Vol.996 女優 大和田美帆(日本一 わきまえない女優 「スマコ」~それでも彼女は舞台に立つ~について)

大和田美帆『日本一わきまえない 女優「スマコ」~それでも彼女は舞台に立つ~』

OKWAVE Stars Vol.996は日本一 わきまえない女優 「スマコ」~それでも彼女は舞台に立つ~主演の大和田美帆さんへのインタビューをお送りします。

Q 本作主演として参加される経緯についてお聞かせください。

A大和田美帆『日本一わきまえない 女優「スマコ」~それでも彼女は舞台に立つ~』大和田美帆このプロジェクトの総合演出の宮本亞門さんとは2005年のミュージカル『ファンタスティックス』のオーディションで選んでいただいてからのご縁です。それからはお仕事での関わりはありませんでしたが、母が亡くなった際に亞門さんがメールをくださったんです。こちらの気持ちに思いを馳せていただいたメールがとてもありがたくて、それ以降もメールのやり取りをしていて、亞門さんには素直な気持ちを打ち明けることもできました。
何度かやり取りがあってから「会って話しませんか」というメールをいただきました。お会いする直前には「松井須磨子について調べておいてください」という謎のメールも来ていて(笑)。私は松井須磨子のことはそれ以前から知っていたので、もしかしたらと思っていたんです。それで、お会いした際にいろいろな話をした中で、この『スマコ』についての話が出ました。それが今年の1月ですね。

Q “リーディング演劇”とはどのようなものでしょう。

A大和田美帆私も聞いた時はどんなものか全く分からなかったです。だけど、分からないからこそ何でも挑戦できると思います。以前にパルコ劇場の『ラヴ・レターズ』というリーディングドラマに出演したことがあって、そちらは前を向いたまま台本を読むというものでした。今回も台本は持ったままですし、松井須磨子の生きた大正時代の扮装をすることもないです。ですが、出演者同士が目を合わせたり、席を立つなどの動きや、台本を置くこともあります。というのは、普通の演劇とは違って映画監督の土屋哲彦さんが撮影をして、しかもYouTubeで配信をするので、もっと映像寄りの作品になるんじゃないかと予想しています。どんな出来上がりになるのかはまだわかりませんが、未知なことが大好きなので楽しみです。

Q 大正時代の実在の女優である松井須磨子についてはどんな印象をもたれたでしょうか。

A大和田美帆自分を貫いた女性かなと。おそらく、彼女のようなスターと呼ばれるような人は、自分の思いが強すぎて他者とぶつかったり共感されなかったりしたのだろうから、孤独だったのではないかと思います。同時に、強くて自分の意見を持っていて揺るがないから、彼女のことを好きな人も多かったと思います。私も彼女には憧れるところもあります。彼女のように強くありたいと思っても、批判されるのが怖くて言いたいことが言えないのが現実です。もっと役者から発信した方がいいと思っているので、それをあの時代に実践していた彼女はとても強い女性だったのだろうなと。でも、彼女のことを知れば知るほどその強さの裏側には脆さも感じるので、とても人間らしくも感じます。
いまでもジェンダーの問題はありますが、大正時代は女性であるだけで生きづらかったと思います。その中で家族にも反対されながら女優になったのは、世間が見たことがないものに突き進んでいく強さですし、プライベートでは二度離婚をしているところからも、きっと自分の心のままに生きている人なのかなとも思います。
これまでも栗原小巻さんや松坂慶子さんらが松井須磨子を演じてきましたが、それだけ魅力があるということですし、後世に残したい何かがあるということだと思います。私は以前に『アマデウス』でコンスタンツェ役を演じた際に、モーツァルトは天才だから故に誰ともうまくやっていけないということを感じ取っていたので、それは松井須磨子にも共通する部分だと感じました。

Q 今回の台本についてはいかがでしょうか。

A大和田美帆松井須磨子は100年以上前の人物ですが、いまにつながる出来事が多いです。脚本の池谷雅夫さんもそこを意識して書かれたのかなというのが第一印象です。まるで自分の言葉のように話せるところもありますし、100年以上前の話とは思えなかったです。今回の台本はフィクションもあって史実だけではありませんので、実際にこうだったのではないかと思わせる説得力を私たちが出していかなければという思いでいます。

Q 宮本亞門さんから役柄などについて言われていることはありますか。

A大和田美帆亞門さんからは「YouTubeで公開するので、いわゆる演劇的というよりは、映像で観てもらうという方向性でいてください」と言われています。生の舞台には生の良さがありますが、せっかく配信をするので配信の良さを生かしたいと亞門さんは考えていらっしゃるのでしょうし、私もそれに賛成です。撮影が前提なので、途中で止めたり、照明が大きく変わることもあるとのことで、そもそも台本を持ったまま演じるのも初めての経験です。舞台上では衣装やヘアメイク等で大正時代の人物を表現しませんし、津田寛治さんがト書きを読むのですが、それに合わせて演技をするものでもないので、出演する私たちにも想像力が求められますが、ご覧いただく皆さんにはリーディングならではの想像の余白を楽しんでいただけると思います。

