Vol.992 女優 福田麻由子(映画『グッドバイ』について)

福田麻由子(映画『グッドバイ』)

OKWAVE Stars Vol.992は映画『グッドバイ』(2021年4月3日公開)にて主演を務めた福田麻由子さんへのインタビューをお送りします。

Q オファーをどう受け止めましたか。

A福田麻由子(映画『グッドバイ』)福田麻由子撮影は3年前ですが、それよりも少し前に宮崎彩監督からオファーがありました。その当時の私は、役者業どころか自分の人生にも迷っている時期で、同世代の監督が頑張って作ろうとしている映画に参加してその期待に応えられる気がしなくて躊躇してしまったんです。それで一度お会いしてお話を聞かせていただきました。その時の監督の熱量がすごくて。「福田さんに当て書きするように書いたのでぜひ出演してほしいです」と言われたのが嬉しくて、それなら監督について行ってみよう、と決めました。もちろん作品にも興味がありましたが、監督本人に惹かれて引き受けました。

Q ご自分への当て書きと監督がおっしゃられていた本作の台本を読まれた印象はいかがだったのでしょうか。

A福田麻由子主人公のさくらのことを「器用で何でも上手にできるのにすぐ醒めてやめてしまう」といったセリフもあって、自分にもそういうイメージを持たれているのだろうなと感じました。私も器用だと言われることも多いですが、好きなことがそんなにあるわけではないので、そこはさくらに近いのかなと思いました。ですが、さくらとは家庭環境は違いますし、性格も特別近いとは思わなかったので、そこまで当て書きではないのかなという印象で台本は読みました。
ただ、撮影から3年が経って、完成した映画を最近になって観たら、私の根っこの部分が画面に映っていたので、「監督は私のことを見透かしていたんだ」と、3年越しに「ああ、やられた!」と感じました(笑)。

Q さくらの人物像についてはどのように受け止めましたか。

A福田麻由子さくらは幼い頃からお父さんと距離があるのと、おそらく男友達もほとんどいなかったと思います。それで男性という存在を特別視しているような空気感を出そうと思いました。私自身は男女ともに友達はいますし父親とも仲が良いので男女を分けるということはあまりないです。でも女子校育ちの友達や父親と少し距離のある友達の中には男性への独特の接し方があるなと思っていたので、そういう友達の振る舞いや話を思い出して役に取り入れました。

Q さくらのお母さんとやお父さんとの関係性の部分ではいかがでしょうか。

A福田麻由子(映画『グッドバイ』)福田麻由子お母さんとの関係性については共感できる部分が多かったです。私自身は母とはいわゆる仲良し親子というよりはお互いのことをそれぞれ応援しているような間柄なので、その距離感は似ているなと思いました。それで、お母さん役の小林麻子さんともあまり準備せずに、その場で感じたことをそのまま演じるようにしました。
男性との距離感では、正直なところ共感ということはあまりなかったのですが、さくらは誰かに甘えたいのかなと思いました。お母さんとの関係性も、私からすれば十分甘えていると思いますが、さくら本人の中では甘えたことがないという考え方なんですね。だから父性のようなものに惹かれるのかなと思います。私自身は一人っ子でいろんな人に甘えてきた自覚があるので、さくらとは間逆なのかなと思いました。

Q 監督から演じる上で言われたことなどはありましたか。

A福田麻由子監督からはいろんな言葉で「表現をしないように」と言われました。ドラマや映画の撮り方のルールのようなものが何となく染みついてしまっていると、思考を自由にしようとしていてもどこかに出てしまうので、それを自分でも良くないなと思っていて、その点を指摘していただけたのがありがたかったです。

Q 繊細さとリアルさが印象的なお芝居でした。撮影の様子をお聞かせください。

A福田麻由子(映画『グッドバイ』)福田麻由子保育園では、子役の彩衣ちゃん以外の他の子どもたちは実際の園児なんです。エプロンをして「さくら先生」として子どもたちの前に立っているので、みんな私を先生だと思っていて、休憩時間には「髪の毛を直して!」と言われて、直してあげているうちに本番を迎えてしまうこともありました。そんな半分ドキュメンタリーのような感じだったので、リアルな空気感になっているのかなと思います。さくらは臨時の先生なので慣れていない設定ですが、子どもたちのエネルギーについていけない戸惑いの表情は、私自身が感じたリアルな部分が結構そのまま出ています。

