせ合って演奏について話し合ったり。緊急事態宣言などだされる少し前だったからこそできた録音でした。今だったらそのようなやり方はできないですよね。こんな風にみんなが集まって一緒に作業をするというのは今後しばらくは難しいだろうと思うと寂しいですね。

Q ウィズコロナの時代のライブはどのような考えでしょうか。

A正山陽子しばらくの間は会場のお客さんは人数を絞って、配信と並行する形になるのかなと思います。できる限りライブに来ててもらいたいですが、コロナがいつ収束するか不透明ななか、気楽にライブに来るのは難しいかもしれません。このアルバムはライブ的に録音しているので、自宅にいながらライブに参加しているかのように、楽しく聴いてもらえると思います。また、配信でも、生音の演奏を聴いてもらえるので、ライブ会場に近い形にはなると思います。現在、多くの会場や演奏者が様々な予防対策を模索していますが、私も、ライブの際には、飛沫防止や感染予防対策をとるなどのコロナ対策は知恵を絞りながらやりたいと思っています。

Q 『The Songs for 7 Days』というタイトルについてはいかがでしょう。

A正山陽子このアルバムタイトルはコロナの感染拡大以降につけました。自分の音楽を聴き直していて、いよいよ人と触れ合えなくなって、ライブにも気安く出かけられなくなる中で、人間味あふれる音楽、とくに人の歌声が毎日どこかのタイミングで寄り添えることが実は大事なんじゃないかと思いました。私のアルバムでは歌を加工していないし、逆にちょっとした“雑味”のようなものも残しているので、その時の感情に合わせて寄り添えるのではないかと思って、日々のための音楽という意味のこのタイトルにしました。

Q 正山陽子さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A正山陽子『The Songs for 7 Days』は主要なサブスクリプションサービスで聴けます。デジタルにはない生音のぬくもりあふれる音楽を、ちょっとした時間やリラックスしたい時に聴いていただきたいです。在宅勤務の方も多いと思いますので、BGM的に聴いていただきながら、楽しんでいただけたらと思います。CDも出しますので、そちらは手にとって絵本的に歌詞を見ながら音楽と一緒に楽しんでいただけたらと思います。

Q正山陽子さんからOKWAVEユーザーに質問!

正山陽子都内にあるおいしいパン屋さんを教えてください。あんぱんのような何かが入っているものではなく、ドイツパンやフランスパンのようなハード系でそれだけで美味しいパンが売っているおすすめのお店をぜひお願いします。

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■Information

3rdアルバム『The Songs for 7 Days』

正山陽子(3rdアルバム『The Songs for 7 Days』)2020年10月21日(水)CDリリース(WANI0001、2,500円+税)
U-sen, TuneCore, Spotify, AppleMusicなど主要音楽配信会社から世界配信中!

シンガーソングライター正山陽子の最新作。
一度きいたら離れないポップな歌詞がスイングジャズやボッサ、日本語歌謡曲のエッセンスを含んだメロディーやアレンジと重なり、どこか懐かしくも新しい正山陽子の世界観を豊かに表現している。年齢問わず、聴く人がウキウキして思わずくちずさみたくなる「歌モノ」アルバム。

1.The Song for 7days
2. 流しっぱなし歌いっぱなし弾きっぱなし叩きっぱなし
3.The Central Station
4. か行のサンバ
5. In the Room
6.言葉にならない
7.恋泥棒
8. なんでこんなにギスギスと窮屈きわまりないのかね
9.天体観測(BUMP OF CHICKEN カバー)
10.流しっぱなし歌いっぱなし弾きっぱなし叩きっぱなし ExtendedVer.(CDのみ)


■Profile

正山陽子

正山陽子(3rdアルバム『The Songs for 7 Days』)兵庫県宝塚市出身。
大学在学中にオーガニックソウルユニット「BardSyrup」を結成。デモを高く評価したパーカッショニスト、ジェフリー・ヘインズ(カサンドラ・ウィルソンやパット・メセニーのサポート等で知られる)に認められ、彼の招きでNY録音。ジェフリー・ヘインズとの演奏を含めた1stアルバム『Syrup No.1』(universal IMS)をリリース。静謐さの中に人間の情念をひめたサウンドと詞世界が高い評価を得る。
2013年、正山陽子ソロ第1作『Yoko Masayama』をP-VINE RECORDSより発売。日本人 JAZZミュージシャンだけでなく、ジェフリー・ヘインズや、マヌージュジャズギタリストのブルーノ・ジルら海外JAZZミュージシャンも参加したこのアルバムは、タワーレコード渋谷店女子ジャズ担当が選ぶ「2013年度女子ジャズ新人賞」を受賞しバイヤーから高評価を得る。また廣木隆一監督の映画『透明ポーラーベア』(戸田恵梨香、濱田岳主演)にも楽曲提供とシンガー役で出演。2016年に2ndアルバム『Sing and Sparkle〜たびだちの歌』(P-VINE)をリリース。
「ライブが私の真骨頂」というだけあり、ライブ表現を大切にしており、舞踏家とのコラボレーションによる即興演奏、書店からの依頼による大人むけの演奏付き朗読会も行うなど、音楽表現の幅を広げる。

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