Q クラウドファンディングを実施されて、目標額を既に超えられてもいますが、ご感想などお聞かせください。

A大和田美帆『日本一わきまえない 女優「スマコ」~それでも彼女は舞台に立つ~』大和田美帆クラウドファンディングという言葉自体、初めて自分で使ったくらいだったのでこれまでは縁がありませんでした。支援してくださる人がいて、その結果、無料で観られる人たちがいる、というのも新しい手法なんだろうなと思います。開始2日目で目標額に到達したので、こうして支援していただける方々がたくさんいらっしゃることにびっくりもしましたし、演劇を求めているのは私たちだけではないんだ、という勇気にもなりました。面白いものを届けたい、という責任感も新たになりました。
クラウドファンディングを行う際に、私たちの思いを伝えることができるのもいいなと思いました。日本では言わない美学といいますか、あまりそういったことを言ってはいけないと思われがちです。そのことには以前から疑問に思っていて、私たち役者も作品に対しての思いを発信していきたいし、クラウドファンディングがその手段のひとつになっていけばいいなと思いました。みんなで作っている感覚がありますし、コメントを読んで、演劇を必要としている人がたくさんいるのだと思えたのも良かったです。今回のプロジェクトでは演劇を必要としている人に届けるということに加えて、これまで演劇に関心のなかった方にも興味を持ってもらうきっかけを作りたいという思いもあります。

Q コロナ禍の中で、役者として感じることはいかがでしょう。

A大和田美帆私は昨年の3月にゲネプロまでやって中止になった作品があるので、演じる場を失ったことへの喪失感や虚無感は初めての経験でした。その後には演劇は必要とされていないんじゃないかと気持ちが揺らぐこともありました。そんな感情を経て、心の栄養としてやっぱり自分には演劇が必要なんだという気持ちに至ったんです。こうして『スマコ』の台本をいただいて読んでいる時には、血が流れるような、まさに生きている実感があったので、演劇というものを何とかして守らなければならないという気持ちにもなりました。

Q 大和田美帆さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A大和田美帆何事も一歩踏み出すことが大切なのかなと思います。かつて松井須磨子がそうだったように、いま私たちはチーム一丸となって未知の瞬間に踏み出そうとしています。それを一緒に感じていただきたいです。もちろん、この『スマコ』の内容自体、いまの時代とつながるところもあります。松井須磨子の挑戦する様子や、権力や何者にも負けない強さに励まされるところも多いかと思います。コロナ禍の中で私は、待っていても何も変わらないし、まず行動してみることが大切だと感じました。かつて女性が演じるということ自体がまだまだ認められていなかった時代に松井須磨子が自分から挑戦していったことも、どこかいまとつながっていると思います。ぜひ『スマコ』を楽しんでいただけたらと思います。

Q大和田美帆さんからOKWAVEユーザーに質問!

大和田美帆皆さんは演劇の劇場に行かれたことはありますか。演劇や劇場にはどんな印象をもっているか聞いてみたいです。

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※写真は同日に行われた稽古風景。


■Information

日本一わきまえない 女優「スマコ」~それでも彼女は舞台に立つ~

2021年4月27日(火)20:00~ 12月31日(金)YouTubeにて無料公開

大正7年11月夜。とある芝居小屋の楽屋。壁には松井須磨子主演『カルメン』ポスターと【本日初日】の貼り紙。
芸術座の見習い劇団員、一ノ瀬春男とともに楽屋で支度をする松井須磨子。その隣にはひとりの男の姿が。
そこへ刑事・曽根崎徳夫と若い役場の中年・矢代廉太郎がやって来て、須磨子に島村抱月を殺害したのではないかと尋問を始める。
抱月とは須磨子が、愛した男で、つい数日前にスペイン風邪で命を落としていた。
「愛する人間の葬式を終えたばかりだというのに舞台に上がるのか?」、「お前がかかっていたスペイン風邪を故意に抱月へ感染させたのではないか?」と言いがかりをつける二人。さらには抱月の本妻・市子もやって来て、「お前が抱月を殺した、舞台に立つ資格などない」と須磨子に迫る。
スペイン風邪という流行り病によって、愛する人を失っても、舞台に立ち続けようとする女優・松井須磨子。
彼女を突き動かすものは、一体何なのか?そして、須磨子の隣にいる男は、はたして誰なのか?
日本の女優第一号ともいわれた松井須磨子の、【強く】、【儚い】、その生き様を鮮やかに描く。

出演者: 大和田美帆、福士誠治、波岡一喜、堀井新太、まりゑ、水谷あつし、西岡德馬/津田寛治(ナレーター)
総合演出: 宮本亞門
脚本: 池谷雅夫
映像監督: 土屋哲彦

クラウドファンディング
2021年4月8日(木)12:00~5月7日(金)23:00
詳細: https://readyfor.jp/projects/sumako_project

主催: 2021『スマコ』~それでも彼女は舞台に立つ~ プロジェクト


■Profile

大和田美帆

大和田美帆『日本一わきまえない 女優「スマコ」~それでも彼女は舞台に立つ~』1983年8月22日生まれ、東京都出身。
女優として舞台、ミュージカルを中心に、TVドラマ、映画等に出演。また、NHK Eテレ「チョイス」MC、エッセイ本「ワガコ」、こどもとママ向けイベント「ミホステ」など幅広く活躍中。

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