Vol.995 映画監督 藤田直哉(映画『stay』について)

映画監督 藤田直哉(映画『stay』)

OKWAVE Stars Vol.995は映画『stay』(2021年4月23日公開)藤田直哉監督へのインタビューをお送りします。

Q 本作製作のきっかけをお聞かせください。

A映画『stay』藤田直哉この映画の舞台となる家と出会ったことがきっかけです。友人が廃屋になりかけていた古民家をもらい受けて、就農体験できるような施設にしようと改修している最中に遊びに行きました。その古民家の不思議な雰囲気に触れた時に、ここを使って映画が撮れたらいいなと思ったのがきっかけです。

Q ではどのように台本を作り上げていったのでしょう。

A藤田直哉この古民家は日本家屋なので今皆さんが住んでいるような家とは構造が違います。私も各部屋が壁でセパレートされた西欧風の家にしか住んだことがなかったので、この古民家に入った時、隣の空間から音が聞こえてくるだとか、しきりが薄いだとか、プライバシーの曖昧さがすごく気になりました。そこで現代人が過ごしたときに見えてくる、人と人との関係性を映画で映し出せればいいなと思いました。この家でどのように人は関係性を作っているのか、あるいは生み出すことができるのかを考えたくなったのです。結果的に、お互いに干渉し合わない、現代人の軽薄な関係性がこの映画で表現されたのかなと思います。

Q 古民家の住人たちや、それを追い出しに来る矢島について、演出面ではいかがだったでしょうか。

A藤田直哉古民家に住んでいる住民たちに過去に何があったのかなど、各々のキャラクター設定については各キャストに考えてきてもらい、話したりしました。現場に入った時にどんな動きになるのか、あの家に入った時に感じたことを生かしてもらいたいと思って、私も演出はガチガチには決めていませんでした。役者さんたちに基本は委ねる形で演技していただいて、細かな調整はありましたが、私の方でこうしなきゃだめだというような、演出手法は取りませんでした。
一方で、この家の構造と人間関係を映画としてのフレームの中にどうレイアウトするかにはこだわりました。そこを生かすために、基本的にカメラはFIXで、決められたフレームの中で動いてもらうようにしたので、ある種、演劇の舞台上にいるように感じられるかもしれません。セリフではあまり説明せずに、余白を作ることも意識したので、観た方からはホラーっぽいと言われたこともあります。

Q 石川瑠華さんの演じた住民、マキには不思議な存在感がありますね。

A映画『stay』藤田直哉彼女は古民家に住む5人の中でも最も現代的な感覚を持ったキャラクターとして設定しました。この家に住む誰よりも自由を求めているキャラクターでしたし、石川瑠華さんの持った独特の雰囲気が、その不思議な存在感を生んだのかもしれません。

Q 本作を通じて新しい発見や気づきなどはありましたか。

A映画『stay』藤田直哉制作した当初は様々な人が流動的に入ってくる家、という設定にして、そこでの人物の関係性がどうなるのかを考えていて、家族的な要素については全く考えていませんでした。振り返ってみると、疑似家族的なものになっていました。意識して作ったというより、作っていく過程で自然と出てきたものかと思います。私自身が家族について感じていたことが映画を通して表現されていて、完成した後に思ったことですが、誰もがみんな誰かと家族のような強いつながりを持ちたい欲求があるのかなと、考えるようにもなりました。この映画の終わり方も、制作を進める上で、あらかじめ私が予想していたものとは違うものになりましたし、私自身も人との関係性や距離感というものをもっと考えて過ごしていかなければならないと考えるようになりました。

Q 今の時代性においての本作の見どころについてお聞かせください。

A藤田直哉この映画はコロナ前に撮った作品ですが、コロナが広まってしまった現在、物理的な距離を含め、人との距離をあらためて考える作品にもなったことで、コロナ以前、以後で人によって見え方が変わる作品だと思います。ソーシャルディスタンスを意識したり、会いたい人にも会えないという日常ですし、家で人と過ごす時間が長くなったことにより生まれた煩わしさなど、身近な相手との関係性をも考えるようになったと思います。そういった観点でこの映画を観ると、誰もが考える普遍なテーマを持つ映画になったのかなと思います。

Q 藤田直哉監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A藤田直哉コロナ禍になって、みんなが身近な人との関係性を考えるようになったことで、新たな視点でこの映画を楽しめると思います。自分と身近な人の関係性と照らし合わせて観ていただけたら嬉しいです。また、この映画は、登場人物が軽薄な現代人に見えますが、相手を認めたり尊重して、他人と一緒に生活していくこととはどういうことか、ということを考えながら作った映画です。皆さんにも、映画を通して、他人と一緒に生きていくことについて今一度考えていただけたら嬉しいです。

Q藤田直哉監督からOKWAVEユーザーに質問!

藤田直哉この古民家で共同生活している住民にはちょっと特殊な生活のルールが出てきます。皆さんの家の特殊なルールがあればぜひ聞かせてください。

回答する


■Information

『stay』

映画『stay』2021年4月23日(金)よりアップリンク渋谷ほかにてロードショー

とある村の持ち主のいない古い空き家。ここは誰もが寝泊まりし、出ていくことが可能な場所。ちょうど吉田が去ろうとしているところに、村の役所から派遣された矢島が、不法に滞在する5人に退去勧告を言い渡しにやってくる。
長期滞在しているマキが「前にも何人も来たけど、結局追い出せてないから」と予言したように、矢島は、リーダー格の男・鈴山のペースに巻き込まれ、立ち退きを説得できないどころか、サエコの提案でその家で一晩を明かす羽目になり…

山科圭太 石川瑠華 菟田高城 遠藤祐美

監督: 藤田直哉
配給: アルミード

公式サイト: https://stay-film.com/
公式ツイッター: https://twitter.com/stay_film2021
公式Facebook: https://www.facebook.com/stayfilm2021

(c)東京藝術大学大学院映像研究科


■Profile

藤田直哉

映画監督 藤田直哉(映画『stay』)1991年3月22日生まれ、北海道出身。
明治大学法学部卒業。大学時代は日本映画研究者のシェアマン・スザンネに師事し、実験映画を中心に自主制作を始め、岩井俊二のMOVIEラボにて映像作品を2度選出される。2018年、ユーロライブにて、横濱を舞台にした短編映画『ホンキートンク』を上映。同年、芳泉文化財団助成企画に選出され本作『stay』を制作。

https://twitter.com/fujitana0


関連インタビューとQ&A