Q 本編中、食事にまつわるシーンが多い印象です。

A福田麻由子食事は一番日常的ですし、ある意味動物的というか人間の根本的なところですよね。演じている時はシーンに集中していましたが、完成した映画を観てあらためて振り返ってみると、食事をしているところにその人の根本的なところがにじみ出ていると感じたので、そこに監督の狙いがあったのかなと思います。

Q 本作を通じて新しい発見などはありましたか。

A福田麻由子完成した映画を観て、当て書きとはこういうことなのかと気づかされました。自分の根っこにある、自分でも気づかない間に抑圧していたきれいではないものが出てきてしまったような感覚になりました。さくらの表情も、今まで自分が見たことがない表情が映っていたので、これが私自身なんだろうなと思いました。今までカメラを前にした時に無意識に蓋をしていた部分が映っていたんです。当時の私は、自分の殻を破らなければならないと思っていましたが、監督が私の知らない間にそれを映し出してくれていたのを3年越しに知ることができて嬉しかったです。

Q 福田麻由子さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A福田麻由子この映画は家族の話が大きなテーマなので、それぞれの世代に思うところがあるだろうし、どんな家族にもある、呪縛のようなものが映っているので、いろんな方に観ていただきたいです。とくに私と同世代の20代の方に観てほしいなと思っています。監督をはじめ、当時20代前半の人たちが集まって作った映画です。この映画はさくらが会社を辞めるところから始まります。器用に生きてきて勉強もできる、社会的には何も不自由もなく生きていけるけれど、それだけでは足りなかったのがさくらです。子どもの頃からここまで、いろんなものを気づいたら持っていて、でも本当は何をもっていたいのか、何をしたいのか、年齢的にも考える時期です。本当は自分は何をしたいのかみんなが考え始めている、そんな世の中の空気も感じますので、そんな同世代の方たちに観ていただきたいです。

Q福田麻由子さんからOKWAVEユーザーに質問!

福田麻由子小学生の時に図書館で借りて読んで以来、二度と出会えていない本があるんです。
うす黄色い表紙のハードカバーで、少年と捨てられた小犬、途中で出会う猫の話で、海外の方が書かれた児童文学です。少年は家では窮屈な思いをしていて、捨てられていた子犬をつれて家出をして何か冒険をする話です。すごく感動してまた読みたいと思った本ですが、その後出会えないまま、タイトルも分からなくなってしまいました。ぜひ心当たりのある方は教えていただきたいです。

回答する


■Information

『グッドバイ』

福田麻由子(映画『グッドバイ』)2021年4月3日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

郊外の住宅地、その一角にある上埜家。さくらは母親と二人で暮らしている。仕事を辞めたさくらは、友人の頼みから保育園で一時的に働くことに。そこで園児の保護者である、新藤と出会う。やがて彼に、幼い頃から離れて暮らす父の姿を重ねるようになるさくら。ある晩、新藤家で夕飯を作ることになった彼女は、かつての父親に関する“ある記憶”を思い出す。一方、古くなった家を手離すことに決めた母。桜舞う春、久しぶりに父が帰ってくる。

福田麻由子、小林麻子、池上幸平、井桁弘恵、佐倉星、彩衣、吉家章人

監督・脚本・編集: 宮崎彩
配給宣伝: ムービー・アクト・プロジェクト

https://goodbye-film.com/
https://twitter.com/Goodbye_film

©AyaMIYAZAKI


■Profile

福田麻由子

福田麻由子(映画『グッドバイ』)1994年8月4日生まれ、東京都出身。
「女王の教室」(05/NTV)で注目を集める。その後も「白夜行」(06/TBS)、「Q10」(10/NTV) 、「未来日記-ANOTHER:WORLD-」(CX/12)、「連続テレビ小説 スカー レット」(19/NHK)、「メンズ校」(20/TX)のほか、映画『L change the WorLd』(08)、『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗』(09)、『桜、ふたたびの加奈子』(13)、『FLARE フレア』(14)、 『ラ』(19)、『蒲田前奏曲』(20)など出演作多数。

https://www.flamme.co.jp/actress/profile.php?talentid=8
https://twitter.com/fukudama1994


関連インタビューとQ&A