OKWAVE Stars Vol.612は大ヒット公開中の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』のデイビッド・ヘイマン プロデューサーへのインタビューをお送りします。
また、デイビッド・ヘイマン プロデューサーや主演エディ・レッドメインらキャスト陣、デイビッド・イェーツ監督が来日したジャパン・プレミアの模様もお送りします。
Q この「ハリー・ポッター」新シリーズの企画が立ち上がった経緯についてお聞かせください。
Aデイビッド・ヘイマン2011年に「ハリー・ポッター」シリーズが完結しました。悲しい気持ちもありましたが、これから新しいことができる嬉しさもありました。それから1年くらい経って、ライオネル・ウィグラムという僕が最初に「ハリー・ポッター」の映画化について話した方と、この魔法の世界をどうやったらまた映画化できるだろう、という話をしました。その時、ライオネルからドキュメンタリーのようなものを作ることができたら面白いのではないか、というアイデアが出ました。それはニュートが魔法動物を探すために世界中を旅するというものでした。そのアイデアをJ.K.ローリングのところに持っていきました。すると彼女もニュートのことを考えていて、もう物語もできていると聞かされました。そのお話の方が私たちが持っていった話よりもずっと面白かったです(笑)。彼女はこの魔法の世界のことを熟知しているので、キャラクターのこともより多く知っています。原作に出てくる「ドラゴンの血の12の使い方」の語られていないものも全て出てくるし、映画の中で家系図を映し出す必要があったのでジョーに電話をして聞いてみたら20分後には100人くらい載った詳細な家系図が送られてきました。ですので、皆さんが目に触れるより前にあらゆる情報を用意しているんです。今回の作品は、ホグワーツで後にハリーたちが学ぶ教科書を書いた人の話です。その教科書に書かれていることもまた彼女は全て分かっているんです。そこがまさにこの映画の原点になっています。
Q では、そこからどのように2時間の映画にまとめていきましたか。
Aデイビッド・ヘイマンこれはとても難しい作業でした。このシリーズは全5作となります。全体のうちの一作ですが、独立した一つの作品として観ていただける映画でなければなりません。「ハリー・ポッター」の続編でも前日譚でもありません。むしろ「ハリー・ポッター」を知らない方でも楽しめる作品を目指し、新しい物語の始まりだということを意識しました。もちろん、「ハリー・ポッター」シリーズを楽しんできた人たちにはそういう発見もできるようになっています。ですが、これまでどれだけ「ハリー・ポッター」シリーズに接してきたかに関わらず楽しめる作品です。
私たちが大事にしたのはキャラクターとテーマです。主人公ニュートとその仲間のティナとクイニー、ノー・マジの人間ジェイコブ、彼らは私たちが本当に共感できるキャラクターです。なぜなら、この4人は私たちのようなキャラクターだからです。ニュートは人よりもむしろ動物と一緒にいた方が楽、と思っているような人物です。ティナは自分では正しいことをしていると思っていますが、いろいろな意味で周りから抑制を受けています。ジェイコブは突然魔法の世界に巻き込まれる人物ですが、他人の善いところを見ることができる楽観主義的なところがあります。クイニーも同様にプラス思考で明るい人物です。みんな、私たちの周りにいるようなキャラクターです。それが物語の基礎で、そこから周囲を固めていきました。それと、世界が分断されているという考えをジョーは重視しています。魔法動物を受け入れていないアメリカの魔法界にニュートがやってくるところから物語が始まりますが、まさにそれが触媒となって、みんなの反応が描かれていきます。いろいろな要素が合わさった作品ですので、一つの作品にまとめるのは難しかったですが、やりがいはありました。デイビット・イェーツ監督は「映画はシンフォニーだ」と言っています。いろいろな楽器のパートを指揮者がまとめていくのと同じで、作品のトーンやテーマも含め、うまくバランスを取っていきました。
Q エディ・レッドメインをはじめ、このキャスト陣を選んだ経緯をお聞かせください。
Aデイビッド・ヘイマンニュート役については、エディしか候補はいませんでした。引き受けてくれて嬉しかったです。エディはとても英国的なので、1920年代の人物であってもうまくいくし、ニュートの感情や人間性をうまく表現してくれるという期待がありました。ニュートは社交的ではないけれども心から出てくる他人への思いやりのようなものを持っているので、それが自然と見せられる役者でなければなりません。エディは完璧にニュートでした。そしてエディが演じるニュートを中心に周りの人物を組み立てていきました。重要なのはこの4人のグループとしてのまとまりをつけることでした。他の3名はオーディションで選びましたが、エディが実際に組んで芝居をする、という方法で決めました。ニュートとティナの組み合わせ、ニュートとジェイコブの組み合わせ、ティナとクイニーの組み合わせ、クイニーとジェイコブの組み合わせも見ました。そして4人の組み合わせもです。そうやって4人としてのまとまりを重視してこのキャストに決めました。
