OKWAVE Stars Vol.998は佐々部清監督の遺作となってしまった映画『大綱引の恋』(公開中)主演の三浦貴大さんへのインタビューをお送りします。
Q この映画の題材のひとつでもある「川内大綱引」そのものについてはどのような印象を受けましたでしょうか。
A三浦貴大この映画の話を聞くまでは知らなかったので、資料映像を見させていただいて、撮影の少し前には現地で実際に大綱引きも見ました。資料映像を見てる分には客観的に受け止めていましたが、いざ現地で見たら、地元の方たちの感情の爆発ぶりがすごかったです。しかも僕が見た年は台風の中で開催されていたんです。それこそ映画でも追いつけないくらいに本当にドラマチックで。それを見て撮影に入りました。
撮影に入ってからも地元の方たちと話をする機会が多くて、この「川内大綱引」をとても大切にしていることが伝わってきました。小学生の子どもが「大人になったら一番太鼓を叩きたい」と言うくらいなので、代々伝わっていくものなんだと。こういう文化は絶対に失われてはならないものだと、ただのお祭りではないなと感じました。
Q 演じた有馬武志の役柄についてはいかがでしたか。
A三浦貴大武志は周りで起きる出来事に対して受け身なタイプですが、最後は主体的に動いていくようになるので、その成長していく姿を演じるのは本当に大変だと感じました。佐々部監督の作品では一般とかけ離れた人物が出てくるものはありませんし、武志も実際にいそうな人物なので、そこを意識して演じました。成長する部分も、能力の落差があるわけではない、心持ちの変化でしたので、繊細に演じなければなりませんでした。
やはりこういった地方での撮影ですので、そこで育ってきた人物に見えないといけません。正解は分かりませんが、僕としては、地元の方たちとよく話をして、地元を歩いて、自分がここで暮らしてきたんだという空気感を自分の中に取り入れるしか無いなと。薩摩川内に着いてからはずっとそれをやっていました。
Q 武志のような“普通の人”を演じる上での心がけはありますか。
A三浦貴大自分も普通でいることなのかなと思います。同年代の方たちと話していてもギャップを感じないので、そんな感覚を持ち続けられているのが自分の中ではいいことなのかなと思っています。
Q 知英さんとの共演はいかがでしたか。
A三浦貴大知英さんは日本語も上手で話していて全く違和感がないので、それだけでその人の努力を物語っていますよね。それだけでも素晴らしいなと。人間性もすごく素晴らしくて、優しいですし、海外に出てきてずっと仕事をしている方なのでいろんなことを知っているんです。韓国の文化と日本の文化の違いを知っていて、それをネガティブに比べるのではなく、どうすればお互いがもっと良くなれるかを考えられる方なので、僕より9歳も年下なのに、人間ができあがっているなと(笑)。僕もそういう大人にならなければと思わされました。
Q 武志がジヒョンに大綱引の説明をするシーンが面白いですね。
A三浦貴大佐々部監督と「道をこんな風に走りながら説明をして」と打ち合わせをして演じました。ジヒョンは笑っていますが、あれは知英さんの演技ではなく本気笑いなんです。武志は受け身ではあるけど一生懸命な人物であることや、大綱引きへの思いがとても強いということも伝わる、僕も好きなシーンです。
Q 鹿児島弁や韓国語も披露されました。
A三浦貴大まず、鹿児島弁は難しかったです。関西弁は耳にする機会がありますが、鹿児島弁のような耳慣れていない言葉を発するのはこんなに大変なんだということを実感しました。
韓国語も初めてだったので、一から読み書きの勉強をしました。撮影前には知英さんにも聞いてもらって、発音を正しく直してもらったり、撮影が終わるたびに知英さんをちらっと見るとサムズアップしてくれるので、僕はそれを支えに演じていました(笑)。
Q 撮影で印象的だったことはいかがでしょう。
A三浦貴大やはり大綱引きのシーンです。撮影は実際のお祭りの2週間後くらいだったのに、地元の方たちが400人くらい再集合してくれて、同じシーンを撮らせていただいたので印象的でした。今はコロナの影響で大勢が集まる撮影はできないので、あれだけ“密”なことができたのも貴重なことです。何年か経ってこういう撮影がまたできたらいいなと思います。
Q 一番太鼓はいかがでしたか。
