OKWAVE Stars Vol.970は映画『海の底からモナムール』(2020年12月4日公開)に出演の前野朋哉さんへのインタビューをお送りします。
Q 本作の台本を読まれた印象をお聞かせください。
A前野朋哉“フランス人の監督作”というのが第一印象です。ホラー映画へのオファーということで脚本を読ませていただきましたが、怖いだけではない作品だと思いました。愛の話や執念のような人間の持っている感情の話が強く入っているなと。日本人は気持ちをストレートに伝えるというよりは感じさせることの方が多いと思いますが、気持ちを伝える言葉が多く用いられている印象を受けました。日本人ならこのタイミングでは言わないだろうなというセリフについては、ロナン・ジル監督も「なるべく、この年頃の日本人が話す内容にしてほしい」と仰っていたので、主演の桐山漣さんが代表になってくれて、みんなでセリフをすり合わせて代案を提案して、監督にも納得していただいた上で、進めていきました。とはいえ、独特な部分も残っています。せっかくフランス人の監督が撮られるよいところをなるべく残しつつ、どうバランスを取るかを考えながらやっていきました。
Q 演じられたマツのキャラクターについてどう受け止めましたか。
A前野朋哉マツはお調子者ですが、過去のことを含め、ストーリーに絡んでくる役柄です。消極的な主人公タクマをグイグイと引っ張って巻き込んでいく役割だと考えながら演じました。
Q 桐山漣さんら、事件に巻き込まれる4人の共演はいかがでしたか。
A前野朋哉僕と桐山さん、三津谷葉子さん、杉野希妃さんの4人はずっと一緒にいたので、世間話もしましたが、みんな常に作品を良くしたいと思っていて、セリフ合わせをしたり、シーンをより良く成立させるために思いついたことをやってみて、監督に見てもらいました。ですので、ワンシーンごとにみんなでじっくり作っていくことができました。
Q 海辺のロケーションについてお聞かせください。
A前野朋哉広島市内から車で30分ほどのロケーションです。実際には陸続きですが島に見立てて撮影していました。かなりの頻度で船が通るので、船待ちの時間が結構多かったです。海沿いに歩道があって、散歩している人や釣りをしている人もいる、のどかで落ち着く場所でした。とはいえ、瀬戸内海は静かですし、夜になるとやはりちょっと不気味で、一人で歩くには怖い雰囲気がありました。
Q ホラーのシーンについてはいかがでしたか。
A前野朋哉ほとんどの芝居が浜辺での会話だったので、緩急という意味でも、怖がるシーンについては演じていて楽しかったです。マツが車の運転中に清水くるみさんの演じた幽霊ミユキと遭遇する場面は、監督も車に一緒に乗って、どう見せたいか細かな説明がありました。あのシーンで演出をつける監督はとても興奮していて、怖がらせるためのいろんなこだわりがあって、そこは少年ぽかったです(笑)。
Q そんなロナン・ジル監督はどんな方なのでしょう。
A前野朋哉ものすごくチャーミングな方です。刺し身が大好きで、常に笑いにしてくれる方です。僕らも和みましたし、険しい顔をしている姿は撮影中、一度も見ませんでした。船待ち中も、言葉では「まただ!」とぼやいたりはしていましたが、その姿もチャーミングで、僕らはずっと癒やされていました。日本語も話せるのでコミュニケーションの問題はありませんでした。
演出面では監督は幽霊側の気持ちをすごく考えている印象で、いつも撮影中は楽しそうにされていました。
Q 完成した映画をどうご覧になりましたか。
A前野朋哉ホラーだから怖い、という印象よりは、ミユキの執念そのものが怖かったです。むしろ生き霊に近いのかなと感じました。幽霊がちゃんと存在している、という感覚が不思議で面白いなと思いました。霊的な呪いが起こるのではない、新しい幽霊像があるなと感じました。
Q 今年はコロナ禍でいろいろな変化があったかと思いますが、この1年で感じたことをお聞かせください。
A前野朋哉現場に行かせてもらう貴重さをあらためて感じました。現場で準備をしているスタッフの姿を見て「やっぱり現場はいいな」と思いました。これからもみんなで作品を作っていくにはどうしていけばいいか考えるようにもなりました。作品を作りたいという思いをみんな持っているし、僕もやり続けたいと改めて思いました。状況がいろいろ変わりましたので、これから作られる作品も変わっていくだろうし、その変化について行けるように僕も変化していかなければと思っています。
それと、俳優の仕事だけだったら精神的に苦しかったかもしれません。俳優は呼ばれて行くものですので自分から発信する機会はあまりないです。僕はたまに監督もしているので、自分も発信できると思っていられたのが救いでした。自分から動けば何かしらできるということも改めて感じました。
ひとつ興味深いなと思ったのが、自粛明けには殺される役を演じたり、その逆の立場になる作品など、エッジの効いた作品が立て続けにあったんです。ヒューマンドラマよりもそういう作品が続いていたのは何かあるのかなと思いました。
Q 前野朋哉さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A前野朋哉『海の底からモナムール』というタイトルや桐山さんと清水さんのポスタービジュアルからいろいろ想像して映画館に来てくれると、また違うところに連れて行ってくれる作品だと思います。幽霊像が新しい作品になっていますし、フランス人監督がどうキャラクターに愛情を注いだのかも見どころです。監督自身が女子高生の思考なんだろうなと僕は思っていて、そんなチャーミングな監督が撮った作品を楽しんでいただけたらと思います。
■Information
『海の底からモナムール』
10年前、イジメに遭い、島の崖から飛び降りた女子高生・ミユキは、「ただ愛されたい」という想いを抱き、17歳のままずっとこの瀬戸内海の浜にいる。
当時、ミユキが想いを寄せていたタクマは、同じく島出身のマツに連れられ、それぞれの彼女・カオリとトモヨと一緒に、卒業後初めて島に戻ることに。
その島では去年、かつて近所に住んでいた同級生のリカが溺れて死んでいた。「あの浜に行くな」と言う忠告を聞かず、浜でキャンプをする4人。夜、浜でミユキを見て、テントに駆け込むタクマ。海で泳いでいたカオリは、誰かに足を引っ張られ、危うく溺れそうに。果たして4人は、無事に帰京できるのか…。
出演:桐山漣 清水くるみ
三津谷葉子 前野朋哉 杉野希妃
監督・脚本:ロナン・ジル
配給: アルミード
公式サイト:uminosoko-movie.com
Twitter:@uminosoko_movie
Facebook:@uminosoko.movie
© Besoin d’Amour Film Partners
■Profile
前野朋哉
1986年1月14日生まれ、岡山県出身。
2005年に『剥き出しにっぽん』(石井裕也監督)で映画デビュー。以降、俳優、映画監督として活躍。主な出演作に映画『桐島、部活やめるってよ』(12)、『イニシエーション・ラブ』(15)、『旅猫リポート』(18)、『魔法少年☆ワイルドバージン』(19)、『嘘八百 京町ロワイヤル』(20)などがある。
https://www.breath-chavez.com/maeno
https://twitter.com/maenotomo18