OKWAVE Stars Vol.975は「喜劇 お染与太郎珍道中」製作会見の模様と八嶋智人さんへのインタビューをお送りします。
■製作発表より渡辺えりさん、八嶋智人さんの会見の模様(1月6日実施)
Q 本作の意気込み等お聞かせください。
A渡辺えりコロナ禍で昨年1年間、皆さんも大変な思いをして我慢を重ねて年を越したと思います。演劇人にとっては、そのような中で演劇をはじめアートや娯楽がいかに大切なものかを再確認できた1年でもあったと思っています。こうしていま稽古場で喜劇をやらせていただいて、幸せだなと毎日あらためて感じています。このコロナ禍で、やりたいことができない日々がしばらく続きましたが、そのときに、演劇がやりたくて山形から上京してきた頃の自分の姿を思い出していたんです。そこで、自分にとって何が重要なのか、お客様に何をお見せすることが大切なのかを考えることができ、本当に貴重な時間になりましたね。今、2021年を迎え、目に見えないけれど大切なものを作っていく自分の使命のようなものを再認識しています。そして、気持ちも新たに奮い立つような思いを抱いています。
今回の「喜劇 お染与太郎珍道中」もまた人間にとって大切なものを追求していくような芝居です。金持ちのわがまま放題の娘が、自分にとって本当は何が大事なのかを勉強していくお話です。愛し愛される、という目には見えない気持ちがいちばん重要なのではないかと学んでいって、自分自身が気づきを得るお話です。これをお客様に大笑いしながら観ていただきたいなと思っています。私自身も稽古場で、西岡德馬さんや石井愃一さんらの芝居を見ながら大笑いしてしまっています。この作品は、三木のり平さんをはじめ尊敬する先輩たちがそれこそ命がけでお客様を笑わせながら創り上げてきたものです。その先達たちへの尊敬の念を大切に、私たちで、また新たな笑いの世界をお届けしたいと思っています。ぜひ劇場にお越しいただきたいですね。
八嶋智人元気ですか!僕は会見の時は尊敬するアントニオ猪木さんのようにこの挨拶から始めますが、今は、この言葉が重たくなる時代かもしれませんよね。でも、2021年の頭に、こうして喜劇と銘打ったお芝居ができることをとても嬉しく思っています。とにかく我々は、粛々と準備をして喜劇を真面目に作っています。そうやって創り上げた芝居をぜひ楽しんでいただきたいです。
かつて、三木のり平さんをはじめとする喜劇の巨人たちが、いろいろな喜劇をやっていらした時代があって、舞台や劇場が本当に楽しいものだということを教えてくださっていました。今回、先輩たちが創り上げてきた舞台の楽しさを、皆様に改めて味わっていただけたらいいなという思いでいます。一生懸命稽古場で頑張っております。ぜひ劇場にお越しいただきたいです。よろしくお願いいたします!
Q 三木のり平さんが演じられた本作について、あらためてどんな作品にしていきたいですか。
A渡辺えり三木のり平さんとはドラマで共演したことがあります。噂には聞いていましたが、本当に湯のみ茶碗や壁などにセリフが書いてあったんです(笑)。「うわあ、本当だったんだ!」とびっくりしました。それで、セリフが貼ってあるところを順に辿ってセリフを言うのが面白くて面白くて。今思えば、当時の三木のり平さんの年齢からすると老眼のはずだから、実は書かれていても見えていないはずなんですよね。だから、のり平さんはセリフを覚えていないフリをして、私たちを楽しませようと遊んでいらしたんだと思います。普段は冗談も言わない生真面目な方でしたが、「よーいスタート!」で始まるとガラッと変わるんです。現実も非現実もひっくるめて、ドラマの現場を笑わせようとする空気感がありました。今回の舞台でも、虚実を超えて、劇場全体が笑えるのが理想ですが、今の時代に合うようにのり平さんの精神を進化させてできればいいなと考えています。理屈で悩みすぎず、感覚で、自然体に見えるようにある程度計算もしながら、劇場全体が渦巻のような笑いに包まれるようにしたいですね。