A三浦貴大撮影に入ってから、実際に一番太鼓を叩いていた方から習いました。腕を下ろしてはいけないし、ずっと叩き続けて、音を響かせなければならないので大変でした。しかも撮影ということでは太鼓の面がずっとカメラの方を向いていないといけないので、無理な体勢にもなるので、そういう意味でも大変でした。
本物の太鼓をお借りしましたが、新しい太鼓よりも古い太鼓の方が良い音が鳴るので、そんな歴史のあるものを撮影でやって来た僕が叩いていてもいいのだろうかと精神的なプレッシャーも感じました。大事にしなければと感じながら叩き続けました。
Q 完成した映画をご覧になってご自身ではどう感じましたか。
A三浦貴大佐々部監督らしいなと。今まで撮ってこられた人とのつながりを大事にする映画になったなと思います。僕は佐々部監督の作品がすごく好きで、だからこそ受けさせていただいたオファーだったので、佐々部ワールドにいられて良かったです。映画のような事件が起きるのではなく家族のことこそが大事件だと思いますので、それを映画で表現するということが大切なことだと思いますし、観ていただいた方も身近に感じられると思います。ですので、この映画に出演することができて本当に良かったです。
Q 三浦貴大さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A三浦貴大今はコロナの影響でなかなか人に会えない時期ですが、家族や人とのつながりを描いている映画なので、こうやって人とつながっていくのはいいよねと再確認できると思います。
佐々部監督の最後の作品にはなりましたが、僕が10数年俳優を続けている中で、映画作りの大切なことをもう一度教えていただく機会になりました。佐々部監督は根っからの映画監督ですので、劇場で観てもらえることが嬉しいと思っていらっしゃるだろうから、ぜひ劇場でご覧いただければと思います。
■Information
『大綱引の恋』
有馬武志は35歳にして奥手の独身。鳶の親方であり“大綱引”の師匠でもある父・寛志から常々「早う嫁を貰うて、しっかりとした跡継ぎになれ」とうるさく言われている。とある日、ふとした事件から韓国人女性研修医ジヒョンと出会い、次第に心を通わせるようになる。その頃有馬家では、母・文子が定年退職を宣言し女将も家事も放棄したため、妹・敦子も含め家族の皆が四苦八苦する。一方、年に一度の一大行事“大綱引”が迫るなか、武志はジヒョンから「あと2週間で帰国するの」と告げられる。「出会いとは?」「結婚とは?」「家族とは?」「覚悟とは?」二人の恋を通して描かれる様々な愛の物語。
三浦貴大 知英
比嘉愛未
中村優一 松本若菜 西田聖志郎 朝加真由美 升毅 石野真子
金児憲史 金井勇太 伊㟢充則 安倍萌生 月影瞳 小倉一郎
恵 俊彰(友情出演) 沢村一樹(友情出演)
監督: 佐々部清
配給: ショウゲート
公式サイト: ohzuna-movie.jp
©︎2020映画「大綱引の恋」フィルムパートナーズ
■Profile
三浦貴大
1985年11月10日生まれ、東京都出身。
2010年、映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』でデビュー。同作で第34回日本アカデミー賞新人俳優賞および第35回報知映画賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に映画『永遠の0』(13)『サムライフ』『ローリング』『進撃の巨人』シリーズ(15)『マンガ肉と僕』『怒り』(16)『追憶』(17)『四月の永い夢』『栞』(18)『ダンスウィズミー』『ゴーストマスター』(19)『初恋』『実りゆく』(20)『大コメ騒動』(21)、ドラマ「リバース」(17)「高嶺の花」(18)「神酒クリニックで乾杯を」「TWO WEEKS」「ひとりキャンプで食って寝る」「いだてん~東京オリムピック噺~」(19)、連続テレビ小説「エール」(20)、「六畳間のピアノマン」「さまよう刃」(21)など。公開待機作に『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(8月13日公開予定)など。佐々部清監督作品には本作が初出演にして初主演となった。
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