ティナとクイニーを決める際には、即興で姉妹のようなシーンを演じてもらいました。キャサリン・ウォーターストンとアリソン・スドルのふたりはその日会ったばかりなのにずっとお互いのことを知っているような感じが伝わってきました。ダン・フォグラーとエディも兄弟愛のようなものが伝わってきました(笑)。ニュートのぎこちなさとジェイコブのあたたかさが二人でいると伝わってきて、見ていて楽しかったです。ダンはブロードウェーで賞を獲る俳優ですが映画界ではそこまでの実績はありませんでした。アリソンは元々は歌手ですね。ですが、二人とも素晴らしい心を持っていて、一緒にいると人生が楽しくなる感覚になります。アリソンはまさにクイニーそのものでした。人の善さと悲しさが共存していました。キャサリンは頭が良くて物事をいろんな角度から見ることができます。そういった意味でとてもいいチームができました。
Q デイビッド・ヘイマン プロデューサーからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。
Aデイビッド・ヘイマンこの『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』はとても寛容な映画です。素晴らしくて美しい魔法動物がたくさん出てきますし、魔法もたくさん出てきます。コメディでもありドラマの要素もありますので泣いて笑って楽しめる作品です。スリルも満点です。叙事詩的な作品でありながら皆さんの心の近くにある作品です。なぜなら人を描いた作品だからです。私たちの世界を鏡で映し出しているような物語です。作品のテーマは忍耐や世界の分断、レッテルを貼ってしまうことや自分自身を抑制してしまうことを描いています。友情の価値や勇気といったことも描いています。この作品はファンタジーではあるけれど、私たちの住んでいる世界のことを表した映画です。それと「ハリー・ポッター」シリーズを観ていない方でも楽しめる、ということも強調しておきます。ぜひ観てください。
Qデイビッド・ヘイマン プロデューサーからOKWAVEユーザーに質問!
デイビッド・ヘイマンニュートの鞄に入っていないどんな魔法動物がいたら面白いと思いますか。
また、この映画で描かれている世界のことを皆さんはどう思いますか。
もうひとつ。次回作では何が起きると思いますか。このシリーズは「ハリー・ポッター」の映画化とは違って原作本がありませんので、ぜひ想像してみてください。
>『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』ジャパン・プレミア・レポート
>『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』Q&A特集
■Information
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』
ハリー・ポッターと同じあの魔法界の新しい物語を綴る本作。今度の主人公は、魔法使いニュート・スキャマンダー。誰よりも優秀だが、おっちょこちょいな魔法動物をこよなく愛する変わり者で、世界中の魔法動物を収集するために、どんなものでも入ってしまうという不思議な魔法のトランクを肌身離さず持っている。魔法動物を求めて世界を旅しているニュートが辿り着いたニューヨークを舞台に、逃がしてしまった魔法動物の追跡をめぐって、予期せぬ大冒険がはじまっていく…。
監督:デイビッド・イェーツ(『ハリー・ポッター』シリーズ後半4作品)
原作/脚本:J.K.ローリング
プロデューサー:デイビッド・ヘイマン(『ハリー・ポッター』全8作品)、J.K.ローリング
出演:エディ・レッドメイン(『レ・ミゼラブル』)、キャサリン・ウォーターストン、アリソン・スドル、ダン・フォグラー、コリン・ファレル
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:fantasticbeasts.jp
公式Facebook:www.facebook.com/fantasticbeastsjp/
ハッシュタグ:#ファンタビ
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■Profile
デイビッド・ヘイマン
「ハリー・ポッター」シリーズ全8作品を製作。
その後も『ゼロ・グラビティ』(13)で製作を務め、2014年度米アカデミー賞最優秀作品賞にノミネート、英アカデミー(BAFTA)賞を受賞。
03年、イギリス人プロデューサーとして初めてショーウエストのプロデューサー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。11年にはシネヨーロッパでプロデューサー・オブ・ザ・ディケイドに選ばれた。同年にはJ.K.ローリングとともにBAFTA賞映画功労賞を受賞した。
現在は『パディントン』(14)の続編の製作に取り組んでいる。
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