八嶋智人三木のり平さんが演じられた役をやらせていただきますが、のり平さんは膨大な知識に裏打ちされた笑いを追求されていたのかなと思います。のり平さんの域に到達なんてできませんが、幸いなことに今回、ボールを一球投げると十球以上返してくるような面白い先輩方がご一緒です。僕も50歳になりましたが、この現場では若手なので、先輩の意見を受け入れながら楽しく演じていきたいです。稽古はとても楽しいですし、先輩方のエネルギーを日々感じています。とにかく70歳を過ぎた方が声がでかい!これ格好良くないですか。それだけで面白いですよね。それと、寺十吾さんの演出は今風のものを取り入れたり、テンポや間合いでおかしくしてくださるので、今それらを積み重ねながら、僕らなりの令和の喜劇を作っていきたいと考えているところです。
Q 渡辺えりさん、八嶋智人さんの“喜劇初共演”についてお聞かせください。
A渡辺えり私が山形出身で八嶋くんが奈良なので、東北と関西で正反対なんです。関西の八嶋くんがすごくいじってきて東北の生真面目な私がいやがる、という構図です。それをそのまま活かすのか、そこは無視してやればいいのか迷っていますが、とにかく八嶋くんは二言、三言多いんですよ!「先輩として尊敬しているけどお付き合いするのはゴメンだ」なんて平気で言うんですよ。
八嶋智人当たり前でしょう!(笑)
渡辺えり付き合いたくない、なんて記者会見で言う?そういうことを言いなさんなと(会場笑)。まあ、毎日がこんな感じですが、でも楽しくなると思います。
八嶋智人何ですか、その最後の付け足し(笑)。今回、「喜劇は初共演」と銘打っていますけど、日常がこんな喜劇状態です。今回のお芝居では僕の方がボケの立場で、普段のイメージとは違うと思いますが、喜劇と銘打たなくても、我々の存在自体が喜劇なので、意識しなくても大丈夫かなと思っています。
Q コロナ禍の中、観に行きたくても劇場に来られない方もいると思われますが、そのような状況でどう演じたいですか。
A渡辺えり昨年、緊急事態宣言が出て、演劇から離れた人もいて、激動の1年間でした。今回の緊急事態宣言を受けて上演を中止にする劇団もあります。それでも演劇を続けていこうと思いを強くしたのは、厳しい時代だからこそ、生の演劇が精神面を癒す意味で本当に大事だと再確認できたからなんです。古代ギリシア時代の演劇は、医療の一つとして上演されていたそうです。今、コロナ禍の時代だからこそ、夢を作る仕事や、夢を見るということが一番必要とされているのではないかと感じています。とくに今回は喜劇で人情物ですので、大笑いして大泣きしていただきたいです。コロナの中でうつ状態に追い込まれてしまいそうな世の中だからこそ観に来ていただきたいんです。それでもご来場できない方も大勢いらっしゃると思います。難しい問題ですが、私たちは、来てくださった皆さんに、「観に来て良かったな」と思っていただけるよう、ただただ頑張るだけですね。
八嶋智人前回の緊急事態宣言のときに、僕たちも多くのことを学びました。定められたガイドラインよりも厳しい基準で感染が広がらないような準備をしています。スタッフさんもすごく努力をしてくださっていますし、とにかく僕らは粛々と準備をしていくだけです。観てくださる方がいらっしゃって、劇場が開いていれば、僕ら役者は演じるだけ。歴史上いろいろな有事があっても演劇は無くなりませんでしたし、えりさんが仰ったとおりで人間には必要なものだと思います。
■八嶋智人さんインタビュー
Q あらためてこの作品の印象をお聞かせください。
A八嶋智人初演は1979年の作品で、何本かの落語を織り交ぜて作られたお話です。偽の夫婦が東海道を旅していき、道中には面白い方々がたくさん現れて、段々と偽の夫婦の二人が本当に心を通わすようになっていくという喜劇です。初演当時は、ご出演の芸達者な方々の芸や個性を見せるという側面もあって、お客様にとにかく笑って楽しんでもらおうという趣旨だったのだろうなと台本を読んでいて感じました。今回の公演も、コロナ禍の中で少しでも嫌なことを忘れて楽しんで帰っていただけるようにしたいなと思っています。別の作品ですが、過去の三木のり平さんの舞台を映像で拝見したのですが、突然マイケル・ジャクソンを踊り出す場面があったり、当時の流行も盛り込んで、とにかくお客様を楽しませながら自分たちも楽しむことに徹していて、その姿勢がとても純粋だと感じました。今回もそのイズムを踏襲して、それを今のお客様に面白がっていただき、新しい令和の物語を作っていきたいです。今まさに稽古場でいろいろ盛り込んで吟味している最中です。
