Vol.767 俳優 にわつとむ(映画『審判』)

にわつとむ(映画『審判』)

OKWAVE Stars Vol.767は映画『審判』(2018年6月30日公開)主演のにわつとむさんへのインタビューを送りします。

Q 本作出演のきっかけをお聞かせください。

Aにわつとむ僕とジョン・ウィリアムズ監督とは2001年公開の映画『いちばん美しい夏』で準主役を演じさせていただいた時から関係ができていて、監督は僕の人生に無くてはならない人です。そんな関係の中でこの映画の企画の段階から僕も関わることになりました。

Q カフカの原作についてはどう感じましたか。

A映画『審判』にわつとむカフカの小説はミヒャエル・ハネケ監督によって映画化もされている「城」や「変身」は知っていましたが、「審判」はこのプロジェクトを通じて初めて触れました。最初に小説を読んだ時は全く理解できなかったです。監督とも話し合って、あまり原作を読み込みすぎないで臨むことにして、今回の台本の中から読み取ることに専念しました。ですので、撮影後に小説を読み返したり、オーソン・ウェルズの映画版を楽しんで観ました。

Q ではこの現代の東京を舞台にした台本はどう感じましたか。

Aにわつとむ僕はある人間が生まれて死んでいくまでのひとつの流れのように感じましたので、「社会についての映画」というよりも「一人の人間の人生についての映画」と捉えました。よく人生は「生きていることが苦行だ」などと言われますが、まさにその苦行を描いているんだと。僕は役者が作品の意図を理解して演じてしまうのはナンセンスだと思っています。このシーンで作品が持つ大事なメッセージを伝えます、といったことではなく、Kこと木村陽介の生き様としてすべてのことを捉えました。Kに起きる出来事は僕自身の身に起きること、として演じました。

Q そのKこと木村陽介のキャラクター像をどう作りましたか。

Aにわつとむキャラクターを作るのは難しかったです。Kの特徴は強いて言うなら優柔不断なところくらいで、なかなか個性のようなものが出てこないからです。起こる出来事のひとつひとつに向き合うことで、最後にこういう人間だったということが浮き彫りになればいいなと思いました。ですので、キャラクター設定は特にしませんでした。すべてが「もし自分だったら」というところから発想して演じたので、もしかするとKは僕自身なのかもしれません。

Q 撮影の進め方はいかがでしたか。

A映画『審判』にわつとむ撮影は順撮りではなかったので難しかったです。その場の反応でお芝居をしていったので、確かにそのシーンの反応ではそうなるのですが、映画全体を通してみると、やり過ぎになることもあります。その微妙なさじ加減をジョン監督を信頼して、監督の指示に合わせてやっていくのが難しかったです。俳優の仕事は、その場で起こることに自然に反応することが重要で、「演じる」ということをしてしまうと崩れてしまいますし、監督からも「Don’t act(芝居をするな)」と言われていましたので、演技という嘘をつかずに微調整するのは本当に繊細なことで役者としては大変でした。言い換えれば、挑戦しがいのある現場で楽しかったです。

Q 芝居を通じての発見はありましたか。

Aにわつとむ今までの出演作品は後で見返すと反省点もたくさん出てきてしまいますが、今回は客観的に観ることができました。演技をしている時には、自然と涙が出てくるなど、作品の中に入り込めていたと思います。これは初めての経験かもしれません。

Q この『審判』のどこかいびつな世界に身を置いていかがでしたか。

Aにわつとむ正直、きつかったです(笑)。女性がKの前に現れる時は「救いの神が現れた」と思い、実際には救いの神ではなくてガッカリしたり、おそらく、映画を観ている人が感じることを、僕自身も演じながら感じていました。
映画版の前に同じくジョン監督の舞台版の準備を2年間やっていて、そちらもその世界に身を置いているのは苦しくて、その集大成がこの映画でした。

Q この作品の世界は現実とリンクする部分も多く見られます。

Aにわつとむ僕も正直、怖くなることがありました。日常でこうはなってほしくない、と思うことも役に注入しました。こうなってほしくない、と思っていることに向き合うことで、段々と本当にそうなってしまうんじゃないかと思うことが何度もありました。

Q Kは冒頭で「逮捕されてしまった」時に、何の罪なのか確認をしませんでした。

A映画『審判』にわつとむそうなんです。そこが一番難しかったです。小説自体がそうなっているのですが、リハーサルの時から自分の中でそこがなかなかクリアになりませんでした。流れに飲み込まれていく最初の扉だと思うしかなかったです。試写を観た僕の母は「なぜあそこで警察を呼ばないの」と言っていました(笑)。ひとつの解釈としては、最初は「まあ何とかなるだろう」くらいのところから段々と深みにハマっていくので、ひょっとすると母の言うように「最初に警察を呼んでおけばよかったのに」ということなのかもしれませんね。「原因があって結果がある」という坂東彌十郎さん演じる“殴る男”のセリフがあるのですが、これは人生すべてに言えるかもしれません。「どうしてこうなってしまったんだ」と思ったところで、「悪いのはあなたでしょう」「こうなるのが分かっていて、それを選んだのはあなたです」と言われている気がしてならないです。

Q にわつとむさんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aにわつとむ話の捉え方や感想は人によって違ってくる映画です。非常に訓練された役者たちが出演しています。日本映画界の裾野を広げていく上でも非常に大きなチャレンジをした作品ですので、ぜひ役者たちのパフォーマンスを観ていただきたいです。

QにわつとむさんからOKWAVEユーザーに質問!

にわつとむ皆さんが映画や演劇に触れていただく機会をより多く持っていただくにはどうすればいいでしょうか。ビッグネームの方が出演していればその人目当てで観るということはありますが、芸術にもっと触れる機会があればいいなと思っています。

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■Information

『審判』

映画『審判』2018年6月30日(土)渋谷・ユーロスペースにて公開ほか全国順次

木村陽介。銀行員。30歳の誕生日に、逮捕。罪状不明。
現代の東京。銀行員の木村が30歳の誕生日の朝、自宅マンションのベッドで目覚めると、部屋にはふたりの見知らぬ男たちが佇んでいた。彼らは「逮捕」を告げにきたと言う。でも罪状は不明。無実を主張すればするほど、蜘蛛の巣のような“システム”に絡みとられ、どんどん身動きができなくなっていく。ここから抜け出す方法はあるのか?救いを求めてあがくものの、期待はことごとく外れていく。そして、木村は出口のないこの迷路の終焉に、気づき始めるのだった。

出演:にわ つとむ、常石 梨乃、田邉 淳一、工藤 雄作
坂東 彌十郎(特別出演) 、高橋 長英、品川 徹ほか
監督・脚本:ジョン・ウィリアムズ
原作:フランツ・カフカ「審判」
製作・配給・宣伝:百米映画社

公式サイト:www.shinpan-film.com

(c) Carl Vanassche


■Profile

にわつとむ

にわつとむ(映画『審判』)1974年生まれ。兵庫県出身。
慶応義塾大学在学中に、蜷川幸雄演出舞台でデビュー。その後、お笑い芸人を経て再び俳優に。NHK「マッサン」やテレビ朝日「相棒」など数々のドラマ、映画、舞台に出演。ジョン・ウィリアムズ監督作品へは3作目の出演となる。着実に磨いてきた演技力が開花すべく、今後が注目される個性派俳優。

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https://twitter.com/niwatsutomu


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