Vol.989 寺坂光恵、川合空(映画『Eggs 選ばれたい私たち』について)

寺坂光恵、川合空(映画『Eggs 選ばれたい私たち』

OKWAVE Stars Vol.989は映画『Eggs 選ばれたい私たち』(2021年4月2日公開)主演の寺坂光恵さん、川合空さんへのインタビューをお送りします。

Q 「エッグドナー」という題材と本作についてどう受け止めましたか。

A映画『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵エッグドナーについては子どもがほしいけれど妊娠できない夫婦や、自分が産まなくても「母になりたい」という提供する側どちらにも選択肢が広がる明るいものだと思いました。ですので、脚本をいただいた時からすごくいい映画になるんじゃないかなという確信に近いものがありました。

川合空私自身はこの映画のオファーをいただいて初めてエッグドナーという制度を知りました。脚本を読ませていただいて、結婚や出産といった人生の分岐点になるような出来事が女性の生き方や人生にどのような影響をもたらすのか、女性一人一人の様々な価値観が描かれ、エッグドナーから派生してさらに大きなテーマを掲げた素晴らしい脚本だと思いました。この映画が自分の人生に悩んでいる方へ、選択肢が増えるきっかけになればいいなと思いました。

Q 独身主義者の純子、レズビアンの葵という役柄についてはどう受け止めましたか。

A映画『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵純子は結婚する気も子どもを産むつもりもない女性です。脚本を読んだ段階で純子の考え方を理解できましたし、共感できる方も多いだろうなと思いました。私が子どもの頃と比べて、女性や男性の価値観のルールのようなものが変わっていくスピードがどんどん早くなっているのを実感しています。多くの女性に寄り添えるだろうなと思いました。

川合空レズビアンである葵の視線から世界はどのように映っているのか、私なりに考えるところから始めました。葵は自分がどう見られているか周りの視線を気にしすぎてしまうところがあり、自分は認められない人間なのだと思い込んでしまいます。演じることで、そんな葵の苦しみを身をもって実感しました。ジェンダーの問題に限らず、差別を気にしていないフリをして本当は苦しんでいる女性はたくさんいるのだろうなという気づきもありました。

寺坂光恵川崎僚監督とは、とくに終盤の純子にとっての山場となるシーンについて話し合いを重ねました。その時に卵を混ぜるカットがありますが、監督のこだわりを感じましたし、その時の感情の込め方には注意しながら演じました。

川合空監督からはキャラクターに関しては委ねてもらうことが多かったです。エッグドナーのことや今の女性の結婚や出産といった、大きな括りでの話し合いの方が多かったです。それを踏まえて役作りをしていきました。

Q 純子は“30歳の壁”に直面することにもなりますが、現実にそれを感じることはありますか。

A映画『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵年齢制限のようないろいろな仕組み以外にも世間の目としても結構ありますね。20歳や40歳よりも多いと思いますので、30歳は結構な節目だと思います。

川合空その人自身が30歳を境に何かが大きく変わることはないと思うのですが、周りから今後について色々と言われることは結構あると思います。私自身、家族からこれまでに結婚や出産について言われることがほとんどなかったのに、29歳になってから祖母に「そろそろ結婚は?」と初めて聞かれて、30歳前後になるとそういう世間の目があるのだなと自覚しました。

Q 共演されてお互いの印象はいかがだったでしょう。

A映画『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵完成した映画を観た時に感じたことですが、純子と葵が原宿の街で写真を撮ったり雑貨屋さんを覗いているシーンで、店先で入浴剤を葵が手にとって純子の鼻に当てるシーンがあるんです。それを見た時にすごいなと。葵なのか空ちゃんなのか分かりませんが、中身がかわいらしい人だと感じました。あのシーンはとくに気に入っています。

川合空私だったらお店の商品をそういうふうには扱わないと思うので、あの時は葵になりきっていたんだと思います(笑)。私は共同生活をする部屋のシーンが絶妙な距離感だと感じました。ワンルームの狭い空間に何枚も壁があるようで、そこにいるふたりの居心地の悪さを映画を観て感じました。

寺坂光恵あの部屋にふたりはキツイよね。

川合空それが純子の表情だったり、葵が顔を寄せた時にふいっと顔を背けたりするところに出ていて、演じた寺坂さんのことを素敵な女優さんだなと思いました。

Q この映画に携わっての気づきや発見などお聞かせください。

A映画『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵撮影に入る前に卵子についての本を読みました。男女ともに年齢を重ねると生殖の機能が衰えていってしまうことを学んで、知らないことがありすぎたなと感じました。それ以降、友だちに子どもができたという話を聞いたり、“学生のうちにうっかり”という話を聞くと、それは当たり前のことではなくてすごい奇跡なんだと感じ方も変わりました。それを知ってからは、「子どもを生んだ方がいい」というような言葉を聞くことにも敏感になりました。

