Vol.971 女優 恒松祐里(映画『タイトル、拒絶』について)

恒松祐里(映画『タイトル、拒絶』)

OKWAVE Stars Vol.971は映画『タイトル、拒絶』(公開中)に出演の恒松祐里さんへのインタビューをお送りします。

Q 本作のオファーについてどう受け止めましたか。

A恒松祐里私はこれまでにリアルな現実社会を題材にした作品のオファーをいただくことがあまりなかったので、こういう作品に呼んでいただけたのが嬉しかったです。台本を読むと女性のパワーや痛みをすごく感じたので、ぜひ出演したいと思いました。

Q マヒル役をどう演じようと思いましたか。

A恒松祐里(映画『タイトル、拒絶』)恒松祐里マヒルを一言で表すと“笑いながら泣いている子”です。どういう風に笑って、その笑顔が悲しいように見えるのか、内面で作っていくしかないなと思いました。マヒルの苦しみを考えたり、デリヘル嬢の仕事をしている方のブログや本を読んでリサーチしました。ただ、彼女のようなに痛みを感じることは女性ならではだとも思いますので、私の中にあるものも入れながら作っていきました。全世界の女の子の悩みを一人で抱え込んでいる女の子だったので、演じている時はすごく辛かったですが、感情が爆発するシーンがストーリーの終盤にあって、そのシーンの撮影も終盤だったので、撮影期間中に溜め込んだ気持ちを爆発させることができました。マヒルという強烈なキャラクターに引っ張られすぎずにスカッとした気持ちで、彼女の黒い部分を全部出しきれたなと思います。

Q マヒルとカノウの対比が面白いですね。

A恒松祐里この作品の中で、“カノウはタヌキ、マヒルはウサギ”と「カチカチ山」の設定から引用されています。“タヌキ”のカノウが一般人で、マヒルのような憧れられる存在が“ウサギ”だとして芸能人の仕事に当てはめてみると、笑顔で写真を撮られている時には、たとえ心に闇があっても表には出さないものです。カノウはその闇を知らずにマヒルのような女性に憧れています。でもウサギの立場からはタヌキのように街中で自分を隠さずに自由に振る舞ってみたいと思っています。だからお互いの立場に憧れていて、そうなりたいと思っていてもそうなれないということは、今の私の仕事にも通じるのかなと思いました。

Q 山田佳奈監督から役柄について何か指示などはありましたか。

A恒松祐里(映画『タイトル、拒絶』)恒松祐里私は撮影中に台本にいろいろとメモをとっていて、その中に「山田監督は精神科医のようだ」と書き残していました(笑)。いま振り返ると確かにそうで、マヒルのその時の心情を精神科医のように的確な言葉で示してくださったので、なかなかコントロールが難しいマヒル役を演じきることができました。「山田監督だから演じられた」というメモも書き残していて、本当に監督をはじめみんなに助けられて演じきれたなと思います。

Q 撮影現場の様子はいかがでしたか。

A恒松祐里(映画『タイトル、拒絶』)恒松祐里撮影期間が短かったこともあり、やらなければならないことが多くて大変でした(笑)。長回しのシーンも多く、本番一回のシーンもあって、技術スタッフさんを含め誰も失敗できない中だったからこそ、キャラクターたちのバキバキした感じが映像にも出ているのかなと思います。
デリヘル事務所の部屋のシーンでは、自分の色を持っている女優さんばかりで、よくこんなに個性的なメンバーなのに崩壊しないなと、監督の力量やみんなの力を感じましたし、今までで経験した中で一番面白いシーンの連続でした。男性陣も個性的で、各シーンでそれぞれのキャラクターが立っていますので、ひとりだけに注目できない面白さもあります。こんなに素敵で個性的な俳優さんがいるから、この映画の中の女性たち一人ひとりが引き立っていて、群像劇になっているのかなと思います。
伊藤沙莉さんとは、お互いに子役からなので、顔合わせの時に「ずっと共演したかったです」と声をかけました。沙莉さんが演じるカノウは一般人の感覚を持っている役で、それを自然に演じていらっしゃったので、マヒルの引き笑いはやりすぎかなとすごく不安になるくらいで(笑)、私は逆に自然な芝居にならないようにと努めて演じました。