Q 役柄についてお聞かせください。
A八嶋智人渡辺えりさんが大店の箱入り娘のお染さんで、僕はそこで働いている丁稚の与太郎を演じます。お染さんからすると与太郎は気安く話せる幼馴染のような相手です。お染さんが好きになった相手が京都に行ってしまうので、お染さんも京都に行くことになり、女一人で行かせるわけにはいかないので与太郎が付き添うことになります。旅をするのに都合がいいのは夫婦旅だったので、偽の夫婦になるという筋書きです。与太郎はおバカだけど安心できる相手なので付き添いに選ばれますが、与太郎自身はお染さんのことがもともと好き、という設定です。
与太郎は壁がない人物です。ヒエラルキーがはっきりしていた江戸時代ですが、それを知らずに飛び越えて、しかも「あいつはバカだから仕方ないね」と皆から許されている、どこかチャーミングなところがあります。今の世の中も、いろいろな分断がありますが、そういう壁を飛び越えて行き来できる妖精のような人だと受け止めています。
Q 八嶋智人さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A八嶋智人役者はもちろんのこと、劇場はスタッフさんたちの大変な努力と、お客様のご協力で、今やとても安全な場所だと言えます。喜劇と銘打たれていますから、いい年の大人たちがふざけることに大真面目に取り組んで稽古しています。それがどういうものなのか、ぜひ劇場に足を運んでご覧いただきたいです。そしてお客様とも一緒にこの喜劇を作りたいと思っています。ただただ楽しく華やかな時間にしたいので、ぜひ僕たちにお付き合いいただきたいですね。
Q八嶋智人さんからOKWAVEユーザーに質問!
八嶋智人今回のチラシで僕は眼鏡を外しています。普段眼鏡を外さないのでもしかすると僕だと気づかない方もいるかもしれません。僕自身、眼鏡を外すと恥ずかしい気分になってしまうんです。質問ですが、皆さんは自分にとって恥ずかしいこととは何でしょうか。赤裸々にお答えいただいて、お互いに恥ずかしいことがあることを共有して前向きに生きていきましょう。
■Information
「喜劇 お染与太郎珍道中」
2021年2月1日(月)〜17日(水)新橋演舞場
2021年2月21日(日)~27日(土)南座
作: 小野田勇(『与太郎めおと旅』より)
演出: 寺十吾
お染: 渡辺えり
与太郎・お役者小僧: 八嶋智人
べらぼう 半次: 太川陽介
島田重三郎: 宇梶剛士
地武太治部右衛門: 石井愃一
小番頭 庄助: 深沢敦
大番頭 善六: 春海四方
山伏白雲坊: 石橋直也
山伏黒雲坊: 三津谷亮
弥左衛門: 有薗芳記
巡礼お弓: 一色采子
投げ節 おこま: 広岡由里子
むかで丸後におむか: あめくみちこ
泡手 十郎兵衛: 西岡德馬
新橋演舞場・観劇料(税込)
一等席:12,000円
二等席:8,500円
三階A席:4,500円
三階B席:3,000円
南座・観劇料(税込)
一等席:12,500円
二等席:7,000円
三等席:4,000円
特別席:13,500円
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/enbujyo_202102/
■Profile
八嶋智人
1970年9月27日生まれ、奈良出身。
1990年に劇団「カムカムミニキーナ」の旗揚げに参加。以来、ほとんどの劇団作品に出演している。劇団の看板俳優としてはもちろん、映画、TVドラマ、舞台、バラエティと多方面で活躍。「トリビアの泉」は社会現象を巻き起こした。2019年6月に三谷幸喜脚本の歌舞伎『月光露針路日本 風雲児たち』で歌舞伎および松竹舞台作品初出演。キリル・ラックスマンとアダム・ラックスマンの二役を演じ、歌舞伎座を縦横無尽に駆け回った。NHK Eテレ「チョイス@病気になったとき」、BS朝日「百年名家」にレギュラー出演中。舞台出演作に『抜目のない未亡人』、愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』、『泣くロミオと怒るジュリエット』、『あなたの目』など。新橋演舞場、南座ともに初出演となる。
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