川合空30歳になるということが人生の節目だと思っている女性が多いなと感じました。それを境に人生を変えなければならないと無理に思いこんでしまっていたり、結婚しなければならない、子どもを産まなければならない、と周りからも言われて、自分が選びたいことの優先順位が下がってしまうことがあるなと。この映画を通じて悩んでいる人がたくさんいるのだと再認識しました。それと葵を演じてみて、私は私自身が受けた差別やハラスメントを無意識のうちに見過ごしているところがあるなと気づきました。気にし過ぎてしまってもいけませんが、黙って見過ごすことがよしとしてしまっているのも問題だと感じました。

Q 寺坂光恵さん、川合空さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A寺坂光恵映画自体は純子と葵のふたりの物語だったり女性目線の物語ですが、何かに選択される側に立たされて苦しんでいる方たちには、選ばれるか選ばれないかに惑わされずに生きていくことの大切さや素晴らしさを感じていただけたら嬉しいです。

川合空結婚や出産といった重めなテーマを扱ってはいますが、ひとりひとりが日常の中でどこかしら抱えている問題だと思いますので、あまり構えずに観てほしいです。この映画を観て、自分の人生に対してもっと自由な選択ができるようになれたら幸いですし、それができる社会を作っていけたらいいなと思います。

Q寺坂光恵さん、川合空さんからOKWAVEユーザーに質問!

寺坂光恵何かに迷った時に進むか進まないか、皆さんはどうしているか聞きたいです。私は迷った時は引っかかっているものがあるからだと思って進まない派ですが、それぞれどんな考えで選択しているのか知りたいです。

川合空私は迷ったら進む派です(笑)。以前はそれこそ後先考えずに進んで失敗もしましたが、今は迷ったらやってみないと始まらないという気持ちで進んでいます。
私からの質問は、結婚を最初に意識したのは何歳くらいの時かです。私自身は29歳ですが今のところはまだないです。

寺坂光恵私も結婚を考えたことはないですが、孫見せ問題の方を先に考えさせられますね。

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■Information

『Eggs 選ばれたい私たち』

映画『Eggs 選ばれたい私たち』2021年4月2日(金)テアトル新宿にて公開、以降全国順次

子どものいない夫婦に卵子を提供するエッグドナー(卵子提供者)に志願した独身主義者の純子。
そのドナー登録説明会で、偶然、従姉妹の葵に再会し、彼女がレズビアンであることを知った。
恋人に家を追い出された葵は、純子の家に転がり込み、2人の少し奇妙な共同生活が始まった。
エッグドナーとは、子どものいない夫婦に卵子を提供するドナー制度のこと。
選ばれれば、ハワイやマレーシアなどの海外で卵子を摘出し、謝礼金がもらえる。
選ぶのは、子供を希望する夫婦。そして、エッグドナーには30歳までという年齢制限がある。
わずか数カ月で30歳を迎える純子は、それでもドナー登録をすることに決めた。
純子と葵は、どちらが選ばれるかという期待と不安を感じながらも、いつしか「遺伝子上の母になりたい」という同じ目的に向かって<選ばれる>為に、新たな生活を始めようとするのだった。

監督・脚本: 川崎僚
出演: 寺坂光恵、川合空、三坂知絵子、新津ちせ、湯舟すぴか、みやべほの、見里瑞穂、斉藤結女、荒木 めぐみ、鈴木達也、生江美香穂、高木悠衣、森累珠、加藤桃子、すズきさだお、松井香保里

配給・宣伝: ブライトホース・フィルム

公式HP: eggs-movie.com

©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会


■Profile

寺坂光恵

寺坂光恵、川合空(映画『Eggs 選ばれたい私たち』東京都出身。
女優業に加え、タップダンス、ドラムを得意とする。ヒロインを務めた長編映画『真夏の夢』(14/松本花奈監督)、主演を務めた短編映画『ロープウェイ』(17/知多良監督)などの映画に出演。
2020年10月には自身プロデュースで初の写真展を開催。
現在撮影中のものを含め、今回の作品で長編3本目となる。

https://twitter.com/mitsuetty525600
https://www.instagram.com/im___tmte/?hl=ja

川合空

愛知県出身。
東京藝術大学工芸科大学院で鋳金を学び今春修了。女優業と並行して作家、イラストレーター、デザイナーとしても活動。
自身で脚本、監督、主演を務めた『あなたの名前を教えてください。』(19)も制作した。
役者兼ストーリーボードライターとして、園子温監督、ニコラス・ケイジ主演のハリウッド映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』に参加。今作が初の長編主演映画となる。

https://twitter.com/soratarooooo
https://www.instagram.com/sorataro1104/?hl=ja


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