Q マヒルの妹とのシーンについてはいかがでしたか。

A恒松祐里(映画『タイトル、拒絶』)恒松祐里妹役のモトーラ世理奈さんとは生年月日が一緒なんです。だから姉妹役には縁を感じましたし、お互いの共通点や似ているようで似ていないところなど感じ取ることがたくさんありました。妹は普通に生きていけるタイプなので、妹が感じるはずの痛みも姉であるマヒルが全部引き受けてしまっているのかなと思いました。「泣きたい時は泣けばいいんだよ」と言われて、妹を守りたいからそうできないし、そんなところが感情の爆発につながっていきます。モトーラさんの自然な演技と言葉のニュアンスがすっと入ってきた分、マヒルとしては心にグサッときました(笑)。

Q 本作に携わって新しい発見などはありましたか。

A恒松祐里マヒルが感情を爆発させるシーンで、“笑っているけど泣いている”心情でセリフを話したら、自分でもびっくりするくらい変な声で出てきて、自分の中に溜まった黒いものを出して、かつ泣くのではなく笑うとこういう声になるのかとびっくりしました。後で片岡礼子さんからも「さっきの笑い方、本当に気持ち悪かったね(笑)」と言われて、自分でも出したことのない声が出てきたのが新しい発見でした。

Q 恒松祐里さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A恒松祐里この映画は悩みや痛みを抱えた女性が出てくる群像劇ですが、現在の社会の中でも、人に本当のことを言えなく笑っている方や、普通でいることが悩みという方もいると思いますし、そんないろんな方に観ていただきたいです。この映画を観て、自分ひとりではないと思っていただけたらうれしいです。

Q恒松祐里さんからOKWAVEユーザーに質問!

恒松祐里この映画で今まで演じたことのないような役を演じました。今後私のどんな役を観てみたいですか。

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■Information

『タイトル、拒絶』

恒松祐里(映画『タイトル、拒絶』)全国順次公開中
2020年12月4日より池袋シネマ・ロサにて公開

雑居ビルにあるデリヘルの事務所。バブルを彷彿させるような内装が痛々しく残っている部屋で、華美な化粧と香水のにおいをさせながら喋くっているオンナたち。カノウは、この店でデリヘル嬢たちの世話係をしていた。オンナたちは冷蔵庫に飲み物がないとか、あの客は体臭がキツイとか、さまざまな文句を言い始め、その対応に右往左往するカノウ。 店で一番人気の嬢・マヒルが仕事を終えて店へ戻ってくる。マヒルがいると部屋の空気が一変する。何があっても楽しそうに笑う彼女を見ながら、カノウは小学生の頃にクラス会でやった『カチカチ山』を思い出す。「みんながやりたくて取り合いになるウサギの役。マヒルちゃんはウサギの役だ。みんな賢くて可愛らしいウサギにばかり夢中になる。性悪で嫌われ者のタヌキの役になんて目もくれない のに・・・。」 ある時、若くてモデルのような体型のオンナが入店してきた。彼女が入店したことにより、店の人気嬢は一変していった。その不満は他のオンナたちに火をつけ、店の中での人間関係や、それぞれの人生背景がガタガタと崩れていくのだった・・・。

監督・脚本:山田佳奈
出演:伊藤沙莉、恒松祐里、片岡礼子、佐津川愛美、森田想、円井わん、行平あい佳、野崎智子、大川原歩、モトーラ世理奈、でんでん、池田大、田中俊介、般若
配給:アークエンタテインメント

http://lifeuntitled.info/
https://twitter.com/titlekyozetsu

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■Profile

恒松祐里

恒松祐里(映画『タイトル、拒絶』)1998年10月9日生まれ、東京都出身。
2005 年、「瑠璃の島」(NHK)で子役としてデビュー。近年の主な出演作は『散歩する侵略者』(17/黒沢清監督)、『虹色デイズ』(18/飯塚健監督)、『3D彼女 リアルガール』(18/英勉監督)、『凪待ち』(19/白石和彌監督/おおさかシネマフェスティバル2020新人女優賞受賞)、『アイネクライネナハトムジーク』(19/今泉力哉監督)、『殺さない彼と死なない彼女』(19/小林啓一監督)、『酔うと化け物になる父がつらい』(20/片桐健滋監督)など。
待機作に2021年前期テレビ小説「おかえりモネ」などがある。

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